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2024/05/19 (Sun)

「鏡 変装 小休止」


「映画」はあの映画です。
バロン好きです。
でも、黒猫じゃないよね。
あれ…。ムタさんだっけ??

でもお店のイメージは忘暁堂です←
……続きが読みたいけど絵が変わるんだったら嫌だなって思ってます。
大好きです。

そういえばあの猫型ロボットの映画で、鏡の中に入る感じのがあったような。
乗って操縦できるサイズのロボット作るのって夢だよね。
日本の技術力ならそのうち本物のガンダムとか作れそうな気がするのですが、どうでしょう。

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つづきはこちら

はじめて入った裏道。
まるで映画みたいに黒猫に導かれて、怪しげな店に行き着いた。
何語かも分からない外国の言葉で書いてある看板。流麗な筆記体はもはや暗号だ。
透明な硝子扉を通してみても、薄暗い店内はよく見えない。
もっとよく見ようと身を乗り出すと、扉が開き勢いよく店の中に転がり込んでしまった。
チリリン、と扉についていた鈴が澄んだ音で鳴る。
けして大きな音ではないのに綺麗な鈴音は店の中に浸透した。
その音を聞きつけたのか店の奥から背の高い男の人が出てくる。
「なにか、ご用ですか?」
「いえ……」
咄嗟に店内に眼を彷徨わせる。と、吸い寄せられるように、ある一点に眼が留まった。アンティークの姿見。
「あれ…」
声に出すと、店員らしき男の人は振り返ってその鏡を認めた。一瞬、彼の口もとに微笑が浮かんだような気がした。
けれど再び此方を向いたときには笑みの欠片もなく、見間違いだったのかもしれないと納得させた。
「近寄って見てみますか?」
「いいんですか!?」
どうぞ、という言葉に甘えて、鏡のすぐ前まで行った。近くで見れば見るほど鏡の装飾は精巧で緻密、細部に凝っていても全体の調和が取れていて美しかった。

鏡に姿を映してみる。
水面を風が吹き抜けるように鏡面が揺らいだ。
「え?」
鏡の中の自分と手を合わせてみた。
冷たい鏡の感触を感じるでもなく、触れたところから沈んでいく。
指が、手が、腕が、肩が、頭が、鏡の中に入っていった。
立ち止まれずに倒れこむ。
振り返って見た鏡の向こう側には、私じゃない『私』がいた。
『私』は私に気づくとにっこり笑い、鏡に映る範囲から出ていった。
もう一度、鏡面に触れてみる。
何も起こらない。
もと居た世界に戻れるかもしれないという期待は呆気なく崩れた。
どこかに戻る手がかりがないか、今いる場所を落ち着いて見渡してみた。
感心するほど何もない、真っ白な部屋。
こんな場所に独りでいたのなら、外に出たくなる気持ちも分かる。
膝を抱えて座り込んだ。
寂しい。
戻りたい。
独りはいや。
まだそんなに時間は経っていないはずなのに、どうしてか、ずっと此処にいたような気がしていた。

それから少し経って、『私』が再び鏡の向こうに姿を現した。
私は立ち上がって鏡面すれすれまで近づく。
どんなに近くに行っても絶対に通り抜けることはできなかった。
『私』が口を開いた。
声は聞こえてこない、けれど唇の動きで言っていることが伝わってくる。

『あなたが私に変装してこっちで生活してた間、私はそこに閉じ込められて、ずっとひとりだったの。だから、もう、返してよ』
どういうこと?
変装しているのは貴方じゃないの。
私の居場所を返して。
『あなたの居場所?そこでしょう』
嘘。
信じない。
向こう側に居るべきは私なのに。
『信じてないの?そう言うけれど、あなた、自分の名前わかる?』
私の名前。
…私の名前?
『分からないでしょう。だって、あなたには名前がないもの』
嘘。
私にも名前はある。
名前が…、
名前が…
『小休止は終わり。私はもとの生活にもどったの』
違う。
其処にいるのは私のはず。
『泣いても喚いても、そこからは出れないわ。私も無理だった』
そんなことない。
私なら。

『最後に教えてあげる。私の名前は――」
その音は、あの鈴の音のように私の身体に浸透した。

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2009/05/28 (Thu) 創作物 TB() CM(0)

「針 夢 落ちる」


私は螺旋階段を上っていた。
上へ、上へと駆け上る。
階段の先に何があるのか、自分はどこから来たのか、なにも分からない。
上を見ても下を見てもただ闇に沈んでいる。
疲れても立ち止まることは許されなかった。走り止めたその瞬間、今いるところの一段下から崩れていく。
崩れる階段にせきたてられて更に上へ走った。

上っても上っても景色は変わらない。
自分は今、本当にこの階段を上っているのだろうか。
上っていると思い込んでいるだけで、本当はその場で足踏みしているだけなのではないだろうか。
不安が膨れあがる。それでも階段を上るしかなかった。
もはや、どうして、も何のために、も意味をなさない。
身体が限界を叫ぶ。
足がもつれて転んでしまった。

地面が消える。
引力にしたがって私の身体が落ちていく。
風圧に耐えられず、目を閉じる。
永劫にも感じられるほどの時間、空中を漂っていた。
地面にたたきつけられるのを覚悟していたけれども、いつまでたってもそれはやってこなかった。

恐る恐る目を開いてみる。
視界に入ってきたのは緑だった。
上を見ても下を見ても、右にも左にも階段の名残はどこにもなかった。
夢、だったのだろうか。
走っていた感覚も、身体の疲労も、現実にしか思えない。

さくり、草を踏む音がした。
体を起こして半身を捻り、そちらを見遣る。
そこには黒い服を身にまとった男が立っていた。
彼は帽子を取ると、優雅にお辞儀をする。
つられて私も軽く会釈をした。
彼はおもむろに鈍く銀色に光る懐中時計を取り出した。

開くと文字盤が輝いた。
時計の針が高速で逆回転を始める。

それを見ながら意識が遠のいていくのを感じた。

私は螺旋階段を上っていた。
上へ、上へと駆け上る。
いつとも知れず、どこかも分からない。
それでも私はただ階段を上っていく。

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2009/05/25 (Mon) 創作物 TB() CM(0)

試み。

文章力とか発想力とかを鍛えるために三題噺やってみようかと思います。
友人からお題もらって。
できれば毎日……?


今日のお題は

「日記 空 コンクリート」


SSは続きから。

何だかよく分からなくなってしまいました。

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つづきはこちら

瓦礫の下に紅いものを見つけた。
少女は久しぶりにみた『色』に近寄って、コンクリートの合間からそれを取り出す。
紅い革の表紙の分厚い本。
開いてみると、それは日記だった。

『2133年 6月15日 
  今日も空は見えない。
  私が生きたことを証明するために日記を書くことにした。』
  

『2133年 10月3日 
  妹が会いにきた。いつ見ても変わらない姿だ。
  ……以前見たのはいつだっただろうか。記憶が混濁している。
  私の病が心配だ、という。
  心配されても私の不安は取り除けない。』


少女はその日記を夢中になって読んだ。
ページをめくるたび、そこには病に倒れたこの人の姿が浮かんでくる。
けれどこの日記を書いた人が男性であるのか女性であるのか、読むたびに印象が変わって判別ができなかった。

ついに日記は最後のページとなる。

『2134年 3月27日
  ラジオからハレー彗星が地球に近づいたというニュースが聞こえてくる。
  ハレー彗星。
  大昔の本には尾に含まれる有毒成分により生物は皆窒息死するとあった。
  それは事実ではないと立証されてからも遠い。
  けれども私は願ってしまう。
  生物など、滅びてしまえばいい。』

『2134年 3月28日
  願わなければよかった。
  病室の外が騒がしい。
  空から硫黄と火が降ってきて、逃げ惑う叫びが聞こえる。
  こんなときに病人を気にかける者はいない。
  私はここでひとり死んでいく。』

2134年、3月28日。
その日はたしかに、天からの硫黄と火によってこの世界が滅ぼされかけた。
神の裁きの再来だと言われたらしい。

滅亡のあとに生まれた少女には真実を知る術はなかった。
ただ、破壊され尽くしたコンクリートの街が眼前に広がる。
そこに何を見るかは人次第だ。

家に帰り、少女は持ってきた紅革の日記を開いた。
一番新しいページに、彼女は墨痕鮮やかに文字を記していく。

『2150年 5月24日
  日記を拾いました。
  今日からは私がこの日記を書いていきます。
  私の存在を証明するために。
  ――今日は空がとても綺麗です。』

少女は開いた窓から青空を見上げた。
雲ひとつない空。
風が吹き込んできて、泥と埃に汚れてしまった彼女の真っ白なワンピースを揺らした。

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2009/05/24 (Sun) 創作物 TB() CM(0)