怪盗ロータスと検事安西省吾。今は敵対関係にあるが、かつては昔馴染みであり並んで駆け抜けた時代があったのだ。決別した二人がついに相まみえる。
帝都探偵絵図シリーズ第4弾。
なんですけど、3作目までを読んだのがたぶん5年くらい前で、今までの内容をきれいさっぱり忘れてしまってまして。
礼と高広のキャラクターはなんとなく覚えてたし、怪盗ロータスもいた記憶はあるんだけど、安西……誰?みたいな状態で読み始めました。
しかも今回、最初の2話には礼と高広出てこないし。どういうシリーズだったかを思い出せないまま読み進めてしまった感がある。
3巻まで読み返してからにすればよかったかなと若干後悔しています。
なので以下の感想は、もしかしたらというかたぶん絶対、4作続けて読んだときのものとは違うと思う。
キャラクター要素の強いミステリって、キャラクターに対して思い入れが持てないと感想が無になることがえてしてあるじゃないですか。
これは……まぁ、無とまでは言わないけど薄かった。
思い入れはたぶん、5年くらい前に3巻までを読んだときにはあったんだろうと思う。けど、礼と高広に関しては思い出せないまま、この1冊で新しく獲得することもできずに終わってしまった感じ。
まあシリーズの主役とはいえ今作ではサブだから、礼もおとなしかったし、思い入れを持てなくても仕方ないかなとも思うんですけど。
一方のロータスと安西ですよ、問題は。
この二人に関しては、性格とか設定とか特に覚えてなかったけど、1話目2話目の短編を読んでいくうちに思い入れはそれなりに持てた。
でも、というか、だからこそというか、3話目のクライマックスですごくもやもやしたんです。
怪盗が本当に盗みたかったものは、たったひとりの友人だった、っていうシチュエーションはめちゃくちゃ萌えるんだけど。なぜかその萌えをそのまま受け取れなかった。
1つには、3話目に関しては捜査側の高広の視点で見ていたから、怪盗がまんまと目的を達することに歯がゆさを感じてしまったのだと思う。
そして、1話目2話目で描かれていた蓮の性格や性質に、どうも底知れないおそろしさを感じてしまって、安西は本当にそれでいいのか(いや、それが葛藤の末に彼が出した結論なのは分かっているんだけど)と思ってもやもやしてしまう。
情報が非対称すぎるのが気に入らないのかもしれない。友人と言っても、省吾は蓮のこと何も知らなくない?みたいな。怪盗だから経歴明かせないし、生い立ちとか関係なく友達になったっていうのが大事なのは理解できるけど。
個人情報を知らされないのは信用されてないからでは、みたいな感覚を私が持っているので、引っかかってしまう。
友情じゃなくて恩じゃないのかとか。いや、互いに相手に救われたと思っていそうな関係性とか好きなんですけど。けど。
きっと、蓮と省吾には書かれていない二人での冒険もたくさんあって、それを積み重ねてきたから最後の選択に至ったんですよね。でも、書かれていない二人の歴史がどうも想像できないというか。2話目のラストがどうも破局に至りそうな雰囲気出していたから、なんでそこから3話目ラストに繋がったのか処理しきれなかったのかもしれない。
そこになんとなくすっきりしないものを感じていたから、対比として描かれる礼と高広の関係性についてもどうにも気持ち悪さを感じてしまったりして。
非凡な人と普通の人(ただし非凡な人の友人でいられる時点で普通じゃない)みたいなあれは好きなはずなんだけど。
だから高広が安西に語った、どうしてホームズ役をしようとするのかみたいなこととかは良かったんだけど。
さっきから何度も書いているように噛み砕いて抽象的にいえば萌えるシチュエーションではあるけど、みたいに感じるってことはパッションで萌えてはいないんですよね。
なんでだろう。
感情描写がないわけじゃないし。文脈もきちんとあるし。
うーん、いろいろ言っても、結局は今の私には好みじゃない関係性/キャラクターだったっていうだけの話なのかもしれないですが。
明治末期〜大正時代くらいのものを背景に散りばめているこの雰囲気は好きです。
東京の地理や位置関係もぼんやりと分かるようになってきたので、より楽しめた。
服部時計店ってベッキーさんシリーズにも出てきたあれだなとか。
十二階が出てくるだけでなんとなくテンションが上がる。いわんや、がっつり物語の中心に据えられたら。
作中で語られていたあのエピソードは実際にあったことなのでしょうか?
"幼馴染の作家"はまさかあの人じゃなかろうなって思ってたら本当にそうで苦笑した。このシリーズならそりゃそうなりますよね。
この後確か続編出てないし、シリーズは今作が最後なのかしら。
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