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2024/04/27 (Sat)

ステラ・ミラ

学校の図書委員が発行する文芸誌(?)みたいなのに載る予定の小説です。
もし同じ学校に通っている方がいたらまだ見ないでください。

本名で載るうえ二次創作禁止(当然)だからすごい書くのが不安で、結局こんなのになりました。
ヤマもオチも意味もないけど所謂「やおい」ですらない、でも愛だけはいっぱいある。
何への愛ってそりゃ怪異です。

これはこれで下手な恋愛物よりも後ろ指指されそうですが、開き直ってる。

天狗という妖怪が好きです。
迷ひ家の伝承が好きです。
だからどっちも名前を出さずにふんだんに要素を取り入れました。
でもきっと大抵の人には何の話だか分からないんじゃないだろうか。

あと、司書の先生に指摘されて自覚したんですが、私の文章って改行多いんですね。
前々からちょっと感じてはいたけど。
たいていは一文で一行くらいだからな。
こだわり、っていうかぶっちゃけ何処で改行すればいいか分からない
えっと、精進します。
でもネット上だとそっちのが見やすいんじゃないかという気もします。
どっちの方がいいですか?



ちょっと補足。
金色の鳥は鳶じゃないです。そんな、畏れ多い。
でも足が三本あるかもしれません。その辺は連想ゲームの結果で。(天狗といえば猿田彦、猿田彦といえば道案内、道案内といえば八咫烏、みたいな)
あとあれだ。鷺が光るってのは五位鷺です。
……あれ? 「不思議」の話といい、もしかしたら西巷説が読みたい欲望がこの話をかかせたのかも(笑


ちなみに。
私だったらそんな機会があったら絶対、返さないで育てたいです(笑
天狗(原型)(原型…?)はなんであんなにかわいい見た目なんだろう。

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つづきはこちら

川は境界――なのだと云う。此岸と彼岸を、現実と異界を、生者と死者を隔つ、境目を示しているのだと。
だとすれば、三方を川で囲まれたこの村は、どちらなのだろうか。

星の降った夜のことだった。
空が割れたかのように、明日の夜には空から星がなくなってしまうのではないか、なんて思ってしまうくらいの流星雨。
村の老人達は祟りだの天変地異の前触れだの云っていたけれども、私は信じなかった。
山と川に囲まれて、少し大雨が降れば簡単に外界から隔絶されてしまうような村でも、二十一世紀の文明は浸透しているのだ。家にはテレビだってインターネットに繋がるパソコンだってある。電波が繋がらないから携帯電話こそは持っていないが、それ以外はおそらく他の場所と変わらないだろう。
だから、きっと私だけではなく、ある年代から下の人たちは誰も信じていないだろう。妖怪も、祟りも、カミサマも。
流れ星が祟りだなんて非科学的なことは全く信じていないから、私は家の屋根に登って夜空を眺めていた。
異変が起こったのはそんな時だった。
赤い、大きな星が高速で近寄ってくる。私が何もできないでいるうちにその流星は音を立てながら山の中へ落ちた。――この村の老人達が信仰している神様が祀られている山に。
山は星が落ちたことなどなかったかのように沈黙している。
空は先程までとは一変して、流れる星はひとつもなくなっていた。
腕時計の蛍光色の針は天辺を指していた。
目を閉じて息を吐く。そして再び目を開けると、世界は一瞬間前と何一つとして変わっていないようだった。
好奇心が疼くのにまかせて、深夜の登山をすることに決めた。

私にとって幸いなことに、山に神様が祀られているおかげで社までの道はかなりしっかりしていた。夜中でも楽に歩けそうだ。
懐中電灯の明かりを頼りに一歩一歩登って行く。
突然、雷が落ちたかのような音がして思わず身をすくませた。稲妻も何も光らなかったから雷のはずはないのだけれど、だから何かと問われても分からない。というよりも考えたくはなかった。
信じていないからといって、怖くないというわけでもないのだ。
真っ暗な山の中で、うっかりすると懐中電灯の光の端に何かの影を見てしまいそうだったから、脇目も振らずに山道を歩いた。
好奇心、あるいは別の何か大きな力に突き動かされるようにして来てみたはいいけれど、流れ星が山のどこに落ちたかなんて分かるはずもなく、いつの間にか赤い鳥居の前まで来てしまっていた。
はっと夢から覚めたみたいな心持ちになって、帰ろうかと思う。実際に踵を返した、はずだった。
それにもかかわらず気がついたら神域に入ってしまっていた。
振り返る方向を間違えたのだろうか、なんて在り得ないけれども納得のいく理由を持ち出して検討している場合ではなかった。
神社の境内に、何か発光体を見つけた。
真っ白な光で輝いているそれが流れ星なのだろうか。それにしてはどこかおかしい。
具体的にどこに違和感を覚えるのか分からないまま、とりあえず近くに行く。
一メートルくらいの距離まで近づいたとき、ようやく違和感の正体が分かった。――否、近づけば近づくほど、見れば見るほど、違和感だらけなのだが、それでも最初に感じた不思議は解き明かされた。
流れ星は通常、小天体が地球の大気に突入し、発光したものだ。大抵は空中で燃えつきるが、中には地上まで落ちるものもある。先程見たもののように。
けれどもその場合だって流れ星は隕石という言葉が表すように、石なのだ。少なくとも、無機物であるはずだ。
――それなのに。
一メートルほど前で発光しているのはどうやら生物のようだった。
猫か狐くらいの大きさだろうか。真っ白で首が長いその生物は、私を見て鳴いた。
動物だとしたら光るなんてことはありえない。蛍やイカやミミズや鷺ならまだしも、ペットになりそうなくらいの小動物だ。ありえない、と否定しても現実は確かにその動物は白い光を放っていた。
だからこそ、動物の形をしていてもそれが落ちた流星のような気がしたのかもしれない。
その動物をじっと見つめると、見つめ返された。気のせいではなく目が合っている。そのうちに頭がぼうっとしてきて、目を瞑った。

目覚めたら私は自分の家にいた。
いつのまに山を下りたのだろう。そもそもあれは現実だったのだろうか。流星の正体が動物だったなんて、馬鹿げた話は夢に違いない。
朝の光に痛む頭を押さえながら立ち上がり、ふと窓の外を見てそれと目が合い、絶句した。
夢に違いない、と断言したのに、あっさりとそれを覆す証拠が庭に鎮座していた。
「おすわり」の姿勢で、流星はじっと私を見ていた。
現実だとしても、連れ帰ってきた覚えは無い。覚えは無いが、それがここにいるということは私が連れ帰ったということなのだろう。
やはりここは元いた場所に返して来るべきなのだろうか。
縁側から庭に下りて、恐る恐る抱き上げてみた。その見た目から想像したよりもずっと軽い。
私は流星を抱えて再び山を上った。
社まであと少しの距離まで進んだとき、目の前を金色に輝く鳥が飛んで行き、誘うようにこちらを振り返った。私は何かに憑かれたように道を外れて誘われるがままについて行った。
不思議なことに、金色に輝く鳥がこの山にいることを「不思議だ」とは思わなかった。不思議というのなら、今まさに腕の中にいる動物の方がずっと不思議な存在だ。「不思議」ばかりになればもはや何も不思議ではない。
金色の鳥は山の奥へ、奥へと進んでいく。次第に道は険しくなりついには人の通った後もなくなった。
奥へ進むにつれ、視界がぼやけてくる。――否。ぼやけているのは視界ではなく、世界そのものだった。木が、岩が、土が、空が歪んで真っ白に――まるで流星が化したこの動物のように真っ白に、変わる。小さな清流を踏み越えるのと同時に世界が滲んで反転するのを感じて、きつく目を閉じた。
目を閉じたままでも黄金の鳥の輝きは知覚できたので、進むべき方向は分かった。夢遊病患者のようにふらふらと、けれども確かな足取りで金色を追いかける。
どのくらい進んだだろうか。目を閉じているからというだけではなく、山の様相が変わっているような気がして時間も距離感も曖昧に融けあい、世界に対する私の存在を不明にする。
ふと、金の輝きが動きを止めた。その場所で足を止め、目を開く。
そこには豪奢な館が建っていた。鉄の塀、銀の塀、金の塀が三重に母屋を取り囲み、壁に埋め込まれた螺鈿細工が金色の鳥の輝きを反射し綺羅と光る。屋根には磨きぬかれた漆黒の瓦が葺かれ、石畳には透けそうなほど白い石が敷いてある。まさに贅の限りを尽くした、といった趣だ。
本来、山の中にこんな屋敷は無かったはずだ。――なんて正常な思考はとっくに無くなってしまっていた。
腕にかかえた流星をぎゅっと抱きしめる。
「おじゃましまーす…?」
一応、声をかけて三つの門をくぐり家の中に入った。応えの声は何もない。人の気配すら、何もなかった。
迷路のように廊下の走る広い御殿でどちらに行こうかと迷っていると、流星が腕から飛び下り、廊下を奥へ駆けて行った。慌ててその後を追っていく。
やっと見つけた流星はこの屋敷を見てきた中で最も絢爛豪華に飾られた襖の前に座っていた。私と目が合うと、促すように鳴く。
動悸を鎮めるように深く息を吐いて、襖を開いた。
部屋の中は襖以上に煌びやかで目がチカチカするようだった。
天鵞絨張りの椅子の上に、それは座っていた。
人のようで人ではなく、鳥のようで鳥ではなく、犬のようで犬ではない。腕の中の動物と同じ白い体色だったが、翼は先程の鳥と同じく、金色に輝いていた。
彼は私を認めると威厳のある口調で告げた。
「それを返してくれないか」
言葉だけを聞くならそれは依頼であったのだけれど、彼の声音は私が否と答えるという選択肢を奪い去っていた。それでも黙って返すには色々と腑に落ちないことがありすぎる。
「どうして?」
「親が子を傍に置きたいと思う気持ちに理由が必要か?」
「…親? 貴方が? 全然違うのに」
「我々は流星として生れ落ち、成長して人に近い姿に変化し翼を得る。それは少し落ちる場所を間違えたようだ。迎えを遣わす前に主が連れ帰ってしまったのだ」
倣岸な態度からは少し想像できないが、意外と教えることが好きなようで彼は饒舌に喋った。
「よく分からないけど、どのみち返すつもりだったから」
お返しします、と言ってそのまま下がろうとしたのだけれど何故か流星の子は親のもとへ行こうとはしない。
背中を冷たい汗が伝う。
「まさかとは思うけど、刷り込みとか無いですよね?」
「無論だ」
此処に来るまでずっと抱きかかえていたのだし、よく見たら可愛らしく思えないでもなかったが、流星の子を育てる自信も能力も持ち合わせていない。それに、もし親に似るというのなら随分育て難そうだ。
「だったら、後は親子水入らずで話し合ってください。では」
去ろうとすると笑い声が邪魔をした。愉快そうな笑い方まで不遜に聞こえるだなんて、徹底している。
「此処に来ていて其処まで動じないとは、気に入った。息子を連れて来てくれた礼にこの館のものを何か土産に持っていくといい」
「……はぁ」
土産、と急に云われても何も思いつかない。だから、それを選んだのは単なる偶然で、強いて理由を挙げるなら「目についたから」だ。
「じゃあその、瑠璃色の盃で」
そう告げると彼は鷹揚に頷いて瑠璃の盃をこちらに移し、例の金色の鳥に送らせて山の麓まで帰してくれた。

奇妙な星は空に還った。
村も、私も、以前と何一つ変わらない。星が落ちたところで祟りも無ければ恵みも無かった。
変わったことといえば、食器棚にグラスが一つ増えた程度だ。
水不足になってもその盃からは溢れるほどの水が涌いた、なんてこともまるでなく、後に山を登ってもあの館には辿り着けなかった。
けれども、時折、考えることがある。

川は境界――なのだと云う。此岸と彼岸を、現実と異界を、生者と死者を隔つ、境目を示しているのだと。
だとすれば、三方を川で囲まれたこの村は、どちらなのだろうか。

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2010/09/20 (Mon) 創作物 TB() CM(0)

永遠の片想い

ずっと好きでいいですか。

どうしてこんなに好きなんだろう。
叶うはずのない想いと知っていたのに、止めることができなくて。
ただ、好きで。
期待してるわけじゃない、けれどその笑顔に救われていた。
彼が私なんか相手にするはずはないと分かっていても、それでも目が合えば、話ができれば、それだけで幸せだった。

それなのに、同じだけの想いを望んでしまう。
――否、同じだけでなくてもいい。
私が想う百分の一でも一億分の一でもいいから、私のことを想ってほしい。

そう願ってみるけれども、きっと私は強い勢いで――たとえば明日世界が終わる、くらいの衝撃で背中を押してもらわないと、その一歩を踏み出せない。

だから。
それでもせめて、願うのは。
いつか私がいなくなった後にも私のことを思い出してくれるようにと。
私がどんな人かは忘れてしまっていてもいいから、ただ私がいたことだけを忘れないでほしい。
ただ、それだけ。








この記事はフィクションです。
実在の人物・事件とは一切関係ありません。

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2010/01/18 (Mon) 創作物 TB() CM(0)

「手摺り 廃墟 色」

うわぁ、久しぶり。
二ヶ月くらい前にお題はもらってたんだけど…

ごめん。
ようやく書きます。


内容について、注意。

偽装廃墟じゃないよ。
残光じゃないよ。



一応、サイトのオリジナルのところにある「輪廻転生」のやつと繋がってるつもりです。
翠月が死んだ後、朱星が生まれる前。
玄夜は翠月と暮らした家で翠月の思い出に浸りながら生きていた。

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つづきはこちら

引越しの作業が終わり、私はほっと一息ついた。
ぐるりと新たな自分の城となった部屋を見渡す。
まだまだ何もないこの部屋。
それでも、今日からは此処が私の家だ。
居心地よくするために、まずは必要なものを揃えなくては。
ペットボトルのお茶を飲みながら買うもののリストを作った。

高台にある二十階建てビルの十八階。
そこが私の部屋のあるところだ。
家賃と移動する手間を考えても余りあるほど、窓から見る景色は綺麗だった。
昼間でさえこうなのだから、夜景はきっともっと素敵なのだろう、と期待する。
今日の夜が楽しみだ。

買い物をするために街の中心部へ向かう。
店を見ていると、あれもこれも全部ほしくなってしまうけれども、金が無限にあるわけでもない。
希望と妥協を重ねて、ようやく全ての買い物が終わったときには日は沈みかかっていた。
空が青から緑、黄、橙、そして紅へのグラデーションに染まっている。
黄昏色の街が冒険心を起こさせた。
思いたって、街の外れまで行ってみる。

冒険といったって、何かがあることを期待したわけではない。
何もないだろうことは最初から想定の範囲内だった。
そんなに簡単に『何か』があるはずもない。
そう判っていても心の中では少しだけがっかりしていた。

そんなときだった。
視界の端に、光って見えるものがあった。
それは『楽しそうなもの』のサインだ。
私はまっすぐそこに向かう。

見つかったのは廃墟だった。
何十年も前は人が住んでいたのだろうと思える一軒家。
けれど今では、庭は荒れ果て、窓硝子は割れ、屋根瓦は落ちそうになっている。
近所の子供たちには「お化け屋敷」と呼ばれていそうだ、となんとなく思った。
玄関にかかった表札は文字が掠れていて読めなかった。
誰にとも無く「おじゃまします」と声をかけて、敷地内に入る。
玄関の扉は当然と言おうか鍵がかかっていて入れなかった。
諦めて庭にまわる。
硝子の無い窓から見てみると、家の中はまるでつい今まで使われていたように物が残っていた。
こんな状況の場所で誰も暮らせるはずはないのにその部屋は――おそらくリビングには生活感があった。この部屋と引っ越してきたばかりの私の部屋を比べれば、この部屋のほうが人が住んでいそうだ。
まさか本当に誰かが入り込んで住んでいるのだろうか。
私も入ってみようとしたのだけれど、硝子が入っていないはずなのに何故か窓から入ることはできなかった。
入れないのならきっと誰も居ないのだろう。
生活感も、数十年前にいなくなった住人が残していっただけのことだ。
半ば無理矢理、そう結論づけて私は家に帰っていった。

家に着いたときにはもう夜だった。
窓を開けると眼下には鮮やかな街並みが広がっていた。
赤、青、黄、緑、ピンク、紫、白、橙。
色とりどりの光に飲み込まれる。
夜を昼に変えるように数多くのネオンが街を彩っていた。

「きれい…」
そう言おうとしたのだけれど、言葉は感嘆の息に消えていった。
ただ、溜息しかでない。
どんな言葉も目の前に広がる夜景の圧倒的な美しさの前では意味を持たなかった。

ふと、おかしなことに気付いた。
視界の右端、街の光の途切れる際。
先刻訪れた廃墟にもあたたかな光が灯っていた。
目を擦ってもう一度見ても、その光が消えることはない。
見間違いじゃない。
思わず、窓の手摺りが軋むほど身を乗り出してその光を見つめた。

誰かが入り込んだのだろうか。
それとも……?
不思議に思って、確かめずにはいられなくて、部屋から出て廃墟へと向かった。

おかしい。
さっきまでは見えていたはずの光が、私が廃墟に着いたときには消えてみた。
――見間違いなんかじゃなかったのに。
私が移動してきた間にこの部屋にいた誰かもどこかに行ったのだろうか。
一番ありえそうなことだ。
けれども、根拠は無いのだけれども、それは違うような気がする。
だったら何だと聞かれても答えられないのだけれども。

釈然としないままだけれども、此処にいてもしょうがないので私はまた家に戻った。
閉め忘れていた窓から再びあの廃墟を確認する。
――やっぱり、間違いじゃなかった。
そこには蛍光灯のような白い光の点が見えた。
また行ってみようと思って、けれどもやめた。
また行っても同じように着いたときには消えているような気がした。
きっとあの光は私に――というよりも、誰かに見られることを望んでいない。
これも根拠はないのだけれどそう確信した。

私は廃墟に、夜景に背を向けた。
だから、気付かなかった。
その廃墟から大きな黒い玄い鳥のようなものが飛び立ったことに。

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2009/08/23 (Sun) 創作物 TB() CM(0)

「植物 カゴ 小休止」

よく分からない話になった。

会話部分は書いてて楽しかった。


次回はテスト後に。

……たぶん。

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つづきはこちら

私は籠の鳥だ。
――といってもこれは自由にならない身の上を喩えた比喩などではなく、文字通り、籠の中に捕らえられていることを意味する。
もっとも、私は鳥ではないからその部分は比喩に違いないのだけれど。

天井の高い部屋の中いっぱいに巨大な籠が置かれていて、私はその中に入っている。
こんな大きな籠、部屋の扉から入りそうもないのにどうやってこの部屋の中に入れたんだろうか。
疑問を投げかけても応える者はいない。

籠の上部よりもっと高いところに小さく見える窓から光が入ってくる。
かろうじて辺りを見ることのできる程度の明るさしかなかったけれど、それで十分だった。見るものなんて、此処にはないのだから。

さび付いた鳥籠に緑色の植物が絡みついている。
もうずっと水を与えられていないはずなのに緑色は鮮やかで生命力に満ち溢れている。
正直なところ、溌剌とした感じが鬱陶しい。

いつ頃からこの籠の中にいるのか、数えなくなって久しくなる。
陽が昇るを千回ほど数えたあたりでもう数えても意味はないと知った。
それからどのくらいの時が経ったのかは分からない。

「ちょっとした小休止だよ」と父様は言った。
すぐに出してあげるから、少しの間だけここで待っているようにと。
それからも時折私のところにきて檻越しに話をしてくれた。
けれども出してはもらえなかった。

私が日数を数えるのをやめた後しばらくして、父様はいらっしゃらなくなった。
誰もいない籠の中で私は再び無為を重ねる。
それが辛いと思ったことはなかった。


初めての、そして久方ぶりのことだった。
この部屋に、鳥籠の向こう側に、父様以外のひとが来た。
「だれ。」
父様と話したとき以来はじめて発した声は掠れていて、とうてい聞き取れるものではなかった。
もう一度試すと、今度はきちんと音になった。
「誰?」
「助けにきました、姫君」
初めて聞く男らしい声が応える。

おかしなことを言う。
此処には彼と私以外にひとがいないのだから、『姫君』は私であるはずだ。
けれど当の私は助けてもらうような状況にはない。

「何かと間違えていませんか?」
尋ねても彼は、そんなはずはないと言い張る。
「ここには伝説の『鳥籠に幽閉された姫』がいるはずです。貴女のことでしょう。助けにきました!」
「だから私は助けを望んでなどいません。帰りなさい。」
「従えません。自分はこんなに美しい方が閉じ込められているのは見たくないんです」
「だったら見なければいいでしょう。目を瞑って後ろを向いて、その扉から出ていきなさい。」
「目を逸らすのは解決ではありません!」
いちいち真っ直ぐなことばかり言う。
対応するのにも疲れてきた。
「……そんなに言うのなら勝手にしなさい」

彼は剣で斬りつけたり体当たりをしたりしていたけれども、鉄でできた籠はそう簡単には壊れない。
早く諦めればいいのに。
そう思いながら、なんとなく彼の様子を見ていた。

闇に沈み、光に照らされ、再び闇が満ちたその次の朝。
最初とくらべてふらついてはいたけれども、彼は諦めるようすがなかった。
諦めて帰ったらどうかと何度言っても聞き入れようとはしない。
疲労困憊して籠を壊したとしても、私は決して出ていかないのに。
だんだんと彼が気の毒に思えてきた。
けれど私は何もせずに、見るともなく彼を見ていた。

「開いた!」
小さな歓声が聞こえた。
ようやく檻を開けられたらしい。

彼は籠の中に入ってきて私に手を伸ばす。
「さぁ、逃げましょう」
「いや。」
間髪をいれず断った。
見るからに彼の肩が落とされる。
「どうしてですか!?」
「此処にいると約束したんだもの。」
いつか出してあげるから、と父様は言った。
その日が来るまでは私はここにいると決めた。
「どなたか存じ上げませんが、おそらくその方はもう亡くなっていらっしゃると思います」
「どうしてそんなことが分かるのよ。」
「……貴女が此処に閉じ込められてから150年が経っていますから」
「嘘。」
「嘘ではありません。外の世界を見に行きましょう」
「嫌よ。父様がお亡くなりになったらなおのこと、私が外に行く意味なんてない。」
「――いい加減にっ…!」
彼は私の手を掴むと、無理矢理鳥籠の外へ連れ出した。
「何をするのよ。」
「姫様は勝手にしろと仰いました。私はその仰せに従ったまでです」
畏まった口調でしゃあしゃあと言う。
「どうですか、外の景色は?」
「……分からないわ。」
比較しようにも、以前見た景色はもう記憶の何処にもなかった。

周りの風景が揺らいで、薄くなっていく。
私は部屋の中に、鳥籠の中に戻ろうとしたけれど、見えない壁に弾かれたように入れなくなってしまった。
灰色の空が、緑色の草木が、いろいろな色の建物が、白に近づいていく。

彼の声も聞こえない。
透明な景色の中、私はどこにもいなくなった。

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2009/06/24 (Wed) 創作物 TB() CM(0)

「テレビ 鏡 コンクリート」

『鏡』よく出てくるなぁ…。

1週間くらい思いつかないで放置してました。

ぐだぐだ…。

人称使わないでうまく伝えられるようになりたいです。

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つづきはこちら

家に帰ると誰もいない部屋にテレビがつけっぱなしになっていた。
にぎやかな喋り声と音楽が空っぽの部屋に響いて、どこか虚しい。

たしかに家を出るときに消したはずなのに。
訝しく思いながらも、電源を切ろうとテーブルの上に置いてあったリモコンに手を伸ばした。

ふと、テレビ画面が目に入った。
そこに映し出された光景から目が離せなくなる。
それは何ということのないバラエティだった。
目をひいたのは芸能人達のどうでもいいようなトークではなく、その背景だった。セットに使われていた一枚の鏡。
はじめて見るはずのその鏡が、何故だか気になって仕方がなかった。
否。はじめてではない。
確かに自分はその鏡を見た記憶がある。
それがいつ、どこでだったかは分からないけれど、見たということだけは記憶の奥に存在していた。

行かなければ、という想いに急かされる。
行って、あの鏡に会わなければ。
その言葉が脳裏に浮かんできた後で、鏡に『会う』というのはおかしな表現だと苦笑した。
無意識のうちに手にしていた携帯でテレビ局に問い合わせの電話をかける。
あの鏡について尋ねると、番組がそれを借りた店を教えてくれた。
担当者の丁寧な対応に心がほわりと和む。

電話で聞いた住所に足を進めた。
電車とバスを乗り継いで辿り着いたのはコンクリート7階建てのビルだった。
躊躇わず硝子扉を開いて中に入っていく。
あの鏡を見たいということを伝えると、エレベーターに乗って最上階まで案内された。

そのビルの7階には何もなかった。
エレベーターから降りて、どの方位を見てもだだっ広いコンクリートの壁があるだけだった。
探していたあの鏡は、エレベーター乗り場の後ろ側にあった。
間近で見るとテレビ画面を通して見たとき以上に魅了される。
縁の意匠には優れているけれど、特別美しいというわけではない。美術的な価値などを言われてもわからない。
けれども何故かその鏡に魅了されてやまない。
鏡面に映った自分の姿にではなく鏡そのものに見惚れるというのは初めて聞く話だ。
そもそも、自分がそこに映っているということを意識していなかった。
否、それ以前の問題だ。
自分の姿は本当にそこに見えていたのだろうか。

――やっと、会えた。

自分の内からか、コンクリート張りの部屋のどこかからか。あるいは鏡からか。
そんな声を聞いた。


それ以来、その鏡を見ることはなかった。

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2009/06/19 (Fri) 創作物 TB() CM(0)