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2025/03/15 (Sat)

「鏡 変装 小休止」


「映画」はあの映画です。
バロン好きです。
でも、黒猫じゃないよね。
あれ…。ムタさんだっけ??

でもお店のイメージは忘暁堂です←
……続きが読みたいけど絵が変わるんだったら嫌だなって思ってます。
大好きです。

そういえばあの猫型ロボットの映画で、鏡の中に入る感じのがあったような。
乗って操縦できるサイズのロボット作るのって夢だよね。
日本の技術力ならそのうち本物のガンダムとか作れそうな気がするのですが、どうでしょう。

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つづきはこちら

はじめて入った裏道。
まるで映画みたいに黒猫に導かれて、怪しげな店に行き着いた。
何語かも分からない外国の言葉で書いてある看板。流麗な筆記体はもはや暗号だ。
透明な硝子扉を通してみても、薄暗い店内はよく見えない。
もっとよく見ようと身を乗り出すと、扉が開き勢いよく店の中に転がり込んでしまった。
チリリン、と扉についていた鈴が澄んだ音で鳴る。
けして大きな音ではないのに綺麗な鈴音は店の中に浸透した。
その音を聞きつけたのか店の奥から背の高い男の人が出てくる。
「なにか、ご用ですか?」
「いえ……」
咄嗟に店内に眼を彷徨わせる。と、吸い寄せられるように、ある一点に眼が留まった。アンティークの姿見。
「あれ…」
声に出すと、店員らしき男の人は振り返ってその鏡を認めた。一瞬、彼の口もとに微笑が浮かんだような気がした。
けれど再び此方を向いたときには笑みの欠片もなく、見間違いだったのかもしれないと納得させた。
「近寄って見てみますか?」
「いいんですか!?」
どうぞ、という言葉に甘えて、鏡のすぐ前まで行った。近くで見れば見るほど鏡の装飾は精巧で緻密、細部に凝っていても全体の調和が取れていて美しかった。

鏡に姿を映してみる。
水面を風が吹き抜けるように鏡面が揺らいだ。
「え?」
鏡の中の自分と手を合わせてみた。
冷たい鏡の感触を感じるでもなく、触れたところから沈んでいく。
指が、手が、腕が、肩が、頭が、鏡の中に入っていった。
立ち止まれずに倒れこむ。
振り返って見た鏡の向こう側には、私じゃない『私』がいた。
『私』は私に気づくとにっこり笑い、鏡に映る範囲から出ていった。
もう一度、鏡面に触れてみる。
何も起こらない。
もと居た世界に戻れるかもしれないという期待は呆気なく崩れた。
どこかに戻る手がかりがないか、今いる場所を落ち着いて見渡してみた。
感心するほど何もない、真っ白な部屋。
こんな場所に独りでいたのなら、外に出たくなる気持ちも分かる。
膝を抱えて座り込んだ。
寂しい。
戻りたい。
独りはいや。
まだそんなに時間は経っていないはずなのに、どうしてか、ずっと此処にいたような気がしていた。

それから少し経って、『私』が再び鏡の向こうに姿を現した。
私は立ち上がって鏡面すれすれまで近づく。
どんなに近くに行っても絶対に通り抜けることはできなかった。
『私』が口を開いた。
声は聞こえてこない、けれど唇の動きで言っていることが伝わってくる。

『あなたが私に変装してこっちで生活してた間、私はそこに閉じ込められて、ずっとひとりだったの。だから、もう、返してよ』
どういうこと?
変装しているのは貴方じゃないの。
私の居場所を返して。
『あなたの居場所?そこでしょう』
嘘。
信じない。
向こう側に居るべきは私なのに。
『信じてないの?そう言うけれど、あなた、自分の名前わかる?』
私の名前。
…私の名前?
『分からないでしょう。だって、あなたには名前がないもの』
嘘。
私にも名前はある。
名前が…、
名前が…
『小休止は終わり。私はもとの生活にもどったの』
違う。
其処にいるのは私のはず。
『泣いても喚いても、そこからは出れないわ。私も無理だった』
そんなことない。
私なら。

『最後に教えてあげる。私の名前は――」
その音は、あの鈴の音のように私の身体に浸透した。
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2009/05/28 (Thu) 創作物 TB() CM(0)
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