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2025/03/15 (Sat)

『南柯の夢 鬼籍通覧』

帯で知ったのですが、デビュー20周年なんですね。おめでとうございます。
なんとなく、もっと昔から作家をやってらした方のような気がしてました。
たぶん私が初めて椹野さんの本読んだの10年くらい前だと思うんですけど、その時点でかなり図書館の本が古くなってたような印象があって。奇談シリーズの最初の方とか。まぁ考えたら10年も経てば文庫本はかなり古びますよね。

さて、鬼籍通覧シリーズの新作です。
相変わらず、解剖したり、おいしいもの食べたり、ちょっとオカルトっぽい事件に遭ったり、生と死を想ったり、な感じでしたね。
椹野さんの作品は、全部読んでるわけじゃないけれども、何を読んでも同じ空気が流れていてほっとする。たまに帰ると落ち着く場所みたいな、私にとってはそんな感じのポジションです。
たぶん根底にある価値観がかなり一致しているんだと思う。
おいしいもの(お金に飽かせたグルメではなくおうちの手料理で、それも手間暇かけるのじゃなく本当に普通の家庭料理)を食べるのって幸せだよね、とか。
今回はちょっと揺らいだけれども、つらいこともたくさんあるけど生きてされいれば、とか。
それがストレートなので、ときどき説教くさく感じることもあるけれども。
たまに読むとやっぱり、そういうまっとうなことを言ってくれる小説は安心できるんです。
あとはキャラクター同士の距離感も好き。男女がいても色っぽいことには絶対にならなさそうで、仲間とか戦友とかそんな感じの関係性なのが、こちらもまた安心できる気がする。


背表紙のあらすじを抜粋。
法医学教室の白い解剖台に横たえられていたのは、セーラー服を着た美しい少女だった。少女は浴室で手首を切り、死亡。発見時、彼女の傍らには、親友である美少女が寄り添っていた。翌日、伊月は蔵の片づけを手伝いに行き、「即身仏」と思われる古いミイラ状の遺体を発見する。

ここにあるように、リストカット女子高生とミイラの二つの死体が登場するわけなんですが、当然二つの死体は何らかの関係があるもんだと思うじゃないですか。
何もなかった。
びっくりした。
テーマというか、「死を通して生を想う」部分では、どちらも伊月くんやミチルさんが触れたものなので関係なくはないけど。
事件的な関わりは一切なかったです。
でも、それも法医学者の日常っぽいのかもしれない。物語の中では、ひとつの話に描かれることは何かしら関連があることが多いけど、現実には関連とかなくとも次々と遺体と向き合わなくてはいけない、みたいな。
読者の好みとは関係なくキャラクターたちの人生は送られていくんだ、というのを強く感じるんですよね。
たとえば私は筧くんと伊月くんについてはBL的に萌えたりはないんですよ。でも萌えても萌えなくても現実に彼らは一緒に住んでご飯を食べて、でもたぶん恋愛ではない、んだと思う。
最後の部分は完全に自分の考えなので、そうじゃないとみる向きもあるかもしれませんが。


前作はミチルさんが自殺を止めたことが物語のキーになっていたけれども、今回はそこから発展して、そう言えかったことで最後にじんわり考えてるところが、そういうふうにシリーズ間が繋がっていくのかと思って興味深かった。
私は、良いなぁというか羨ましいと思ってしまった。
少女のまま美しく死ねること。そこに至った潔癖さとか、ふたりの秘密がほしいと願う独占欲とか。
ミチルさんのような大人にすら、死ぬなと言うことを躊躇させてしまう完成された思想と計画とか。
その全てがもっている少女性。
かつては私も持っていた憧れが成し遂げられたことが。
物語だから、美少女だからオフィーリアのようになれるのであって、美しくもなんともない私が死んだところで醜いだけなのだろうと思うけど、そういうの含めてなんだか羨ましい気がする。

ミイラの方は、背景は痛ましいと思うんだけどどうにも遠いから、そこまで身に迫るものでもなかった。
とはいえ、白骨を繋いだ針金の意味が変わって見えるところではぞわっとしました。
それより、こういうミイラも法医学教室に持ち込まれるんですねってことに驚いた。
いや、現実にはあんまりないことだからこそこういう話になるんだと思いますが、法律とか手続き上はそうなるのか、って。
完全に白骨だと違うのかな?

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『ホワイトラビット』

なんだか期せずして泥棒ものを続けて読んでいる気がしますが。
本物の伊坂幸太郎の新刊。久しぶりの黒澤さんシリーズ!
中村、今村、若葉も活躍してました。
伊坂作品の中ですごく良いというわけではないんだけれども、安定したおもしろさ。


仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。SITが出動するも、逃亡不可能な状況下、予想外の要求が炸裂する。息子への、妻への、娘への、オリオン座への(?)愛が交錯し、事態は思わぬ方向に転がっていく――
というのが出版社のウェブサイトにあった内容紹介。
ストーリーとしてはそんな感じなんだけれども、起こった事件を記述する手法が、今作のモチーフでもある「レ・ミゼラブル」とオリオン座の在り方をなぞっていて、すごく好きです。
小説の構成自体に意味を持たせているのがすごい。
ネタバレせずにはこれ以上踏み込んで感想を言うのが難しいですが。

とにかく「レ・ミゼラブル」読んでみたくなった。
でも5年もかかるのかぁ、と二の足を踏んでしまう。

あと、この作品には犯罪組織が出てくるんだけど、構成員の名前が兎田や猪田で、伊坂世界の反社会的勢力の人はみんな動植物っぼい名前なんですね。
だから、直接的には関係ないけれども殺し屋さんたちの世界と黒澤さんの世界が重なったような感覚を抱きました。

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つづきはこちら



以下、軽いネタバレがあります。

私はもともと、作者が妙にしゃしゃり出てくるような小説は好きじゃないんですよね。
昔からある手法ではあるけれども、本を読んでいるときの感覚としてはつくりごとではなく物語世界で実際にあったことという想定で読んでいるので、地の文で作者が出てくるとお前誰だよって思ってしまう。
ただ逆に、そこに意識的な小説はめろめろに好きになっちゃうんです。作者がしゃしゃり出て来ていても、その語り手が誰かが作中でちゃんと設定されていたり、誰かの語りであること自体に意味があったり。
だから、『ホワイトラビット』も作者が「ここでいったん場面を区切る」とか「書割じみた人物説明は、文学性を重んじる者たちから軽蔑されるだろうが」とか、やたらしゃしゃり出て来るのだけれども、冒頭でレ・ミゼラブルがそういう小説だというのが示されていたから、なるほどこれはレ・ミゼラブルの本歌取りなんだなと納得できたのでそこまで嫌ではなかったです。
伊坂幸太郎の文章自体が好きだし。
ただちょっと作中人物たちとの距離が遠い感じがして、それは黒澤さんがクールだからというのもあるかもだけど、ラストがあっさり風味だなと思った。

さらに序盤で出てくる「すでに起きてる出来事も、時間がずれないと見えないわけだ」という黒澤さんの台詞。これはオリオン座のベテルギウスについて言った言葉ではあるけど、直後に書かれていたように「この物語自体の構造を示唆してもいる」。
そのこと自体を言っちゃう地の文がかなり不思議な感じだけれども。
そう書かれていても、時間がずれている二つの物語が展開していっても、真相が明かされるまでは全く気づけなくて、騙されたのが清々しい。
「父親」にしても、これは黒澤さんではないか、と思っていたけど、黒澤さんと同じ思い込みをしていたので電話がかかってきたときは疑問でいっぱいになった。
読者の想定のちょっと上あたりをうまいこと突いてきていて、「気づけなくて悔しい」と「想像しなかった展開でおもしろい」のバランスが快感になる感じといいますか。
読んでいて楽しい。


陰の主役とでもいうべき、SITの夏之目課長の物語をもっと読んでみたい。
でも、彼の人生については語るべきことはすべてこの作品内で語り尽くされているんですよね。
めいっぱい語られたからこそ、彼の人生に思い入れができて、もっと読んでみたいと思った。けどこれ以上語ることはないし、きっと蛇足になってしまうんだろうな。

生まれて死ぬまでの間に、いろいろある。
シンプルな言葉だけど、なんとなく染みました。
やっぱり伊坂幸太郎は良いですね。


そういえば、タイトルはホワイトラビットで「白兎事件」で稲葉と兎田は出てくるけど、レ・ミゼラブルやオリオン座ほどは強いモチーフではなかったように感じました。
兎田が素兎なら、黒澤さんはさしずめ大国主なのかしら、だったらとても楽しい。

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『樽』

読んだのはちょっと前なんですが、感想を書くのを忘れていたので。

クロフツです。
地味で丁寧なアリバイものというイメージはやっぱりあったのですが、『樽』に関していえばアリバイ崩しよりも前の部分がおもしろかったです。
アリバイものって、どう考えても犯人はこいつだろうという容疑者がいるのに、肝心の時間に他のところにいた証拠がある、という状況にならないとアリバイものにならないと思うんですよね。
でもこの小説は、どういう事件なのかが分かるまでが長かったし、そこがすごくおもしろかった。
情報が次々と出てきているだけなのに、どうしてこんなにおもしろいんだろう。

有栖川さんの解説では「冒頭は物語の進行が遅い」から読みにくいという風説があると書いてあったのですが、私は逆に冒頭がすごく楽しかったです。
まず、「彫像在中」と書かれた樽が荷揚げ中に破損して中から金貨が出てくる、さらに金貨だけじゃなくて人の腕も――という発端がすごくわくわくする。
そこで海運会社の人たちと樽を持ち帰ろうとするフェリクスの攻防、そして見つかったと思えば消える樽を追う警察の捜査が、動きがあってサスペンス風のおもしろさ。
まぁ、サン・マロ荘での張り込みや捜査シーンは若干退屈でしたが。足跡のくだりとか。

フランスに渡ってからも、謎だらけの状況が少しずつ解けていって、でも逆に情報が増えたことによって謎が増えてっていうのがひたすらにおもしろかった。
樽がどんどん増えていって混迷を増していくあたりは、このまま増殖を続けて樽の海に溺れるような感覚に陥った。
捜査中にお店に入るたびにビール飲んでるのとか、国境を越えた刑事二人の友情とかの微笑ましさもありましたが。トラベルミステリーの走りと言われるのってこういうところなのかなと思ったり。

いったん犯人が捕まって、でもまだページ数かなりあるよなって思ったらそこから弁護士と私立探偵が出てくる盛りだくさんさがすごかったです。
ただ、容疑者は2人しかいないので、すでに捕まっている人じゃないとしたらほぼ確定じゃないですか。
そこから、アリバイ崩しを論証していくのは、結論が分かっているからだるい、という気持ちになってしまった。って、ハウダニットを完全に否定してしまってますが。
やっぱり、何が起こってるか何も分かってない状態から少しずつ情報が増えて分かっていく方が私はおもしろく読めました。 
あと、樽がいっぱいあって行動がややこしくて、頭がこんがらがってきまして……。

だからアリバイものってあんまり好きじゃないのかもしれないですね、『樽』はおもしろかったけどその部分じゃないので。

ただ、アリバイものは交通手段の問題なイメージだったんですけれども、これを読んでそうじゃないんだって気付きました。
犯行を行うためにはこの時間にここにいなくてはいけないのに、別の場所にいた証拠がある、というのがアリバイ(不在証明)ですよね。
それを崩すには、時間がずれているとか場所がずれているとか、とにかくその時間にそこにいなかったかもしれないといえる論証をすればいいのであって、それさえ論証できれば交通手段は問題じゃなくなるんですね。
うまくいえないけど。
交通手段の抜け穴を示すことこそがアリバイ崩しというイメージがあったけど、たしかにひとつの方法はあるけどそれだけじゃないというか。
この作品でも、アリバイ崩しの肝心のところは真犯人が主張していた行動が別の場所でもできたということで、交通手段自体はそれさえ分かればあっさりこの便があるぞってなったので、思ってたアリバイものじゃなくて意外でした。


ラストで何の脈絡もなく冤罪をかけられた方の人が幸せになっていて、ちょっとおもしろかったです。

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『怪盗の伴走者』

怪盗ロータスと検事安西省吾。今は敵対関係にあるが、かつては昔馴染みであり並んで駆け抜けた時代があったのだ。決別した二人がついに相まみえる。

帝都探偵絵図シリーズ第4弾。
なんですけど、3作目までを読んだのがたぶん5年くらい前で、今までの内容をきれいさっぱり忘れてしまってまして。
礼と高広のキャラクターはなんとなく覚えてたし、怪盗ロータスもいた記憶はあるんだけど、安西……誰?みたいな状態で読み始めました。
しかも今回、最初の2話には礼と高広出てこないし。どういうシリーズだったかを思い出せないまま読み進めてしまった感がある。
3巻まで読み返してからにすればよかったかなと若干後悔しています。

なので以下の感想は、もしかしたらというかたぶん絶対、4作続けて読んだときのものとは違うと思う。
キャラクター要素の強いミステリって、キャラクターに対して思い入れが持てないと感想が無になることがえてしてあるじゃないですか。
これは……まぁ、無とまでは言わないけど薄かった。
思い入れはたぶん、5年くらい前に3巻までを読んだときにはあったんだろうと思う。けど、礼と高広に関しては思い出せないまま、この1冊で新しく獲得することもできずに終わってしまった感じ。
まあシリーズの主役とはいえ今作ではサブだから、礼もおとなしかったし、思い入れを持てなくても仕方ないかなとも思うんですけど。

一方のロータスと安西ですよ、問題は。
この二人に関しては、性格とか設定とか特に覚えてなかったけど、1話目2話目の短編を読んでいくうちに思い入れはそれなりに持てた。
でも、というか、だからこそというか、3話目のクライマックスですごくもやもやしたんです。
怪盗が本当に盗みたかったものは、たったひとりの友人だった、っていうシチュエーションはめちゃくちゃ萌えるんだけど。なぜかその萌えをそのまま受け取れなかった。
1つには、3話目に関しては捜査側の高広の視点で見ていたから、怪盗がまんまと目的を達することに歯がゆさを感じてしまったのだと思う。
そして、1話目2話目で描かれていた蓮の性格や性質に、どうも底知れないおそろしさを感じてしまって、安西は本当にそれでいいのか(いや、それが葛藤の末に彼が出した結論なのは分かっているんだけど)と思ってもやもやしてしまう。
情報が非対称すぎるのが気に入らないのかもしれない。友人と言っても、省吾は蓮のこと何も知らなくない?みたいな。怪盗だから経歴明かせないし、生い立ちとか関係なく友達になったっていうのが大事なのは理解できるけど。
個人情報を知らされないのは信用されてないからでは、みたいな感覚を私が持っているので、引っかかってしまう。
友情じゃなくて恩じゃないのかとか。いや、互いに相手に救われたと思っていそうな関係性とか好きなんですけど。けど。
きっと、蓮と省吾には書かれていない二人での冒険もたくさんあって、それを積み重ねてきたから最後の選択に至ったんですよね。でも、書かれていない二人の歴史がどうも想像できないというか。2話目のラストがどうも破局に至りそうな雰囲気出していたから、なんでそこから3話目ラストに繋がったのか処理しきれなかったのかもしれない。

そこになんとなくすっきりしないものを感じていたから、対比として描かれる礼と高広の関係性についてもどうにも気持ち悪さを感じてしまったりして。
非凡な人と普通の人(ただし非凡な人の友人でいられる時点で普通じゃない)みたいなあれは好きなはずなんだけど。
だから高広が安西に語った、どうしてホームズ役をしようとするのかみたいなこととかは良かったんだけど。
さっきから何度も書いているように噛み砕いて抽象的にいえば萌えるシチュエーションではあるけど、みたいに感じるってことはパッションで萌えてはいないんですよね。
なんでだろう。
感情描写がないわけじゃないし。文脈もきちんとあるし。

うーん、いろいろ言っても、結局は今の私には好みじゃない関係性/キャラクターだったっていうだけの話なのかもしれないですが。


明治末期〜大正時代くらいのものを背景に散りばめているこの雰囲気は好きです。
東京の地理や位置関係もぼんやりと分かるようになってきたので、より楽しめた。
服部時計店ってベッキーさんシリーズにも出てきたあれだなとか。
十二階が出てくるだけでなんとなくテンションが上がる。いわんや、がっつり物語の中心に据えられたら。
作中で語られていたあのエピソードは実際にあったことなのでしょうか?
"幼馴染の作家"はまさかあの人じゃなかろうなって思ってたら本当にそうで苦笑した。このシリーズならそりゃそうなりますよね。

この後確か続編出てないし、シリーズは今作が最後なのかしら。

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『泥棒は選べない』

河出書房から出てた伊坂幸太郎のムックで、〈伊坂幸太郎を作り上げた本100冊〉というのが紹介されてたんだけど、その中の1冊。
黒澤さんのモデルになった小説ということで読んでみたんだけど、なるほどまさにって感じでした。
信念を持ったプロの泥棒が探偵役になって事件を解決するという設定だけではなくて、都会的で洒落た雰囲気も、会話の軽妙さも、軽いハードボイルドっぽさも全部、伊坂作品と通じるものを感じました。

そのムックで紹介されてた100冊は、殊更制覇しようとしてるわけでもないので、読んでないものも多いんだけど。
伊坂さんが好きな作家といえば連城三紀彦と島田荘司というイメージがあるのですが、作風は全然違うように感じてたんですよね。物語に昇華された叙述トリックや、大ネタの奇想は、伊坂作品には直接的には見えないから。
だからこの「泥棒は選べない」が、ストレートに伊坂作品っぽくてすごく感動したんですよね。ルーツに触れることができた気がして。

もちろん、伊坂幸太郎への影響がっていうだけじゃなくて、作品自体もおもしろかったです。


泥棒のバーニイが、怪しげな人物に大金を積まれて、ある部屋に盗みに入る。ところが、依頼の品を探してる最中に警察がやってきてしまい、更には寝室から死体が発見され、バーニイには殺人犯の容疑がかけられてしまう。
咄嗟に逃げ出したバーニイは、自分は殺人犯ではないと証明するために、真犯人を探そうとする。

というあらすじなんですが、このはじめのシチュエーションだけですごくわくわくする。

シチュエーション自体の掴みも上手いんだけど、冒頭からバーニイの仕事振りが鮮やかで読んでいて楽しかったです。
何事も、プロの仕事って読んでて惚れ惚れするなぁって思いました。熟練の技というか。
怪しまれずにドアマンの横をすり抜けたり、「七つ道具」を使って鍵を開けたり、盗むものを探して机を分解したり……。


バーニイは強盗殺人の容疑がかかっているので、家に帰ることもできないし堂々と表を歩くこともできない。
ミステリとして、そういう制限がある状況の中で捜査をするために主人公がどう動くかってところもおもしろいポイントだった気がします。
捜査パートも、バーニイは泥棒なので必要そうなところにこっそり入って必要そうな情報をこっそり盗んでくるのが、どこかおかしい。

何より文章が読んでて楽しかった。ウィットに富んで洒落ていて。
だから客観的にみればけっこう悲惨な状況な気がするのに、全然そんな感じはしない。

結末も普通にびっくりしました。
ときどきあるパターンではあるけど。
ちょっとしたエピソードが繋がってきていたり、本筋とは関連しないけど気になると思ってたことが本筋に関連してきたり、かゆいところに手が届く感じで謎が解けていっておもしろかったです。
続きも何冊か読みたい。

警察官の制服は効果絶大すぎるだろってちょっと笑った。
っていうかこの女懲りてないのかよ。

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