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妖怪と神話とミステリと甘いものが好き。腐った話とか平気でします。ネタバレに配慮できません。

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『幻想風紀委員会 物語のゆがみ、取り締まります。」

高里先生の新シリーズ!
発売直後に読んだものの、帰省したりで感想を書く暇がなく……。最近は読んでも書かないことが増えてきてて、良くないなと思っている。

それはともかく。
新シリーズですよ!
シリーズ……なのかは分からないけど、ぜひシリーズ化してほしいなぁ。
期待9割不安1割ぐらいで読み始めたものの、ものすごくおもしろかったです!
(不安1割について一応言い訳しておくと、大ファンすぎて過度に期待してしまってがっかりしたり、所詮薬屋よりは好きになれないだろうなと思ってしまっていたり、あと高里作品は3巻からおもしろくなることが多い気がしたり……)
でも、この1冊で十分おもしろい作品でした。

物語の『記述』が歪むことで、世界の境界も歪み、新月の学校で怪異が生じる。
”幻想風紀委員会”は怪異にある奇妙な部分=歪みを修正し、境界線を正す委員会活動(顧問あり、内申点評定あり)
……という設定のお話でした。
とりあえずこれだけでわくわくする。
ちょっと『断章のグリム』っぽいかなとも思いました。物語をもとに怪異が起きる点。
記述とか歪みって、正直読んでも感覚的にしかわかっていないんだけど。

文章はものすごくかろやかだからまぎれてしまうんだけど、よく考えたらとても怖い。ホラーとか怪談とかそういう系。
よく考えなくても、「おにんぎょさん」は怖かったです。
夜に一人でいるときにイラスト見てしまってぞっとした。

物語をもとにした怪異が起こって、それの歪みがどこにあるか探して、解決するという個々の物語の展開もおもしろかったのですが、やっぱり全体を通しての主人公の内面的成長がとても良かった。
というか私、火野弥嵩くん、とても好みです。
……この小説がおもしろかったっていうのも、結局のところそういうことなのかもしれない。
あの、知っている方はご存知の通り、私が薬屋探偵シリーズで一番好きなキャラクターは言波恒大なんですが。
ほら、似たタイプじゃないですか。どちらかというと。
ミカサの性格についてはあとがきで高里先生が書いてらっしゃるとおりだなと思って、その表現の仕方が好きなので引用します。
「我が強くて、同時に自分がなく、けれど自分しか持っていない」
なんていうか、私はそういう性質にある意味では自分自身をみているところがあって、だからこそ235ページの心内文が刺さったし、彼の成長が読んでいて心地よかったのだろうと思う。

もちろん、ほかのキャラクターも好きです。
みんな良い人で、もっと掘り下げてほしい。
高里先生の書かれるキャラクターって、掘り下げられれば掘り下げられるだけ、その人を知れば知るほど好きになっていくような気がします。いつも。


カグヤについては、最初からそういうことだろうなっていうのは予想できていたのでそこでの驚きはなかったけれども、最後のミカサとカグヤがすごく良かったです。


一つだけものすごーく気になったのは、本文中では制服ブレザーって書いてあるのに、イラストが明らかに学ランで、ヤスダスズヒトの絵は素敵なんだけどもやもやが半端ない。

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『踊る人形』

ホームズではなく、三途川理の方です。
文庫版で読んだので副題の「名探偵三途川理とゴーレムのEは真実のE」はないのですが、ないと紛らわしいですね。

森川さんの本はだいたい読んでいるのだけれども、これ1冊だけタイミングを逃していて未読だったのです。刊行時は乱歩の少年探偵団シリーズを読んでいなかったこともあり、読んでからの方がおもしろいかなとか思っていたら……。
あ、そこは実際に少年探偵団シリーズに軽く触れていたのでおもしろさ倍増感はあったので良かったです。

さて、『踊る人形』のあらすじをば。
小学6年生の芙美子ちゃんは、公園の砂場で砂を集めている怪しげな女性と出会う。その女性、南博士に誘われて、芙美子ちゃんはゴーレムの誕生を目撃する。
生み出された人形男は南博士を山奥の小屋に閉じ込め、自分の仲間となる新しいゴーレムを作るよう脅迫する。南博士は命からがら逃れ、芙美子ちゃんとその友人で少年探偵隊の古沢君に助けを乞う。


森川さんの小説……というか三途川シリーズって、何かルールがあってその中で三途川やほかの人たちがそれを利用したり対抗したりするのが面白さだと思うんです。真実を映す鏡や記憶を盗む指輪のようなアイテムだったり、あるいはトランプゲームや〈言語混乱〉みたいな、よりルールそのものっぽいのだったりしますけど。
で、今回はゴーレムの設定がそれで。(なお、以下の文章で「ゴーレム」は種族としての泥でできた動く人形を指し、「人形男」という場合は芙美子ちゃんが完成に立ち会った個体を指すこととします)
ゴーレムの設定に関するルールは一言でいえば「不老不死である」ということ。
その不死性によって、以下のような使い方ができる。
・身体をバラバラにして、単独で動かすことができる
・身体のパーツ同士を組み合わせて再構成し、動かすこともできる

このゴーレムの設定をひたすらに使い倒しているのがこの本のおもしろさの一つだと思います。
ゴーレムは目や耳を別のところに置くことで、覗き見や盗聴をすることができる。
また、手・足・目をくっつけたものを簡易的な分身として、本体は一つのところにいたままで別の場所でも用を済ませることができる。
一方で三途川は物語上設定されたルールを逆手にとって利用する天才なので、ゴーレムに対抗する部分も勿論おもしろかったです。

身体を自由にバラバラにできるゴーレムの特性に関連して、言葉遊びのおもしろさもありました。
日本語には体の部位を使った慣用句がたくさんありますが、ゴーレムの場合はそれが言葉通りの意味も持っていたりする。たとえば「聞く耳を持たない」という表現を使ったときに、本当に耳を外に派遣していたり。
あるいは逆に、「~だからといって本当にそうしてるわけではない」という文が挿入されることもあったり。そっちの方はちょっと繰り返しが多くて、おもしろいというよりもまたかって気分になってしまったけれど。


あと、文体!
乱歩の少年探偵団シリーズを模した文体で、読んでいてただただ楽しかった。
前述のとおり、私は別に少年探偵団も怪人二十面相もそんなに読んでいないわけなんですが、それでも楽しかったです。
「少年探偵隊、ばんざい! ばんざーい!」
みたいなノリ。

で、この文体はこれ自体が楽しい以外にも良かったところがあったと私は思っていて。
少年探偵団っぽい文体ってつまり、語り手が「読者の皆さん」に語りかけるような文体なんですよ。
だから「いったいどうなってしまうんでしょう」みたいな文章が入って章が変わることで引きを作りやすそうなのが、まあ一つ。
そして森川さんの書くミステリととても合っていたのが、謎がどこにあるかを親切に読者に示せること。それによって、小さな「読者への挑戦」がたくさん挟まれて考える楽しさがあった。
さらに、真相解明のときに「ここが伏線だったんですよ」というのが丁寧に示せることも大きな利点だったと思います。
小説で伏線回収シーンでの提示をたとえばどこのどの文章がという風にされると興ざめなんですけど、こういう形で語り手がいると割合自然だったような気がしました。


今回の三途川は、少年探偵団における明智探偵みたいなポジションで、古沢君や志摩隊長に慕われてるっぽいし、本当に三途川なの?今回は良い人なの?という疑念がずっとありました。
中盤まで出てこないし。
人形男退治には関わらないし。
でも三途川は三途川でしたね!
なんだか安心しました。
彼の動機の一部については何となく、その存在が示された最初からそうじゃないかとは思っていたんですが、それだけのためにそこまでするのかっていうのが流石だなって感じです。
このクズっぽさが良い。

最後の古沢君の心情をもっと掘り下げて書けば良いジュブナイルになりそうだけど、そこまでは興味はないのかなと思った。でもこのラストシーンもとても良かったです。

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『宇宙探偵 マグナス・リドルフ』

『街角の書店』に載っていた「方舟」書いた人の連作短編集だよと言われて読んでみました。

宇宙探偵……と題していますが、作中ではもっぱら「トラブルシューター」と称されるマグナス・リドルフが宇宙を舞台に様々な問題を解決し、しっちゃかめっちゃかにするSF。
一応ミステリっぽいけど、厳密なやつではない感じです。


ありとあらゆる異星人が出てきて、人型に近いのも虫っぽいのも魚や植物なんかもいるのですが、その行動様式や文化が(ミステリ的には)謎を解く鍵になっているという話が多くて、その部分がすごくおもしろかった。
たぶんそれぞれの生物や星の様子なんかはジャック・ヴァンスのオリジナルだと思うのだけれども、異星人描写がまずおもしろい。よくこんなにたくさん考えつくなっていう見た目や性質。
異星人自体の習俗は、そこまで目新しいものでもなくて途中まで読めば十分推測つくのもあるんだけど、古いし既にオーソドックスになってしまったのかなという気がする。あと、どうしてそういう性質をしているかの進化の話とかはないのもちょっと寂しかった。短編なので仕方ないけど。
でも異星人の異星人らしさみたいなものが、ちゃんと物語に関わってくるから楽しい。
「とどめの一撃」がすごく好きです。

舞台設定というか、作中の年代や宇宙で人の行動範囲はどのくらい広がってるとか、その背景にあるはずの技術なんかの説明はほとんどなくて、SFってそういう部分の説明が好きそうな偏見があったのでちょっと新鮮でした。
これこそ、古いからかもしれないし短編だからかもしれないが。
というか、当たり前だけど人によるか。
そういうのの説明がないので、はじめはちょっととっつきにくいかなと思ったんですが、だるくなくていいです。
人の活動できる宇宙の広さや、星や異星人がどのくらいいるかはある程度設定があるのだろうと思うけど。出てこないので考えなくていいので楽。


そして特筆すべきはマグナス・リドルフのキャラクター!
宇宙探偵でトラブルシューターではあるけど、むしろトラブルメーカーっていうか。詐欺師じゃん!
悪人も依頼人も、偶々行き会っただけのいけすかない人間もまとめてひどい目に遭うのが痛快でもあり、ときどきかわいそうにもなる。
金儲けが好きで、よくカモられるけど百倍以上にして返すのとか。嫌がらせをしたり、状況をひっかきまわしたりするけど、あまりに無邪気。子供が虫を殺したり残虐なふるまいをするのに似たものを感じます。
悪徳探偵というには、悪をしようとしてそうしているわけではない感じ。かといって百パーセント無邪気ではなく、普通に嫌がらせしようとする意識はあるから、その結果が大惨事なだけで。
この辺の意地の悪さは短編の「方舟」にも通じるものがあるかなー。
あまりこういう感じキャラクタが主人公の話は読んだことがない(と思う)ので、楽しかったです。
でも続けて読むとわりとお腹いっぱいになるね。

各短編の扉の裏にマグナス・リドルフの言葉の引用(引用じゃない)がエピグラフとして入っているのだけど、ときどきどこかで聞いたようなことを言っていてにやっとする。


各短編感想
「ココドの戦士」
ハチに似た戦士が各部族の〈塁〉ごとに戦いを続ける星で、それを対象にした賭けを行うホテルをつぶそうとする話。
このシリーズの(あるいは著者の)代表作らしいんですが、他の作品の方が私は好きだったかな。
ココド先住民たちの習性はすごくおもしろいし、それを利用していけすかない人間たちに泡を食わせるのも楽しい。けど、結局利用されてるやんってのが拭えず。
あと、それぞれの〈塁〉の名前が綺麗。〈薔薇の坂の塁〉とか〈貝の浜の塁〉とか。

「禁断のマッキンチ」
宇宙のあちこちからはみ出し者が集まり、異種族のるつぼとなりながらも地球式民主政治が行われている惑星で、横領を行う悪党マッキンチ。マッキンチについて調べた者は次々と殺されてしまう状況で、マグナス・リドルフが真相究明を依頼される。
容疑者たちに話を聞いてまわり、関係者を全員集めて「さて」と言うタイプの典型的なミステリ。……あ、見返したけど別に「さて」とは言ってませんでした。訂正。
典型的なパターンではあるけど、関係者のほとんどが異星人で、しかもそれぞれ別の種族で異なる価値観を持っている。その価値観の違いがポイントになってくるわけなんだけど、異星人の価値観なんて知るわけないので、まぁフェアじゃなさはありますね。
でも読んでいて楽しい。

「蛩鬼乱舞」
マグナス・リドルフは格安で農地を手に入れたが、その農地には毎夜「蛩鬼」という謎の生物が襲ってきて、作物を食い尽くしてしまう。
この作品は、オチが不可解でした。
なんでシチューじゃなくなったんだろう。使用人が黒幕?? と頭を悩ませたけどよく分からない。
蛩鬼との対決シーンも、アクションっぽいんだけど、うまく想像ができず。
解決方法はおもしろかったのですが。

「盗人の王」
マグナス・リドルフは盗人たちの星を訪れる。その星ではありとあらゆるものが盗まれ、最も盗んだ者が王となる独特のヒエラルキーが存在していた。
これも、読んでいて楽しい。
マグナス・リドルフが盗人の王になる展開は、そりゃそうなるよねという感じではありますが。
途中で出てくるニュースは伏線だろうと思いきや、まさかこう使われるとは。
泥棒種族メン=メンが、純朴な感じでかわいい。泥棒だけど。メリーゴーランドで喜んでるのが。

「馨しき保養地」
宇宙リゾートの経営者は、次々とリゾート地を襲うドラゴンその他の現住生物に困り果て、マグナス・リドルフに依頼する。
これまでの短編はマグナス・リドルフ視点で書かれてきてたんですが、この短編はリゾート経営者の片割れ視点。こいつが明らかに馬鹿で、マグナス・リドルフにいいようにされる末路がはじめから予想できるほど。
この馬鹿が確信していたものじゃなくてあっちだろうなっていうのは推測がついていたので、そこ自体には魅かれなかった。
問題解決後の、依頼人たちに対する仕打ちのひどさの方がえげつなくておもしろい。お前はそういう奴だよな。

「とどめの一撃」
〈ハブ〉と呼ばれる気密ドームの中で起きた殺人事件について調査する話。
いちおうクローズドサークルもの。
だけど、マグナス・リドルフの手法は変わらず、集まった容疑者たちの種族的・文化的特徴を調査していく。その調査過程が丁寧に書かれているのと、動機がものすごく好きです。狂人の論理っていうか、別に狂っているわけじゃないけど、その人にとってはそれが当然なんだみたいな。種族の特性とかについてずっと話しているから、この結末でも受け入れられる構成も巧い。
まあ、容疑者のうちの何人かは、本当にそれで犯人じゃないってことにしちゃっていいの?って思わないでもなかったですが。服の色とか何それって感じで。
オチのブラックさも良かったです。

「ユダのサーディン」
友人からの求めで、マグナス・リドルフはオイル・サーディンの異物混入について調べるために宇宙缶詰工場に潜入した。工場で処理されるサーディンたちは不可解な行動をしていて……。
工場のライン工になって文句を言うマグナス・リドルフが可笑しかった。利害関係のない友達いたんだねと思ったら、最終的にその人にまで人を食ったような解決方法を提示していて、読んでいるこっちが妙に焦りました。
この短編もかなり好きでした。
工場でとられていた方式自体がSF的で興味深かった。それに、サーディンとの通じているんだかいないんだか分からない意思疎通がおもしろかったです。
そして驚愕のオチ。サーディン的にはそれでOKなんだろうか。

「暗黒神降臨」
採鉱を行っている岩だらけの惑星では、4つあるオアシスのうち2つで周期的に作業員全員が姿を消してしまう異常事態が起こっていた。
これは、マグナス・リドルフの邪悪さが最もひどい結果をもたらした話でした。
真相には驚いた。
惑星の寂寥とした様子の描写が素敵。
原題の出落ち感がすごい。うん、CとDでは死ぬんだよね。

「呪われた鉱脈」
鉱脈Bでは作業員たちが次々と殺される事件が続き、月に30人以上が犠牲になっていた。マグナス・リドルフは依頼を受け殺人犯と対決する。
来た途端に真相を看破するマグナス・リドルフが探偵っぽい。(ご都合主義っぽさもあるが)
殺人犯の正体自体は、そういうのあるよねって感じで驚きはそこまでなかったんですけど、解決の仕方がこの人らしい。
とはいえ、第一作目だそうで、ほかの作品よりはまともそうでしたね。

「数学を少々」
マグナス・リドルフは持ち前の数学的センスを発揮し、カジノでぼろ儲けをする一方、カジノオーナーの犯罪のアリバイトリックを暴こうとする。
えっと、後半のアリバイトリック(ですらないけど)に関しては、それ最適化されてなかったの……?みたいな疑問が残る。
だから作者が黒歴史にしたがったのかしら。
文体も、ほかのとはちょっと違う感じで、キャラクターとの距離が遠い印象でした。
煌びやかなカジノの描写や、ロランゴという名前のガラスの球体に入った水とカラーボールを攪拌して並び順を当てるカジノ・ゲームが美しくて良かったです。

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『AX』

伊坂幸太郎の殺し屋シリーズ新刊。
1作目は雑誌掲載時に読んでたので、あれがようやく単行本になったのかと懐かしいような気持ちでした。

恐妻家の殺し屋「兜」と、彼の家族の話。

連作短編だからか、最初の方はコンパクトな話が多いなという印象で、このシリーズは長編の方がおもしろいのかなという気がしていたんだけど、最終話がすごく良かったです。
そう、これこれ。こういうのが読みたくて、私はこの本を読んでたんだって感じの。
「AX」と「BEE」は、伏線回収にしても本当にそうなの?って疑ってしまって。兜がそういう人物として描かれるのもあって、短絡的に結びつけすぎじゃないかと。
「Crayon」もその傾向があったけれども、殺したのが何者かは関係ないところに物語の軸があったので良かったですが。


1ページ目から檸檬が出てくるのが、もうずるい!
その後もちょくちょくと、見知った人の話が出てきて、1話にひとつ入れるノルマでもあるのかなとも思ったけど、やっぱりファンとしては嬉しい。
ただ鈴木さんがいなかったのが物足りなかったです。関係性は全然違うけど、夫婦という軸がかぶるからかしら。
……いや、一応一般人だから、そうそう業界の人とは遭遇しないのか。

作品間リンクとはちょっと違うけど、ラストシーンの冒頭の部分読んで、思わず周りを見まわしたくなった。私のではなく、兜の。千葉さんが近くにいるのでは、って。

恐妻家の兜については、妻の理不尽にも見える怒りに対してぺこぺこする兜にもどかしさを覚えた。なんで理不尽に屈するんだ、立ち向かえ、って。
なんでそれでも奥さんのことを好きなんだろうというのも不思議だったし。
強いていえばたぶん克己と似た立場から見ていたのかと思う。
読んでいくと、最後の方には、兜なりの人間関係の作り方なのかというか、どうしても手放したくない人生で初めてのたった一人の相手だからなのだと納得できたけど。
奥さん以外の人間関係というか、兜が友達を作ろうとするのも、この本のひとつの軸になっているところだと思う。
ひっくるめて、殺し屋のプライベートというか人間的な面にフォーカスした作品だったなと思いました。
人間的な面として、家族を守りたいとか友達を作りたいという希望を抱くけど、殺し屋であることが障害になる。ありきたりなパターンだけど、やっぱり熱いし切ない。だからこそ、クリーニング屋さん!がとても良い存在だった。
でもせっかく友達になれそうだった人の名前も忘れていた辺りはドライだなとも思いました。


あと、ひとつだけとても気になっていることがあるのだけれども。
「D」はないの?

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2017/08/08 (Tue) 感想 CM(0)

『パーフェクトフレンド』

野崎まどチャレンジ。この間読んだ『know』もあまり好きではなかったから、かなり懐疑的だったんですけど。
素直におもしろかったです。

あらすじ。
小学4年生の理桜は、4年連続クラス委員を努める頭のいい少女。彼女は担任の依頼で、同じクラスになった不登校の少女さなかを訪ねる。さなかは大学までのカリキュラムを終え、博士号を取得している天才少女だった。小学校に行く必要を感じないさなかに、理桜は"友達の素晴らしさ"を説く。さなかは、「友達とは何か」「なぜ友達が必要か」「友達は作れるか」を知るために、学校に行くことを決意する。



うん。野崎まどは天才少女が好きなのかなと思うんだけど、私は別に好きじゃないんですよね。
私が好きじゃないのが、「野崎まどの書く天才少女」なのか「天才少女一般」に拡大できるのかあるいは「天才」なのか「少女」なのかは判然としないですが。
ともかく、そこに温度差は生まれていた。

でも一方で、少し頭がいいぐらいの人が本物の天才と出逢って足掻く物語は好きなのです。
だから理桜が好き。
葛藤しつつ苛立ちつつ、それでもいつの間にか友達と思ってしまっていたところとか、彼我の差を悟れる程度には頭がいいところとか。
Ⅴ章の理桜がすごく良くて、だから直後の展開が突然で。え?なんで?何が起こったの?って混乱した。きっとそうしてショックを与えるために、Ⅴ章の理桜がとても良かったんだと思うと、作者に対して理不尽な怒りを覚える。


小学生女子の日常の雰囲気も良かったです。ほのぼのと楽しい。
不思議スポットを巡ったり、お泊り会をしたり。
ボケとツッコミというか、地の文も含めてちょっとスベってる感もあったけど、小学生だしで納得してしまう(本当に?)

ところでどうでもいいのだけれど、名前とキャラクター的に、やややが出てくるたびにしゅごキャラが頭に浮かぶ。

で、そんな小学生らしい日常を送っている間にもさなかは友達とは何かについて考えていたわけですが。
「友達とは何か」を方程式で表そうとする発想はおもしろいのかもしれない。かもしれないというのは、私自身が数学苦手なので方程式と言われてもみたいな気分になっちゃうのと、方程式自体は出てこないからなんか肩透かし感がある。

中盤でさなかが語っていた「友達とは何か」、人類の効率を向上させるシステムというのは一面ではあると思うんです。でも、それは「友達」でなくても構わないというか。グループ化することで効率化するなら、そのグループを向上する社会集団の種類は問われないじゃないですか。「友達」でも「恋人」でも「家族」でも、単に学校でよくあったような「近くの人とグループを作る」でも社会生活の効率化は図れるのではないか。
と思ってしまった。
感情とか、個人の問題とか以前に。
後の方に出てくるもう一つの答えでも、帰納的な考え方をしているからかもしれないけど、ほかの社会集団ではなく友達でなくてはならない理由は分からないままだった気がする。
友達を観察して「友達とは何か」を考察する以上、ほかの社会集団ではない「友達」を定義することは難しいのかもしれないけど。対照実験も必要だよねぇ。
結果的にさなかは友達を作れて、豊かな人生を送ることになったから有耶無耶になったけど、そういう意味での「友達(ほかの社会集団からは差別化されたもの)」についての議論もほしかったです。

興味深かったのは、はじめに理桜が友達の素晴らしさを説いたときに、「理由は分からないけど、みんな友達がいるから友達は必要だ」というようなことを言ってたこと。私はここの理桜とさなかのやりとりに感動した。
具体的にはさなかの言った「科学的」という言葉。
つい勘違いしてしまうけれども、世界がまずあって、その構造を解き明かすのが科学なんですよね。
水がちょうど100℃で沸騰するのではなく、水が沸騰する温度を摂氏100℃と定義してる、みたいな。
なんか蒙が啓けたというか、そうだったと思い出したというか。
それを指摘してくれたのが良かったです。


Ⅵ章で語られる魔法のあり方や、魔法的な考え方による「友達とは何か」も面白かった。
納得できるかというと、こちらの答えにも納得できないんだけど。そういう考え方もあるのか、という新鮮さがおもしろい。
"無限"ってなんだろう。

この作品の、この「魔法」については魔法のままの方が好みだなって思いました。
魔法であるともないとも確定しない限り、無限の可能性を想像できる。なら私は(私も)魔法と想像していたい。

あ、分かった。
この小説は「友達とは何か」が主題ではないんだ。そこも大事なポイントだけど。
少女が、世界の見方を知る話なんだ。
たぶん本質はそっちだ。と思う。違うかも。
シンプルなテーマだけど、だからこそ普遍的だしおもしろい。



先程書いた、「方程式自体は出てこないからなんか肩透かし感がある」ということなんだけど、今まで読んだ野崎まど作品に感じていた不満のひとつはたぶんこれなのだと思います。
天才少女が何かすごいことをして、でもその「すごいこと」の肝心のところが書かれていないように感じる。
作中世界にはまってしまっているからこそ、どんなすごいことをするかを知りたいのに、その期待はずらされて、だからフラストレーションが溜まるのかもしれない。
アムリタを読んだときから、ぼんやりと思ってはいたんです。この本を評価するためにはメタレベルが違うのかもしれないって。うまく言語化できないんだけど。
もっとも、サンプル数3で何をいうかって感じがします。

ほかの作品も読むかなぁ。どうだろう。
野崎まどの良さは相変わらずよく分からないんだけど、『パーフェクトフレンド』はおもしろい小説でした。

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