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2025/05/14 (Wed)

『ノラ猫マリィ』

すっっっごくおもしろかったです!

『薔薇のマリア』のその後の物語ではあるのだけれども、世界は同じだとしても環境は全然違っているし、キャラクターも別人だから、単独の話として楽しめる。異世界物語の第一巻として、とても良い話だったんじゃないかと思います。キャラクターの紹介や、仲間作りや、敵との闘いと、この世界はいったいどんな場所なのかという謎と。
逆に、私は『薔薇のマリア』シリーズが好きだったので、これとあれがつながるのかな?みたいなことを考えてしまって、『ノラ猫マリィ』の物語自体に没入しきれなかったところがあって、少し残念。いや、なんだかんだ言って、のめりこんではいたんですけれどもね。


帯に「ボクらは何度でも巡り会う」とあるのがこの作品のテーマなのだろうかと思いました。
異なる時や世界や場所で、異なる出会い方をする、新しいマリアと仲間たちの物語。


そう、薔薇マリのキャラクターとは全然違うのかっていうのが驚きでもあり、納得でもあり。
アサイラムのモリーとか、片腕が義手の若頭ローチとか、魚顔で関西弁の卍・クルチバとか、属性だったり名前だったりが記憶と重なるキャラはいるんですけれども。
でも、環境が違って生きてきた人生が違ってたら、どういう人になるかというのも全然違うんだな、ということをすごく思いました。
だから、マリア・ローズはマリアローズではないんですよね。
たとえば、マリアローズよりある意味では素直というか変に鬱屈したところがないような気がします。周りに超強い人がそんなにいないからかもしれないけど。
なんか読みながらずっとそういうことを感じていてました。マリアローズの物語はもう完結してしまっているのは分かっているけれども、寂しい気持ちがやっぱりある。
ある意味では生まれ変わりなのかなぁ。その言葉を使うのが適切かはともかくとして。
卍はまぁ子孫なんでしょうけど。何代離れてるかわからないけど。魚顔遺伝子強いな(笑)
(世界設定的にも)過去にいた人たちの単なるコピーではないと良いと思うので、マリアもほかのキャラクターたちも別人であることにほっとするところもあります。

とはいえ、p176~177は読んでて「あぁぁ」って叫んだ。
記憶は蓄積されているのだろうか。
メロブ特典読んだのだけれども、ジンが「マリアをじっと見つめる人」なのが前作でいうとアジアンポジションだとしたら、このタイミングであれがよみがえるのとてもいいですね。でもジンは荊なのかもしれない
この世界は薔薇のマリアの世界よりもずっと後なのだろうと思うのですが、具体的にどのくらい経ってるんだろう。
デンはエルデンのアンダーグラウンドなのだろうか、とか。銀の魔女はサフィニアじゃないかとか。期待含めて、関連性が気になります。今後明かされてくれたらいいなぁ。というか、今後があればいいなぁ。


冒頭や途中途中に挿入されているフォントが違うところ、人称が「ボク」「キミ」なのがすごく趣深いですし、p307の「切実な、ある願いだ」という一文に何となく心がぎゅっとします。



店舗別特典はシャルロットのとジンのやつを読んだわけなのですが、キャラに愛着持たせる感じがずるいなと思います。別のバージョンも読みたくなる。けど、本体の方がこれ以上増えても仕方ないんだよね……。
この先、何らかの手段で読めることを期待しています。たとえば何年か後にでも、短編集とか電子書籍とかで。
あと、私は画集の短編版を読んでいないのですが、単行本版がすごくおもしろかったのでそっちも読みたくなっている。今から入手できるのかしら……。
何か本当に、彼らの物語をもっと読みたい、という気分です。

とりあえず、このシリーズの続編を待っています!
帯に「新章開幕」って書いてあるから、続くと思うんだけど……どうなんですかね。

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『鍵の掛かった男』

久々に作家アリスシリーズを読んだ気がします。
最期に読んだのはたしか菩提樹荘だったけれども、一年前くらいかな……と思って読書メモを見てみたらちょうど去年の10月20日に読んでました。なんでしょうね、秋に読みたくなるんですかね。
まぁ菩提樹荘も短編集ですから、長編は本当に久しぶりで。そのせいか、原作ってこうだったっけ……と思うこともしばしば。

でも実際、いつもと違ってはいたんだろうと思います。
一番は、半分以上アリスが単独で捜査していることかな。火村が現場に到着してるのが320ページあたりで、全540ページくらいの単行本なので、半分じゃきかないか。途中、電話での指示とかはあるにしても、火村抜きでここまでやれるのか、と意外に思いました。作中でも言われているけれども。いつも賑やかし的な珍解答(ときにそれが探偵にとっては大きなヒントにもなる)をしているイメージがあったので。
もちろん火村も、現場に来てすぐ新事実を発見する活躍ぶりでした。

あまりミステリっぽくはないな、という印象が読み始めからあって、それが読み終わるまでずっと続いていた。
もちろんやっていることは推理小説でしかないのだけれども。
「ホテル暮らしをしていた梨田稔という男の死は、自殺か他殺か」「彼はどういう人だったのか」というのがこの小説で解き明かされるべき謎で、それを解明するためにすごく丁寧に来歴や、何を考えていたかということを追っていくつくりだから、そういう風に感じるのだと思います。
でも「どんな人間か」「何を考えていたか」なんて結局解きようがない謎だし、だから本格ミステリとか犯人当てとかでは蔑ろにされている……ような気がする。サンプル数が少なくて偏っているからそう思うんだろうけど。もちろん、そうじゃない作品もあるし、そこの部分をちゃんと考えている小説が私は好きなのですが。
だからトリックとかの派手さはない(有栖川作品ではもともとない気もする)けれども、深みがあって、好きです。
アリスが随所で梨田稔の幻と会話しているのも、どんな人かという推理が合っているか証明しようがないのをもっともらしくする苦肉の策なのだろうと思うし、そういったところとか結局真相といっても想像としてしか描かれないので、何が本当にあったか判然としないあたりが、若干もやっとしたのだけれども、まぁしょうがないんだろうな。
捜査シーンでも、適度に新しい事実が分かっていったり、今までにあった手がかりが繋がっていったりするので、楽しんで読める。たとえ螺旋のような進捗具合でも、前進しているんだというのがわかるとしんどくないんだな、と思いました。
そして、ラストシーンが爽やかで良いですね。

あと、読んでいるといろいろな欲を刺激された。
欲といっても、フレンチおいしそうだなとか、中之島に行って素敵な近代建築見たいとか、コーネル・ウールリッチの本読んでみたいとか、ホテル暮らししてみたいとか、そういう類のもの。
それぞれのものが魅力的に書かれてるからなんでしょうね。

3つ理由がそろったら……っていうのも何となく含蓄がありそうな気がしたのでとりあえずここに書きとめておく。


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つづきはこちら

アリスが、火村の過去について知りたがっていることを本人に告げたのが、何というかすごいことなのではないか、と思った。勝手に、気になっていることすら隠そうとしているというイメージでいたので。「俺が本気で調べたら」といいつつ、そうすることは決してないんだろう。


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『夜の床屋』

これは……何なんだろう。
おもしろかったのはおもしろかったんです、特に前半は。謎が魅力的で、着地点に意外性があって。でも、最終的に辿り着いたところが意外すぎて、私はいったい何を読んでいたのだろう……という気分になりました。

東京創元社だし、よくある日常の謎系連作短編集かなと思って読み始めたんですが、「日常の謎」というよりも非日常の謎とでも言いたい感じで、謎の不思議さは断然好みでした。。
表題作では、遭難して無人駅で夜を明かすことになった主人公たちがシャッター街と化していた駅前で深夜に営業している理髪店を見つける話。
二話目は、霧の深い町で、寝ている間に寝室の絨毯が盗まれる話。
三話目では、小学生の少年にドッペルゲンガー捜しに誘われ、廃工場を訪れる。少年たちには何か企みがあるようだがそれは……という感じ。
四話目以降は一続きの話で、葡萄荘という洋館で初代当主が隠したという宝を探す話と、それにまつわるあれこれ。



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つづきはこちら


二話目の海霧の町の雰囲気がすごく好きです。
そのほかの話も、ちょっと地面から浮いている感じがあって好き。
幻想的な雰囲気があるから、幻想的な解決も納得できる……かもしれない。

会話も軽妙で、読んでいて楽しかったです。
でも、主人公もほかの登場人物も、どういう人なのか、どういう関係性なのかとかがあんまりよくわからなかったなぁ、と。
特に主人公。一人称視点の語り手でもあるのに、状況説明はしてくれても感情とかは特に言わないから、大学生ってことくらいしかわからない。
冒頭からしてなんで遭難しかけていたのか謎のままだし……。
伏線になりうる部分の説明はすごく自然かつ印象に残るくらいの描写なので、そこの部分は巧いと思うんだけれども。
キャラクターについてもうちょっとわかったほうが、安心して読めるかな。個人的には、推理小説だと、推理をしている人が(読者にとって)何者かがわからないとなんとなくすっきりしないところがある気がします。探偵役やほかのキャラクターの人物描写によって、推理自体への信頼度を高められるというか。


論理の飛躍というのがどういうものをさしているのかあまりよくわからないのだけれども、ハウダニットかと思いきやワイダニットだったり、推理小説かと思いきや超常的な方向に向かったり、結末は確かに予想外。自分でも推理しながら読んでいてさらにその上をいかれるみたいな意外さではなく、小石をたどって歩いていたら魔女の家に連れていかれたみたいな。うーん、うまくたとえられないです。

っていうか、最期の方の話がそういうそれまでの感想を全部持っていった感じで……。
人魚って何!?
それこそ東京創元社の日常の謎系連作短編集で、ばらばらだった短編が最後につながるってのはよくあるイメージなんですけど、確かに繋げてはいるんだけど、なんかそういうのでもない感じ。
個人的には、そこまで繋がらない方が好みかなとは思いました。
それか、繋げるなら繋げるでもうちょっとかちっと伏線はめるとかの方が。
余韻残す終わり方もいいけど、これはさすがに、最後の飛躍が大きすぎるから……。というより、無理やりすぎない?という気持ちの方が強い。二話目三話目とのつながりはともかく、一話目がかなり無理ある。香水というだけでは。

廃工場は食品関係の工場なんですよね……。
ロマンが広がりますが、ロマンを感じるにはやっぱり根拠が薄いなぁ、と現実に引き戻されてしまうのです。

「『眠り姫』を売る男」の密室殺人(?)も、明らかになった衝撃の事実によってごまかされたけど、殺人事件自体については筋がとおっていないような気がするのです。
筋がとおってないというか、明かされた事実以上に説明されていないことの方が多いので、本当にそれで解決でいいのかわからない。
人魚って鋭い牙あるの?とか、足がないなら結局どうやって移動してるの?車椅子にしてもどこから持ち込んだ?みたいな疑問が多々ある。人魚っていうからには下半身魚なんだろうけど、クインが彼女を「愛した」ってのは……みたいな下世話なあれも含めて。

私が書いてある以上のことを読み取れない阿呆だからかもしれないんですけど、最後の方は全体的に説明不足な気がしました。前半からちょっと描写不足な感じはあったけれども、奇想天外なことをやるなら特に、納得させられるだけの説明/描写をしてほしいです。
そんなわけで、なんで百五十年でも早すぎるのかいまいちよくわかってないです。

解説やプロフィールを読むと、「『眠り姫』を売る男」が新人賞の最終候補まで残った作品で、「夜の床屋」が受賞作らしいんだけれども、よくこんな雰囲気も何もかも違う話をひとつの連作短編集にまとめようと思ったな……って感じです。
いや、まとまってるのかな?

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『一の悲劇』

ドラマ化されたというのを聞いて、読んでみました。ドラマはまだ見てません。読んでからというつもりだったので。録画はしてるはず。

あらすじ。
主人公は、自分の息子が誘拐されたという連絡を受ける。しかし、犯人は誤って隣家の息子を誘拐していたのだ。主人公は身代金授受に失敗し、誘拐された少年は殺されてしまった。


感想を一言でいうと、視点人物が嫌いです。
全てこいつの蒔いた種(いろんな意味で)なのに、悲劇に酔って、まわりが見えてなくて、捜査を引っ掻き回して状況をより悪くしていって……という感じなので、読んでてすごくイラッとしました。
その自己憐憫的な一人称が地の文だから、尚更。
そもそもが蒔いた種なのは仕方ないとして、その後の行動次第でここまでの結果にはならなかったと思うし、警察に任せておけばよかったんじゃってのもすごく思ってイライラした。
自業自得ならまだいいけど、主人公の行いにより報いを受けているのは他の人なので、真犯人よりもむしろ主人公こそが犯人なんじゃないみたいな気になる。少なくとも、事件の原因ではある。
何よりももやもやするのは、たとえ彼に「全てお前のせいだ」と言おうとそれはむしろより悲劇にひたれるから逆効果っぽいところが……。

トリックというか、メインのアリバイ、身代金要求の目的辺りはすごくおもしろかったんですけど、それが捜査によって導き出されたものではなく、最後に出てきた探偵から明かされるだけのものだったのが、若干の不満。
わりと捜査シーンがおもしろい作家さんだと思ってたので、一番おもしろい部分と捜査が結びついてないのが残念。
犯人自体はまぁ、驚きは特にないぐらいですし。(あっちこっちに視線を誘導されるので、実際に明かされるまで気づかなかったといえばそうだけど、この人が犯人であってもおかしくないよね、というのはずっとあった。私の中では解決のふたつ前くらいのダミー犯人と二択だった)

あと、法月綸太郎(作中人物の方)わりと陰薄かったですね。
被害者の父親の一人称だから仕方ないかもだけど。

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『ランボー怒りの改新』

表題作とナラビアン・ナイトはNRで読んでいたんですが、この単行本が完成形だったんだ……という気がする。
なんというか、それぞれの短編だけではなくて、帯とか、解説とか、袖の著者紹介とか、そういうものを含めてひとつの「前野ひろみち」という物語を作り上げている感じ。
そして、私はそういう感じがとても好きです。なんていうんでしょうね、現実と虚構があいまいになるというか、物語を現実であるかのように思わせてくれるというか、そういうところが。
今まで読んだほかの物語でいうと、辻村深月の『V.T.R』の文庫解説を赤羽環が書いていたりとか。ダレン・シャンとか?そういうやつ。
逆に物語が物語であることを自覚しているある種のメタがあまり好きではないのですが。

まぁ、私の好みの話は置いておいて、『ランボー怒りの改新』に話を戻します。
「佐伯さんと男子たち1993」アホな中学生たちのアホな青春。佐伯さん素敵。
「ランボー怒りの改新」ベトナム帰還兵ランボーが乙巳の変に介入する話。何それって思うし、冷静になると、なんで律令制以前なのに反共産主義とかいってるんだこいつらってなるんですけど、読んでると何故か納得させられてしまう不思議。中国は唐らしいのにベトナムは南北に分裂しているらしいのが謎。境目がどこにあるのか気になってしまいます。古代史好きとしても、わりと知ってる人名出てきて楽しい。鎌足と中大兄の出会いがフットボール大会になってる辺り爆笑でした。
「ナラビアン・ナイト」これ好きです。奈良風千夜一夜物語なので、もしかしたら好きなのは千夜一夜なのかもしれないという気もしなくもないんですが。アラビアンな世界が魔術と鹿の奈良に置き換わるだけでこんなにもおもしろくなるのか、という感じ。『猟師と鬼との物語』も気になります。
個々の作品もそれぞれ、何これって感じの設定でなのに読まされてしまうおもしろい短編たちなんですが、「満月と近鉄」がすごく良かったです。「ナラビアン・ナイト」作中話の最後の話みたいに今までの3編を貫き、しめくくる物語であるというのもあるんですけど、ただ青春小説として良い。読後感がすごく好き。

ところで「満月と近鉄」に出てくる「長脛君」という人物、奈良的なつながりが何かあるのかもしれないのでたぶん邪推だと思うんですけど、長脛彦の別名に「登美毘古」があるからそういうあれなのかなと。そう思わせようとしているのかな、って。
じゃあ「前野ひろみち」は役柄的には饒速日なのだろうか。それとも神武?

もっと元ネタ知ってたほうがおもしろいのかなとも思う。ランボーとか、千夜一夜とか。
あと、奈良の土地勘はあったほうが絶対良かった。もっと奈良行っておけばよかった。観光で行ったことある場所は何か所もあれど、想像できるほどわかるのは近鉄奈良駅から春日大社までの辺りだけなので。西大寺はおいしいケーキ屋さんがあったので、あの辺だなという記憶はあるけど、生駒とかは全然未知の領域です。

なんにせよ、小説が面白いというのとはまたちょっと違う、いい読書体験でした。
数年前に先輩に「ランボー怒りの改新」勧めてもらってなかったら今回も手を出さなかっただろうなと思うので、本との出会いも縁なんだなという気がする。
そのとき酔ってたので実は勧めていただいたことを忘れていて、翌日NRがあってなんだろうと思ったのですが。

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