文章力とか発想力とかを鍛えるために三題噺やってみようかと思います。
友人からお題もらって。
できれば毎日……?
今日のお題は
「日記 空 コンクリート」
SSは続きから。
何だかよく分からなくなってしまいました。
[0回]
つづきはこちら
瓦礫の下に紅いものを見つけた。
少女は久しぶりにみた『色』に近寄って、コンクリートの合間からそれを取り出す。
紅い革の表紙の分厚い本。
開いてみると、それは日記だった。
『2133年 6月15日
今日も空は見えない。
私が生きたことを証明するために日記を書くことにした。』
『2133年 10月3日
妹が会いにきた。いつ見ても変わらない姿だ。
……以前見たのはいつだっただろうか。記憶が混濁している。
私の病が心配だ、という。
心配されても私の不安は取り除けない。』
少女はその日記を夢中になって読んだ。
ページをめくるたび、そこには病に倒れたこの人の姿が浮かんでくる。
けれどこの日記を書いた人が男性であるのか女性であるのか、読むたびに印象が変わって判別ができなかった。
ついに日記は最後のページとなる。
『2134年 3月27日
ラジオからハレー彗星が地球に近づいたというニュースが聞こえてくる。
ハレー彗星。
大昔の本には尾に含まれる有毒成分により生物は皆窒息死するとあった。
それは事実ではないと立証されてからも遠い。
けれども私は願ってしまう。
生物など、滅びてしまえばいい。』
『2134年 3月28日
願わなければよかった。
病室の外が騒がしい。
空から硫黄と火が降ってきて、逃げ惑う叫びが聞こえる。
こんなときに病人を気にかける者はいない。
私はここでひとり死んでいく。』
2134年、3月28日。
その日はたしかに、天からの硫黄と火によってこの世界が滅ぼされかけた。
神の裁きの再来だと言われたらしい。
滅亡のあとに生まれた少女には真実を知る術はなかった。
ただ、破壊され尽くしたコンクリートの街が眼前に広がる。
そこに何を見るかは人次第だ。
家に帰り、少女は持ってきた紅革の日記を開いた。
一番新しいページに、彼女は墨痕鮮やかに文字を記していく。
『2150年 5月24日
日記を拾いました。
今日からは私がこの日記を書いていきます。
私の存在を証明するために。
――今日は空がとても綺麗です。』
少女は開いた窓から青空を見上げた。
雲ひとつない空。
風が吹き込んできて、泥と埃に汚れてしまった彼女の真っ白なワンピースを揺らした。
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