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2024/05/08 (Wed)

Where it will lead us

1月以降、いくつかの出来事があり、「ミステリ」や「犯人当て」についていろいろと考えていました。
ここでいう「ミステリ」は推理要素のあるエンタメ作品、ぐらいの意味なんですが。

1月くらいに、「推理展示」というものを見てきました。
そこでは、ギャラリー的なスペースに「殺人事件の現場」が作られ、展示されていました。そして、A4用紙10枚弱の「捜査資料」を買って、それらを見て推理しましょう、という催しでした。
小説形式以外の「犯人当て」にいろいろ触れてみたかったのと、試みとしておもしろそうだったので、情報を知って、現地に行き、造られた「事件現場」を見て、すごくわくわくしていました。
現場の展示はに凝ってました。血のりとかいいよね。現場検証+文字資料から推理、という形式もおもしろかったです。
ただ、推理にその現場検証はほぼ必要なく、文字資料(捜査資料らしさを出すためかほぼ箇条書きで、現場の様子や死体検案書、容疑者の証言や持ち物の写真が載ってる)さえあればほぼ解けてしまう感じで残念でした。しかも穴埋め形式だから答え絞れるけど、別解いくらでもありうるよね、という感じで。これに1500円払うならフーダニットベストvol.5の方が安いし収録作多いしきっと上質だろうし、いいんじゃないか……という手前味噌なことすら思いました。
で、残念……というか、もやっとした体験だったのですが、極め付きが、その「捜査資料」に「これはパズルではなく推理ゲームです」というような注意書きがあったことです。
私は常々、「犯人当て」に対して、ただの論理パズルなら小説形式である必要ないよねと思っていたんだけど、それはスタンスとして変わってはいないんだけど。でもこの展示でいう推理って、結局は登場人物たちの過去の因縁を想像することが主で、結局それで犯人や手段を確定しきることができなくて、だったら答えが一つに分かる論理パズルの方がまだ、知的遊戯(笑)として楽しい。

一方で、同じく1月くらいに放映されてた「四角館の殺人」。ドラマで犯人当てをする番組で、1日目が問題編、2日目が問題編の続きと解答編という形式です。1日目のドラマパートの最後のシーン、すごく良かった。さすが綾辻先生。推理も、難しいけどこういうことかなというのは追えるようになってた。さすが綾辻先生。
ただそのドラマも、別解がつぶしきれない感じではあって。映像に映っていないところを穿って考えてしまうと、迷宮に陥る感じ。

ここまでで何が言いたいかというと、「犯人当て」をさせるときには読者(あるいは推理する人)が、どうやって受け取るかということを考えるのはすごく重要という当たり前の話です。私自身それはあまり得意ではなく、ミステリ研で「犯人当て」を書いたときは思ってもいなかったところを深読みされてしまってました。でもそれ以上に、「犯人当て」を隔週でするような異常な文化に触れていない人たちにとっては、深読みされる可能性を想定しつくすのは難しいんだろう。
どんなに気をつけて穴のないようにしても、推理をしようと疑心暗鬼に陥った受け手は突飛な発想をしてしまうので、それを避けるためにストーリーや描写面からの「こういう話だったら綺麗だよね」という伏線や、ゲーム形式ならwhoやhowなど問いを絞って選択式にするのが有効なんでしょう。おそらくは。

ということまで考えたんですが、思った以上にもしかすると世間の人は犯人当てに対して、あるいは謎を解くことについて、重きを置いてないのかもしれません。
いや、私だって「犯人当て」として出された短編でもない限り、自分から推理するよりは探偵の活躍見たい方ですが。「ちょっと考えてみたけど全然わからなかったのに、解けてしまう探偵役はすごいなぁ」という感慨にふけりたいがためにちょっとは考えるし、逆に明らかに分かってしまうことをドヤ顔で推理されるといらっとするけど。

あの、作家アリスのドラマがね……。
原作は好きです。ほとんど読んでるとはいえ、内容だいたい忘れちゃってるんだけど。
最初の方は、ほかの短編の小ネタをちょっと持ってきてたりとかして面白いなって思ってました。決め台詞が謎なのとか背景が明らかに京都じゃないところか京都臭しかしないところしかないじゃんとか火村のキャラ変…とか思うところはもうたくさんあるんですがだいたいはアリスがかわいいので許せる。推理パートの演出も、楽しんではいます。業界的にいつまでもシャーロックメソッドに頼ってていいのかという疑問はあるけどそれは私が考える事じゃないし。
ただ、一番嫌なのは、個々の事件の推理を省略してまでオリジナル要素=シャングリラ十字軍入れる必要あるの?ってことで。
ドラマとしては、独立した短編よりも全体を貫くテーマがあった方がいいということは分かります。視聴者の興味を引きつづけることが必要なんでしょう。テレビ業界はシビアらしいですし。
で、制作陣はシャーロックやりたいんだろうから、モリアーティを持ってきたいというのも分かる。火村はホームズタイプの変人探偵ではない、というのも私の個人的な感傷だから置いておく。作家アリスを完結した物語にするなら、火村の「人を殺したいと思ったことがある」を掘り下げないといけないし。
今のところ、オリジナル部分が全然おもしろくないというか、「キャラ」的でテンプレ的な物語で、ごてごてしているように感じてしまう。最後まで見たらおもしろいのかもしれないのでまだ保留だけど。
でもそういう風にしないと視聴者の興味を引けないというのは、謎解きよりもサスペンスの方がドラマとしては、世間的には重要なのかな、と考えるとさびしい気持ちになります。

私、思ったよりも、本格ミステリ好きだったのかもしれない。
本格ミステリの定義はまためんどくさい話になるのでとりあえず謎解きを主体にした物語、ぐらいで。

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つづきはこちら

では恒例の最近読んだ本。ツイッターでだいたい感想言ってるので、1月以降に読んだなかで、印象的なものなどを。
「烏に単は似合わない」
和風ファンタジーとしては好き。ただ、世界がどういうものなんだろうと考えながら読んでたのに、その部分が全然関係なかったのがもやっとしたのと、序盤から完全に少女小説のノリで読んでたので、そこの叙述はちょっと……っていう感じ。

「半七捕物帳」
とりあえず1巻がすごくおもしろかった。大正時代に書かれた小説なのに読みやすくてびっくり。古いからってあれもこれも敬遠してたのはよくなかったなと反省しました。
怪異のような事件が、推理によって解決されるものが多くて好みだった。意外と厳密な論理で推理するというような感じではなくて、捜査しててたまたま重要な証言や手がかりを得られるみたいな運要素とか閃きが強くてご都合主義っぽいけど、ホームズもわりとそんなだし、時代的にそういうものなのかもしれない。

「トワイライト・ミュージアム」
初野晴の中でもかなり好き。初野作品の特徴として、ファンタジー要素、知識による推理、弱者への優しい目線、の三つがあると思っているんですが、そのどれもがバランスよく入ってる感じ。
魔女狩りも確かに、弱者が虐げられるもので、題材に選ばれたのはだからなんだろうなぁ。
推理というかほぼ知識の披露なのだけれども、それを専門知識のある博物館学芸員たちが話し合っているという形式にしていることで、そこに対する不満はあまりなくなって、むしろ知識で殴るのかっこいい、って思った。

「螢」
普通に新本格、普通に面白い。
ずっと噂に聞いていた逆叙述というのはこれか。でも逆である必要ある?

「この闇と光」
どんでん返しを強調する売り方には納得できないけど、この作品自体は好き。
どんでん返しっていうのは、Aだと思ってたものがひとつの文章やシーンでBに反転するものだと考えるので、前提となるAが曖昧だと、ただ不思議な状況が解決されるだけになってしまうと思うんです。結末についても、衝撃の結末とかそういう風なものではないと思った。
でも前半の美しいものに囲まれた世界を読んでいるのはとても幸せでした。余韻や描写を味わうものだと思うの。

「文豪ストレイドッグス外伝 綾辻行人VS京極夏彦」
辻村深月うらやましい。自分のずっと好きな作家の助手ポジションとか。すごくキャラクタもかわいらしいし。私としては辻村深月の偽兄姉さんたちが出てきてくれたら非常に満足なのですが。
思ったよりミステリだったけど、前半の推理がしょぼい知識ネタで……。最後の方のあれは、展開も含めておもしろかったです。っていうか皆ホームズ好きだね。
「憑き物落とし」には爆笑したし、それぞれのキャラ元になった作家の作品ネタも全部は拾えてないだろうけど楽しかった。雑誌記者の鳥某は鳥口だろうし、左手の薬指が欠けた久保が匣の中で死ぬのとか、逃がし屋が南極なのぐらいかな。ぱっと分かったのは。

「火星の人」
科学知識難しいけど、ログの文体がネット口語体的でおもしろい。立場を異にする人たちが共通の目的の為に最善を尽くして協力し合うのっていいよね。NASA以外で協力してくれるのが中国航天局なのは、数十年前のSFならソ連だっただろうし、今ってそういう時代なんだなって思った。
映画も見に行ったけど、映画の方が危機は少なそうだったな。原作では途中、次から次に襲い来る危機に飽きてきてしまうけど。

「メアリー・スーを殺して」
乙一は中学生のころに大好きだった。おもしろかったけど、あの頃好きだったほどの鋭さがなくなっていて、寂しいとも思う。
中田永一作品が二つとも好きでした。表題作は中高生の頃読んでたら間違いなくはまっていたと思う。あと山羊座と、人体楽器の話も好き。人体楽器ってなんとなく皆川博子なイメージなんですが実際書いてて読んだことあるのかは不明。
山白朝子はもっと黒乙一的なグロい作風の人なのかと思ってたので、優しい話だったのが意外でした。

「雨の日は神様と相撲を」
グローバル化に直面して、ローカルにしか生きられない神様たちはどのように生き残っていくのか、という話がとてもおもしろかった。そこメインでシリーズを展開していってくれたら私好みだけど、そうはならないんだろうな。
随所にちりばめられた神話の話がとても好きです。
でも殺人事件いらなくない?いくら刑事と元刑事でも、中学生の子供がいる家で捜査の話するのは倫理的にどうなの、って思ってしまう。

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2016/03/07 (Mon) 日々の徒然 CM(0)

もっと別の場所で何気ない場面で もし会えていたならどうだったろう?

こんにちは。睦月です。あけましておめでとうございます。
もう年に1回でも更新すればいいかなと若干開き直っています。

昨年は引っ越したり、今までと生活環境変わったり、いろいろとあったような気がしつつ、でも結局日々を過ごすので精一杯かなって感じでした。
あと甘いものをたくさん食べられて幸せでした。
今年が仕事とかどうなるかまったくわからなくて不安でしょうがないけれども、楽しく過ごしていければいいなと思います。

さて、昨年読んだ本について。
冊数でいうと99冊でした。100冊目が読み終わらなくて若干悔しい。でも2月3月とほとんど読んでないわりには頑張ったかなと思う。

特に印象に残ったものについていくつか感想を。
・デルフィニア戦記
すごくはまって一気に読んだ。代名詞の使い方とか、ときどき趣味に合わなかった文体もあったけど。登場人物皆かっこいいしかわいいし、やっぱりこういうファンタジー少女小説好きだなぁ。

・ファンドーリンの事件簿
帝政ロシアが舞台のミステリのシリーズ。4冊が日本語に翻訳されてるんだけど、1巻ごとに違った趣向が凝らしてあっておもしろい。
リヴァイアサン号が一番好き。豪華客船上の密室、各国の人々が集まってる感じと、登場人物それぞれの一人称視点や日記や手紙で話が進んでいく構成がよかった。
アキレス将軍は一番最初に読んだのだけれども、アザゼルやトルコ捨駒の登場人物が出てきてたのもあって、シリーズ順の方が楽しめたのかなとも思う。アキマスに感情移入して読んだのでなんとなく切ない。
アザゼルは若いファンドーリンがかわいいし、トルコ捨駒は「進歩的な乙女」ワーリャちゃんがかわいい。主人公のファンドーリンが賭け事には絶対勝つイケメンとかキャラが立ってるから、キャラ読みも楽しい。

・『星空を願った狼の』
待望の!薬屋新刊!!
ここに感想書いたつもりだったけど、書いてなかったんですね……。
この本がという以上に待ち望んでいた薬屋探偵の新刊なんで、やっぱり好きだなぁということしかもうない。読んだ直後は感想もいろいろとあったけれども細かいところ置いておいて一言でいうと、
秋さんかわいい。
歌リベ!……歌リベ!!
って感じですかね。
言波もはやくでてきてほしい。

・『1/2の騎士』
今まで読んだ初野晴作品で一番好きだし、一番ミステリ的なことと作者の主張(弱者への目線)がうまく結びついているんじゃないかと思う。他の作品でも表現されているエッセンスがすべて詰まっているんじゃないかなと思いました。弱者への目線と、ファンタジックなミステリと、軽妙な掛け合い。ハルチカにくらべて、主人公が捜査をする動機がちゃんとあることが良かったと思う。
ハルチカアニメは不安でしかないけれども一応見る。そしてこれは違うってわめくんだ。

・ベッキーさんシリーズ
北村薫は『空飛ぶ馬』だけ読んで、そこまでじゃないかなって思っちゃってたのですがこれはすごく好きです。戦前の女学生の世界がすごく素敵。当時の最新流行の文化が紹介されているのも楽しい。聖地巡礼ではないですが、銀座に行って和光の時計塔と教文館ビルを見てきました。
そして、あそこで終わってしまうのがとても切ない。その後を願わずにはいられない感じ。

・『新世界』
おもしろかったというか、ひたすらにすごかった。
ミステリというよりもメッセージ性が強いものなのだけれども、エンタメの見た目してるくせにそこがすごく重い。怖かった。読んでいろいろ考えてしまった。

・『残穢』
これも怖かった。
虚妄と言って理性的に否定すればするほど、否定しきれないものがあるのが怖い。
一人称の語り手が小野さん自身っぽいし、じゃあ夫はどう考えても綾辻さんだよなあとかにやにやしたあとに、でも小野さんって実際具合悪かったらしいという話思い出してぞっとする感じ。平山夢明とかも実名で出てるし、現実に侵食してくるというか。そういうの計算して、うまくつくられているんだろうとも思うんだけど。

・『王とサーカス』
米澤穂信はここまでの描写が書けたのか、と驚いた。読んでる間、ネパールにいたように思えたぐらいだった。タイトルにもなっている「王とサーカス」そこで突きつけられた問いと、答えた覚悟もすごく好き。他の人が書いているのに、自分が書く意味とは、という風に変換すれば、作者自身の問題にも、自分のものとしても考えられて。
『真実の10メートル手前』でもその覚悟があって仕事をしている姿勢が見えるのは良かった。でも短編集だし、地味だし、だったら満願とか儚い羊の方が好みの作品はあったなあって感じてしまう。
あとサイン会に行ってサインいただいてきました。思ったより緊張してうまく話せなくて、実は私は米澤穂信好きだったのかもしれない。作品は雑誌連載やウェブ時代のものはともかく、本になっているものはほとんど読んでるんだけど。

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2016/01/05 (Tue) 日々の徒然 CM(0)

伸ばした手で触れる事は誰もできない

先日、名探偵コナンのリアル脱出ゲーム「オリエント急行からの脱出」に参加してきました。私は脱出ゲーム初めてだったのですが、無事脱出成功しました。詳しいことはネタバレになるので書けませんが、同じ時間に18組参加してたうちで、脱出成功したのが私たちのところだけで、それもわりと先読みしまくって時間が余ってだったので、え、そんなもんなの?っていうのを思いました。でも楽しかったです。解けたから余計に。
来月くらいから新しいコナンコラボのやつが始まるらしく、それはキッドが出てくるらしいのでそっちにも行ってみたい。今回のでも予告が流れて、勝平さんの声が聞こえた瞬間テンションが上がりました。
今回のはオリエント急行要素特になかった(列車ならなんでもよかった)し、コナンである必要性もストーリー付けだけっぽくて、その点は微妙だったのですが、奇術城はキッド要素たくさんあるといいなあ。今年は映画もキッドだし。最近の映画にそんなに期待はしないけど、楽しみです。

まじ快アニメもちょくちょく見てます。
ノリがやっぱりまじ快で、コナンとは違うのはもちろんそうなんだけど、絵柄がだいぶ違っていて連続してみるとおもしろいなと思う。まじ快に出てくるコナンはショタ度が数割増しになってるような気がします。
あと、快斗視点からコナン原作の話やるのも楽しい。コナンを警戒して計画立ててるのとか、とても萌えます。予告で快コかけあいやってたのもかわいかった。「犯人はお前だ!」「そーだよオレだよ!あたりめーだろ」みたいなやつ
アニメやってる間か、映画くらいの時期に5巻出してほしいなと思うけど現時点でアナウンスないからまだ当分先なんだろうな。両親の出逢いの話とかアニメでやってくれてたので、マンガでも読みたいのですが。コナンもそうだけど、親世代と同じようなことを子世代もやってるというシチュエーションとても好きです。コナンでいうと25,26巻くらいでしたっけ?プロポーズ中に飛びだしていって事件解決したっていう伝説。エレベーターでバーンってやる話。とか、瞳の中の暗殺者で、小五郎のプロポーズの台詞を言うコナンとか。

ところで最近、私の好きなBLについて考えてました。
私の好きなというより、BLが何故好きか、どこが好きか、みたいな話です。
結論から言うと、私は関係性に萌えるのであって、萌える関係性を描いてくれていたら性別はそんなに関係ない。……実際はそんなに百合を好みはしないのですが、それはBL/NLでも、地雷じゃないけど好きじゃないCP見るときと同じレベルでの好き嫌いだと思う。私は好きじゃないけど、こういうのに萌える人もいるんだろうな、そういう人はこういうシーンとかが良いんだろうな、私は好きじゃないけど。みたいな感じ。
それから、性的描写は関係性を描く上でのガジェット・小道具として好きなだけで、えろいものを好んでは摂取しない。
だから、私はBL好きというよりも、ブロマンスが好きなのかなというのに思い至りました。
萌える関係性は、強い執着で、それは恋愛感情じゃなくてライバルとしてとか、家族とか仲間とか友情とかそういうのでいいんです。というか原作はそこまででお願いしたい。そこから先はこっち(妄想)でやる。
先日、友人と話していて私はなんで二次創作をしていたのかということを考えたことがありました。私はまず恋愛というのは何かしらの好意があるときにどこかの瞬間でスイッチが切り替わり、恋愛感情を自覚をすることによって成立するのだと考えています。どんなに仲が良くても、極論を言えばたとえ肉体関係があっても、恋愛ではないと双方が考えているならそれは恋愛ではないと思う。性欲と恋愛感情の違いとか言い始めるとややこしいのでここでは割愛します。
だから私は二次創作では好きな関係性を築いている(築きうる)キャラたちがどのようにスイッチが切り替わり、恋愛感情を自覚するかを書きたい。書きたかった。たぶんそんな感じで書いてた、はず。
だから、原作では恋愛じゃなくていいから、強い執着だったり関係性だったりを丁寧に描いてほしい。
そう思っているので、関係性や契機が特に説明されずいちゃいちゃしている人たちを見てもたぶん萌えないんです。

そういうわけで私は艦これアニメの百合描写が好きではありません。
ゲームの方に手を出していないのもあって、キャラクター性というかどういう人なのかも分からないし、キャラクター同士の関係性が全く見えないのに、恋愛要素だけがあるので、とても気持ち悪く思ってしまいます。吹雪周りは1話からきちんと描いているのでまだ分かるけれども。
その恋愛要素というのも、憧れとか仲間とか、他の名前がつきそうなものも恋愛的な表現として描いている感じがするのも違和感の一部かも。あと恋愛的な表現の描き方が性的なものに結びつきがちというか、百合要素は「男性が見て楽しむもの」でしかない感じとか。作ってる会社があれなのである程度はしょうがないけれども、消費される百合はあまり好きではないなと思います。女の子が好きなのでもなく、キャラクターが好きなのでもなく、単に性的刺激がほしいだけじゃないの?と思ってしまう。
とにかく、経過が見えない気がするというのが、私があのアニメを見ていて一番不快に思うところなのかもしれません。原作はやっていないので分からないのですが、艦娘のキャラ設定はたぶん原作にある程度依拠しているはず(同人設定拾っているという噂も聞きますが、二次創作での設定も、どんなに薄くても原作に根拠はあるのではないだろうか)なのに、文脈がないのでよく分からない。よく分からないなりに納得できるところとできないところがあって、性格設定ならまだしも、関係性設定は説明がないと全く魅力が伝わらない。それが伝わらなくても問題はないのかもしれませんが、上澄みだけだととても薄い作品になるよね、と思うのです。
公式がアニメは二次創作ということを言ったという話もちらっと見たような気もするのですが、それ知らない視聴者も多いし、そもそも個人製作の二次創作と巨額の資金かけてプロが作って公共の電波にのるアニメでは、クオリティもその享受者の数も全く違うものになるんだから、二次創作ですは通用しないと思うんだけど。初心者に売る気がないのってどうなのとも思うんだけど。でも私が楽しめないから僻んでいるだけかもしれないです。


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つづきはこちら

気を取り直していつものように。最近読んだ本。
「最後の晩ごはん 小説家と冷やし中華」
芦屋に行きたい。ラーメンとアイスキャンデーを食べたいです。
相変わらずいい話。筋も想像できるし、読んでて大きなカタルシスとかはないんだけど、その分安心して読める。こういう小説があるのも良いなと思います。
このシリーズのキャラクターは決して好きなタイプではないし、椹野先生の作品で他に好きな話もキャラクターもいるんだけど、それでも読んでいて楽しい。主人公や視点人物が喜べば私も嬉しいし、辛い境遇にあれば悲しい。人間/キャラクターでいえば、キャラクターでしかないのだけれども、キャラクター小説で育ってきた私にとっては共感して読めるので、ちょっとした故郷感があります。
関西とか怪異とかお料理とかブロマンス?とかミステリ?とか、椹野先生らしさがちょっとずつ入ってるのが、なんていうかお弁当感と言いますか、ちょっとずつおいしいもの楽しめるよみたいな感じで、好きです。法医学要素はないけど。それぞれがっつりいきたかったら別の作品読むし。お試しみたいな感じでもよさそう。
これ単体で好きなわけじゃないけど、これまで私が触れてきた好きな要素が垣間見えたり思い出したりするから読んでいて落ち着くんだろうなと思う。
今回で海里と淡海先生の問題がある程度解決して、次巻で夏神さんの話していったん区切り、なのかな。執事も三巻でひとくぎりだったし。

「オズワルド叔父さん」
ダールの、これだけ長い話を初めて読んだかもしれない。でもやっぱり中編~短編の方がおもしろいな、と思う。これも結局短編の組み合わせっぽい構成ですし。
「来訪者」「ビッチ」の続きというか前日譚というかで、若き日を回想しているオズワルド叔父さんの日記を主人公がまたしても出版という体裁なんだけど、その体裁に意味はあるのだろうか。実話らしさ?実在した人がたくさん出てくるし。名誉棄損とか大丈夫なのかしら。
回想や、その合間に挟まれるちょっとした小話なんかは、ホラ男爵の話を読んでいるようでおもしろかったけど、中盤から後半あたりは同じような話の繰り返しで、もっと削って中編とかにした方がおもしろいんじゃないかと思った。ビートルの話とかは「ビッチ」と微妙にネタ被ってるし。
あと相変わらず閨房の描写がおもしろくていいですね。ああいう比喩は好きです。
オチには笑いました。今までのはなんだったの、という。

「電気人間の虞」
電気人間という怪異、都市伝説があって、「語ると現れ、人を殺す」という都市伝説の通りに人が死んでいく。そこで殺人か事故か、犯人は電気人間かそれとも生身の人間か、という捜査が行われ、推理がされて怪異が解体される。そして一応は合理的解決がなされたものの、実は電気人間が実在し、その犯行が明かされる。
そういう枠組みは面白いと思うし、私の好みでもあるはずなんだけど、どうにも素直に好きとはいえない作品でした。
なんでだろうと考えて、とりあえず理由が二つ。一つ目は、思春期的中二病的心情描写がうざい。とにかくうざい。これを受け止めきれないのは年齢のせいなのかなと少ししんみりもしたけど、読んでて楽しめなかったのは事実。キャラクターに好感抱けないばかりか、共感もできなかった。
そのせいでか、電気人間という怪異はおそろしいものには思えず、全体的にどこか滑稽な感じが漂ってた。
二つ目は(ネタバレかもなので反転)
合理的解決が明らかに納得できないものであったこと。私は推理小説読むときも基本的には自分では推理しないんだけど、それでも明らかにそれは違うだろうと思う推理はあって。それってでも論理とかもだけどそれ以上に推理が展開されているときの雰囲気や演出が影響してるんだよね。で、この作品では推理シーンが全く解決シーンではなさそうな雰囲気で書かれていたので、明らかにもう一段階ひっくり返るだろうというのがあって。その段階では怪異の実在か実は意外なあの人が犯人とかまでは確かではなかったけど、これで終わりじゃないというのだけは思っていた。その状態から実は電気人間実在しました!といわれても、だろうねとしか思えないので、驚きが少ない。
一度合理的解決で締めてからひっくり返す方が綺麗だし、驚きも大きいと思う。
でもメイントリックがすごいし、そのための小説、そのための電気人間の設定であると同時に、物語のための電気人間、トリックでもある感じがしたのはとても好感が持てました。
社会学や民俗学の話とかも、語り口はともかく、わりと頷ける感じでしたし、読んでて楽しかった。
あと最後の一文が、何これって感じで好きです。とても気になる。

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2015/02/13 (Fri) 日々の徒然 CM(0)

真実携えて闘う事を罪と言うの?

ブログ更新を目的にするのなら、何かあったから書くんじゃなくて、無理にでも週一とか日を決めて書くっていうふうにすればいいんだなと今更気づきました。

そういえば私、今日で22歳になりました。
正直、まだ子供だと思う。子供でいたいとも思う(その表れがロリィタ趣味なんだろう)けど、大人にならないといけないんだろうなと思ってつらい。
最近まじ快アニメやってるけど、「大人っぽい」紅子ちゃんとかだってまだ高校生なんだよなって改めて思いました。いや、まだ高校生なのだからこそ大人になりたがってるのがかわいいんだよね。そもそも新一だって高2だし、「頭脳は大人」であっても精神的には年相応なところもあるんだけど。
今春で卒業する予定なんだけど来年度の見通しとか全然立ってないし、責任とか負いたくないなあって思います。モラトリアムに浸っていたい。

ところで。ホビットの映画3部をようやく見にいってきました。
原作は読んでいたんだけど、知らない映画でした……。
最初の方でドラゴンが殺されるのはまあいい。原作でもわりとあっさりだったし。かっこいいのか分からない謎演出だったけど。で、五軍の戦いがメインになるんだろうなってのもまあ事前に予想はついてた。指輪物語との繋がりをアピールしてくるのも分かるし、だからレゴラスかっこいいから出てきたんだろうし興業的に恋愛要素いるのも分かるよ。理由は分かるんだけど全体的に、なんでそうなるの?みたいなツッコミいれたくなるところが多くて。あと、キーリとトーリン以外のドワーフがほとんど描かれなくて残念だった。せめて一人一か所くらいずつ見せ場いれてくれると思ってたよ。レゴラス無双すぎ。
最後の方はわりと『ホビット』っぽさがあった気がした。「お茶は四時」って台詞だったり、帰ってみたら家が競売にかけられていたり。指輪物語での、メリーとピピンが廃墟となったアイゼンガルドでパイプ草ふかしてるあたりもそうなんだけど、どんな場所にいても日常があることがすごくいい。ホビットって「このよでいちばん すきなのは おりょうりすること たべること」みたいな感じの人たちだなって思う。ご飯大事。

読んだ本。
『ふたりの証拠』
悪童日記の続編。なんだけど、悪童日記読んだのわりと前だったのであまり記憶になかった。
本当に二人いるのかが怪しくなってきて、ぞくっとさせられる。そもそもクラウス(リュカ?)の存在だけじゃなくて、語られていたこと自体が全て虚構だったかもしれないってなって、いきなり突き落とされた感じ。しかもこれもう一作あるんですよね。一体どう展開していくんだろう。
全体的に耽美な感じで好きでした。ペテールとの関係とか。出てくる人みんな病んでるというか狂ってるというか。耽美と狂気は紙一重なのかな。ただ、文章自体は簡潔で現在形多用して耽美な雰囲気作り出すというよりは淡々としてる感じ。

『連城三紀彦レジェンド』
連城さんには興味はあったんですが、それ以上に綾辻・伊坂対談に惹かれて読みました。
対談はすごく読んでて楽しかったです。小野さんが連城作品書き写してたみたいな話を綾辻さんがしてて、とても納得した。東亰異聞のあの感じとかそうなんだろうなって。というか綾辻さんが小野さんの話してるのはにやにやしますね。
ほかにもいい話がたくさんあって、私は綾辻さんと伊坂さんが好きなので(作品も、たぶん本人も)読んでて楽しかったです。伊坂さんが連城作品の販促した話とかね。伊坂さんが勧めてる話は読んでみたい。ラッシュライフの元になったという作品とか。
編者の中で綾辻さんや米澤穂信が連城三紀彦好きなんだろうなというのは作品からなんとなく分かるんだけど、伊坂が連城を好きというのは、あまり作品から感じなくて不思議だった。――という話を人にして言われた話がなるほどと思った。曰く、連城作品で伏線となる部分が情緒的なものとして印象に残っていて、ミステリ的にも伏線となるっていうのが魅力らしいんだけど、伊坂作品の場合は情緒というよりも掛け合いの妙とかで伏線の印象作ってるのが連城の影響なんじゃないかって。
収録作に関して。どれも普通に読んでて面白いけど、どうしてここまで評価高いのかは分からない。ただ、私は『桔梗の宿』と『親愛なるエス君へ』は読むのが二度目か三度目だったんだけど、それでも楽しく読めたのはこういうネタの話としてはすごいのかなとは思った。私の記憶力が低くて細かいところ覚えてなかったから楽しめただけかもしれないけど。基本的に読んでるときに雰囲気に酔える+サプライズがあるのが好きです。だから『花衣の客』とかは好きだった。
ただ「人間が書けている」あまりにキャラクターではなさすぎて、全体的にモブっぽいのとか、作品のために人や世界がある感じがあまり好きではない部分でした。

『誰も猫には気づかない』
ニフィすごい。飼いたい。
話の構造自体はとても単純で、公国の若い領主がいて、隣国には邪悪なお妃様がいて、公国併合を狙ってきているからそれを倒そうとする話。権謀術数とかもなく敵陣営が明確だし、やってることも超強力な毒とか使ってはいるけれども基本的には暗殺だから分かりやすい。とても童話っぽい。ただそこに、若い領主の摂政として猫が存在するだけでとてもおもしろくなる。やっぱり童話っぽいので児童書としてよさそう。
猫が摂政なんだけど人語を喋らないし、仕草とかを人間側が読んでる感じとかがリアルで、距離感がいいなと思った。それでいて猫はずっと主役でいる感じとか、最後の倒し方とか。
その猫の行動と、あと国の歴史・立地とか食文化とかが明らかにヨーロッパっぽいことから、国自体は架空だけど地球上の話として展開するのかなと思えばバーグアスとかいう謎の怪物が出てくるし、中世のはずなのに登場人物たちが紅茶飲んでるし、この世界はどういう設定?って疑問に思った。バーグアスのところは熊や猪や狼で一向に問題なかったと思うし。ファンタジーで時代考証は気にならないこともあるんだけど。異世界なら異世界ではっきり示してほしい。個人的にはこの話は実際にあったかもしれないよっていうスタンスで読みたかった。

『ママは何でも知っている』
読んでる最中はさらっと読めるし不快感もなく楽しいけど、特に思うところがなく流れていく感じ。安楽椅子探偵ものの肝である、論理で読者も解けることとかに私が重きを置いてないからかもしれませんが。あと流れがテンプレになってしまってるのとかも、仕方ないけど飽きてくる。
そもそもこれ、安楽椅子探偵だけど、どっちかっていうとマープルみたいな、人間性で解いてくものという印象を受けた。「私の知り合いにこういう人がいるんだけどね、」っていう推理。その「私の知り合いに~」の部分が長くなって二つ分の事件になったっていう構成をとってるのが最後の短編で、その構成がすごく良かった。
デイビイは現代ではマザコンエネ夫とか言われるのかなって思って読んでました。毎週母親と食事とか、ママとシャーリイの間に火花散ったときの仲裁とか、そもそもママに相談して仕事を成し遂げるってどうなのとかいろいろと気になったです。まあ価値観の違う世界だからそういう話しても意味ないんだろうけど。
ところで私、何故かこれを読むまではブロンクスのママシリーズっていうのを聞いてバーとかのママをイメージしてました。お店系安楽椅子探偵ものがいろいろあるからそういうイメージができたのかな。

『天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク』PART1、PART2
ⅦからⅠまでの話と、Ⅰの後の話。
イサリ視点でのメニーメニーシープがおもしろかったです。そんなことがあったんだ、というのと、イサリの過去の話を知って読むからこそイサリがとてもかわいい。それこそまだ17歳なんだよなあ。300年以上生きていても。でも、まさかカドムとちゃんとくっつくとは思わなかったよ……。いや、いいんだけどね。結ばれなかった二人の子孫同士が恋愛する話とかシチュエーションとしてわりと好きですし。イサリとアインというよりは、千茅と児玉先生の話。でもプラクティスの記録からは児玉先生の話は消えてたんだなというのと、逆にセアキ家では残ってたのかというのに感慨を覚えた。プラクティスの始祖言行録?はたぶんジョプが編んだのだろうから仕方ないのだろうとも思うけど。
イサリやミヒルを漢字で書くとああなるのか、と思いました。漢字は表意文字だよなあとも改めて思った。カタカナのときとはイメージが変わる。
ミヒルはミスチフやノルルスカインとは関係なく、あんな風になってしまったんでいいんだよね。ミヒル自身が何故フェロシアンにならないんだろう。この状態で皇帝は眠れないだろうし、あんな性格ならすぐに我を忘れてフェロシアンになりそうなものなのに。だからミスチフに乗っ取られたなら怒りとかの感情はなくなるから大丈夫なのかなというのも思ったんだけれども。疫病を蔓延させるのもミスチフがいつもやってることというか、そもそも冥王斑をもたらしたのがミスチフだし。でもそう考えるとMHD社長がミスチフだったのが少し気にかかるから、やっぱりそこの思惑とは別に動いてるのだろうと帰結したんだけど。
となるとあとⅨとⅩでプラクティスとの戦いとミスチフ関連の話をそれぞれやるのかな。
オムニフロラの生存戦略やイサリが共存したいって言ってる辺り絡めて、何かしらの答えを出すんだろうとは思ってる。ここになると謎が新たに出てくるというよりも全体がどう動いていくかっていうのが気になってく感じですね。ⅡからⅤまでが大きい物語も気になりつつ、それぞれの話もおもしろかったけれども、もう全体の物語だけって感じで。いろいろ細かいところとかは覚えてなくてこれ誰ってなったりしたんだけど。読む前にⅠ再読するべきだった気がしました。
なんとなく、人類は生き残るんだろうなって思えるので、たとえ絶望的状況であっても読むのはそんなにつらくないです。
しかしアクリラはどうなるんだろう。
ただの少年になったユレイン(三世)がかわいいです。

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2015/01/20 (Tue) 日々の徒然 CM(0)

夜空を籠める雲は鬼が神屠る兆し

どうも、こんにちは。お久しぶりです。光陰矢のごとしという言葉を感じます。
やっと、卒論が終わった!
去年は就活と卒論とサークル関係の原稿とで思ったより時間がとれませんでした。
毎年言っている気がするけど、今年こそもう少しブログを更新していきたい。三度目の正直とか二度あることは三度あるとか三日坊主とかいう言葉が頭をよぎります。……うん。頑張る。

とりあえず、去年4月以降で読んだ本を一回まとめておこうと思います。と言っても、どこまで書いたかすら覚えていない……。
ちなみに去年読んだ本は合計73冊でした。
これも毎年言っている気がするけど、今年こそたくさん本を読んでいきたい。

「9マイルは遠すぎる」
表題作、有名だけれども思っていたほどおもしろくなかった。
形式が魅力なのだと思うのだけれども、米澤穂信とか、同じ形式のものを先に読んでしまっていると……。それでも最初にこういうのを考えて書いたのはすごいと思うんだけれども。論理だけで攻めていく話はあまり私にはおもしろさが分からないので。しかも、私の頭が悪いからかその論理にも飛躍というか恣意的な限定とかがあるように思えたし。
他の短編の方が、安楽椅子探偵的な、そこに目をつけて推理するんだ!っておもしろさはあったと思います。指紋べたべたの脅迫状の話(「わらの男」だっけ?)とか、時計をたくさん持ってる男の話(タイトル忘れた……)とか湯沸し器から推理(同前)とか、おもしろかったです。

「東亰異聞」
こういう話が書きたかった!
合理と非合理、妖怪と現実の事件の関わりのバランスがとてもうまいなと思いました。加えて、明治の雰囲気がとても素敵なのと、出てくる人たちが切ない。
ただラストの東京沈没みたいなのはここまでやっちゃうと微妙かもと思った。

「薔薇のマリア21 I love you.[rouge]」
終ってしまったのが、とにかく切ない。でもハッピーエンド(?)でよかった。これで終わり?感もあって、この後の話を読みたい。
結局、あの世界が何なのかとかは明言されてはなくて、でも想像しうる範囲は分かった。
ZOOはそうでもないけど、ランチタイムとか秩序の番人とか、死んでく人が多いのが切なかった。しかも死ぬ直前に回想シーン入れるとか、死亡フラグだしあざといけど切なさ倍増みたいな。

「七回死んだ男」
プロットだけで読みたかった。設定はおもしろいのに、人間がすごく気持ち悪い。出来の悪いドラマの登場人物みたいで、ト書きを読んでるだけっぽいし、どのキャラも全部裏にゲスなおっさんがいる感じがして気持ち悪い。
でも、設定は本当におもしろかったんですよ。一日を七回ループできる能力をもった主人公が、祖父の死を食い止めようとする話で、その試行錯誤が読んでいてわくわくする。
で、なんとかうまくいったあとにひとつ謎が残って、それも最後には解かれるっていうのも、最後まで飽きさせないみたいな。
ただ本当にキャラクターが気持ち悪くて気持ち悪くて(エンドレス)つらかった。
ドラマとかだったら逆に楽しめたかもしれない。

「黒祠の島」
閉鎖的な島で独自に発展した宗教があって、って雰囲気が横溝っぽくて好き。
あとこの信仰のシステムとか興味深かったです。一気に読んでしまった。
情報の出し方とか限定の仕方とかがすごく、ああこの人も新本格作家のいた頃の京大ミス研出身なんだなあって思ったんだけど、でもそういうミステリ的な手続きが雰囲気崩さないのがすごい。
こういう風に変わった宗教をただ雰囲気作りとかだけじゃなくってそれを利用した事件が起こったりとか、推理によって現実の事件だけじゃなくて宗教自体が解体されていったりとか、そういうのとても好きです。
でも東亰異聞の方が雰囲気とか妖怪とか好きだったかなあ。

「厭魅の如き憑くもの」
記述方法自体が手がかりであること(これも叙述トリックっていうのかな?)はおもしろかった。けど、この村の習俗がすごく人工的というか民俗学的にありえなさそうで興醒めだった。
ネーミングとかさあ。カガチっていったら蛇じゃん。みたいにすぐ分かるし、主人公が民俗学者なら知ってて当然の知識だろうに、中盤まで出てこないしもったいぶって情報提示してていらっとした。
犯人も、たぶんこういうことなんだろうなあって思ってたらそのままで。もうひとひねりほしかった。
民俗学系ミステリ好きなんだけど、それは「もしかしたら日本のどこか(の地域・時代)にはこんな信仰があるのかもしれない」と思えるのが好きなのであって、この小説のためトリックのために生みだされたとすぐわかるのは別に楽しくない。その点京極夏彦はすごいなと思う。
あと、ホラーをあまり読んでいないので分からないけど、そんなに怖いとは感じなかったかな。

「首無の如き祟るもの」
厭魅よりはマシだけど、やっぱり人工的な感じが気になった。

「凶鳥の如き忌むもの」
三作読んだ中ではこれが一番おもしろかった。
宗教儀式は完全に創作なんだろうけど、だから逆に割り切れる感じになってきた。あと、捜索だからこそこっちは何も知らないので、分かりきったことをもったいぶってる感も少なくていらいらしなかった。ただ名づけが相変わらず安直すぎるだろうとは思ったけど。
あと、条件羅列は推理じゃないよねってのとかも好きじゃない。
でも人肉食好きなので、主体は違うけどメインネタがそれってだけで許せる。

「ファントム 上・下」
おそわれるのとか普通に怖いし、あまり知らないけどホラー映画っぽい。
最後が、結局そうなるのかよみたいなところはあったけど。
あれがキリスト教的「悪魔」っていうのとかは微妙。

「シンデレラの罠」
語り手が、探偵で被害者で犯人で証人っていう設定はとてもおもしろいと思う。
登場人物の愛憎や意図が絡まりあう感じとか、好きではないけど昼ドラ的で愉しい。
結局彼女はどっちで、犯人は誰だったんだろうってのは謎だけど、たぶんそこはメインではないし穿って見ることまで意図されてないんじゃないかなって思った。
これってオープンエンドではあるけど、別にリドルストーリーではないよね。私のイメージ的にはリドルストーリーは伏線や印象で読者の自分としてはたぶんこっちなんだろう(こっちであってほしい)と推測できるというか、答えがひとつに定まりうる(ただしそれが答えだとは限らない)話かなって思ってる。オープンエンドは、いろんな可能性が並列して存在するのかなって。もしかしたら逆かもしれない。

「盲目的な恋と友情」
初期辻村作品の高校生たちが30代になったらこじらせてる女の子になった、という話。だから20~30代の女の子を書いているのに初期辻村的な自意識の痛々しさは健在でとても好き。
あと個人的に「友情」の方の語り手にとても感情移入してしまってつらかった。「選ばれなかった」コンプレックスは私にもあるから。遊んでそうな女の子が嫌いだったり、自分の好きなものの価値を知らないくせに簡単に手に入れてしまう子に敵意もったり、相手にとっての自分の価値を過大評価してたり、本筋じゃないところにこだわったり。そういうところがすごく滑稽だけど、笑えないくらいには分かってしまうものだった。彼女から見えるものと、親友と思っている蘭から見える世界は全然違って、でも互いにそう見てしまう理由が読者の自分には分かってしまってつらい。
ミステリ部分は完全に蛇足だよなとも思いつつ、まあ辻村さんは綾辻さん好きだししょうがないよねとも思う。

「妖魔の森の家」
これも、「9マイル~」と同じく、有名だから読んでみたけど期待しすぎていたからか表題作は微妙という印象……。怪奇趣味?も、味付け程度だったし。火刑法廷が好きすぎて、比べてしまう。
最後のオチがやりたかったのかなと思うし、そこはぞわっとして楽しかったです。
ただ、短編集の中の他のの方がおもしろかったと思う。特に「軽率だった夜盗」が好き。何故わざわざ絵を盗まれやすくしてるのかみたいな謎がおもしろいのと、叙述というかミスディレクションがうまいなと思いました。あと、性格を推理に使うみたいなのとか。
あと「第三の銃弾」の謎が魅力的だった。

「時の娘」
イギリス史は高校で軽く習った程度なので、あまり覚えて無くてそこで分かりにくく感じてしまった。リチャードとエドワード多すぎ、とか。
典型的な悪役イメージとか、物語的な歴史解釈を実証によって通説を覆すというのを物語でやっているのがすごくおもしろいなと思いました。ただイギリス史わからないので何とも言えないけど、それこそが歴史学のやり方だよねとは思うので、たぶんだけど学会ではすでにそういう説でてるんじゃないかとは思う。別にストーリーがおもしろかったわけではないから歴史ミステリって難しいなとも思う。
あと、これを日本でやりたくて書いた『成吉思汗の秘密』が形式(入院中ベッドで推理・助手が史料収集)は真似ているのに、やってることは真逆に物語的な歴史解釈してるのが興味深いけど好きじゃないなって思いました。

「菅原道真」
卒論のために読みました。人物叢書のやつ。ちなみに卒論テーマは菅原道真怨霊と天神信仰でした。
道真さまの性格というかキャラクターがなんていうか著者側と読んでいる自分や世間である程度共有されているのかな、と思った。頭はいいんだけど人付き合い苦手で、真面目一辺倒みたいで、頭良いから周囲の人にも同じレベルを求めて軋轢作る、みたいな。
いつか道真さまの話を書きたい。
そういえば、『応天の門』というマンガを読んだのですが、それに出てくる道真さまと業平さまはわりとイメージ通りで、考証とかもしっかりしててすごいおもしろかったです。ミステリ的な要素もあって。
あ、他にも論文とか文献とか読んでるけど、1冊通読をあまりしていないのでここでは書かないです。

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
あらすじから想像する話と全然違って、もっと深かった。1冊の中で世界を構築して、破壊して、それでも、というところまで書いていて。その、それでも、というのが人間性なんだろうし、この本のテーマなのだろうと思った。SFを超えて文学だなあと思う。うまく言えないけど。
人間が人間である理由は、他の存在と分けるのはどこにあるんだろう。

「戦闘妖精・雪風〈改〉」
アンドロイド~に続けてこれを読んで、とても怖く思った。
人間が不要とされたら、機械の方が勝ってしまったら、どうしたらいいの?という不安。
人間がこの星の支配者だと当然に思っているけれども、外から見たら違うかもしれないという恐怖。そういえば星新一の短編に猫の話ありましたね。
ジャムが人間を真似しているのに食べ物はまずかったりとかそういうところがとても怖いと思った。
それでも、人間は勝てるという期待をしたいから続きを読みたい。

「緋色の囁き」
綾辻先生こういうの好きだよね、という話。でもこの文章では綾辻さんが好きなのだろう雰囲気には酔えないよね。
あと全然違うのに、舞台立てとかのせいで読んでいて「Jの神話」思い出してしまって不快感。
女子集団の集団ヒステリーは怖い。
推理してから犯人逮捕ではなく、物理的に犯人を捕獲してから推理があるのが意外だった。

「半導体探偵マキナの未定義な冒険」
マキナはもちろん、クリクもオーガスタスもイーディもかわいい。作者の浮世離れしてるところが、人間っぽいのにどこかずれている探偵ロボットという設定とうまくかみ合っているのだと思う。特に、コーヒーブレイクという言葉の説明のところとかがすごくそれっぽくて好きだった。
彼らが協力して事件を解決する話を読みたい。

「ドリームバスター」
キャラクターの書き方や感性が少し古い感じがして気になった。書かれた時期を考えたら当然なんだけど。
中学生や高校生のときに読んでいたら、はまっていたかもしれないとは思う。

「All You Need Is Kill」
すごくおもしろかった。
最後が、え、そうなるのって感じで切なかった。
リタの描写や主人公の感情や、出てくる女の子たちがラノベっぽくてちょっとおもしろくなった。

映画も見たんですけど、おもしろかったけど、別物だった。
欧米人の「世界」がいかに狭いかが感じられて興味深かったけど。いろいろ言ってるけど、侵略されてるのドイツから始まってフランスとか、ヨーロッパの一部だけじゃんって。対異星人で、ノルマンディー上陸作戦やりたかっただけでしょ、って。だからイギリスアメリカロシア中国が共同で戦ってたんだろうし、ドイツにオメガがいる?みたいな話になったんでしょう。
それなのにコーヒーとか原作のアイテムをちょこっと入れてきていて、世界観がおかしなことになっている。
右も左もわからない新人をいきなり戦地に送ったって無駄死になだけじゃんとか、何故あの装備は頭を守らないんだとか、そもそも戦略とかあるの?勝つ気あるの?みたいな点もいくつかあったのと、リタがしょっぱなから死んでいて、強くもかっこよくもかわいくもなかったのが気になりました。あと軍隊で同じ部隊に女が一人混じってるのはおかしいだろうと思うんだけど。アメリカだといろんな人種性別いれないといけないらしいから仕方ないのかねえ。もっと設定とか作りようあったと思った。
ストーリーは別に……ループ設定うまく使っててハリウッドですね、って感じ。

「うちの執事の言うことには」2、3
2巻のときは赤目さんは何がしたいんだろうって思ってたんだけど、3巻で過去と動機明かされて、とても萌えました。赤目さんと花頴が仲良くなれたらいいよね。と思う。
あと庭師の桐山さんが好きです。クロスオーバーで花花に行ったりしないかしらと思ったり。
もっとシリーズ続いてくれたらいいな。

「奇想、天を動かす」
作中作がとにかく好き。狂人ぽさがあって。(褒め言葉)
白い巨人とか、幻想的で魅力的な謎がとてもおもしろかった。推理小説だと得てしてそういう幻想的な謎は、物理で解かれて魅力が消えてしまうのがいつも残念なんだけど、これは謎が現実になって魅力を失ったら代わりに社会派的な主張が物語を牽引していったからよかった。
ただ、その社会派的な主張、問題意識があるせいで読後感が少しもやもやした。その主張の妥当性は置いといて。
事件が解決されても、探偵や犯人含めて誰も幸せにならないし、その主張の部分を現実世界でどうにかしようとしても、作中の彼らが救われるわけでもないし。そう考えてしまって、社会の問題を小説で提起する意味ってなんだろうとか思った。
この謎やトリック、テーマを考えついて、書こうとすること、書けていることがとにかくすごいのだろうと思った。

「私たちが星座を盗んだ理由」
期待しすぎたからか、そこまでは楽しみきれなかった。
「終の童話」と表題作あたりはわりと好きだった。
北山猛邦のファンタジー的な世界観が好きなのだけれども、推理小説の要素、ロジックやトリックがその世界観を壊してしまっている感じがしていて、もったいないといつも思ってる。「終の童話」はファンタジーとミステリのバランスがわりとうまくいっていたので好きです。「妖精の学校」は、大人のいない閉じた楽園、鳥の名前の少年少女たち、という世界観はとても好きだったし、その世界自体に謎があるという話も好き。なんだけど、謎が作中で解かれきれなくて、読者が調べないと分からないのが不満。作中で完結させてほしかった。
他の作品はオチがなんとなく想像できてしまって、文章もそれだけで好きなものでもないし、「続きを読みたい」よりも「結果を知りたい」がモチベーションだったので途中を読むのがもどかしかった。あと、登場人物の人称や言葉遣いに違和感が。

「ダークホルムの闇の君」
魔法世界が資本主義に搾取される話。その設定自体興味深い。オレンジやコーヒーがこの世界から魔法世界に輸入されたものだったりとかもおもしろいなと思った。
こっちの世界から観光客が魔法世界に来てRPG風の冒険?観光ツアーをしてるけど魔法世界にとってはそれは負担で……。という話で、これは風刺もあるのかなとも思った。固定されたイメージを相手に求める感じ。
闇の君になった魔術師夫妻と一男一女五グリフィンの家族のドタバタと家族愛が良い。グリフィンもふもふしたい。ウロコかっこいい。読んでる間とにかく楽しいし、最後は大団円だし、いい読書体験だった。
あと、ガラドリエルという名前のドワーフが出てきて、「親は何を考えて名前を付けたんだ」みたいな描写がされていて、これはもしや中つ国と繋がった世界?とわくわくした。

「斜め屋敷の犯罪」
みんなが言うおもしろいトリックというのはこれか、と。自分自身がそれをおもしろいと思えたかは分からないけど、すごいとは思った。一人を殺すために館を建てた犯人の執念に思いを馳せたり、トリックを動画で見たらおもしろそうとかは思ったんだけど、自分のそういう感想を推理小説のトリックおもしろいという言葉に翻訳していいかは分からない。なんとなく違う気もするので。
斜め屋敷は住みたくはないけど、探検したい。からくり人形とかいいよね。
ただメイントリックがあり得ないとかよりも、とても気になるところがあって。
北海道の最北端で、12月下旬で、大きな氷柱ができるくらいの気候での積雪ってそんなもんじゃないよね。メートル単位だと思う。花壇の模様が見えたり、外を普通に歩けたりしないと思うんだけど。あの足跡トリックもだから無理じゃないかな。そもそも屋根壁のない外付けの廊下でしか行き来できない館建てるの馬鹿だろうと思う。渡り廊下にも積もって、下手すれば重みで落ちると思うんだけど。でも北海道でも海の近くはそんなに雪積もらないのかもしれないし、逆に寒すぎてしみわたりできるのかも。

「名探偵の掟」
正直に言って、好きじゃないです。
そもそもメタな話が嫌い。その上、これを楽しめるほど推理小説が好きでも興味なくもなくって、好きなものがdisられてる感じで不快。虚無への供物とか麻耶作品みたいに物語仕立てでミステリ風刺してくれたらまだいいんだけど、話自体がミステリでもないし他のおもしろさもない。読むのがしんどすぎて、最後の方はBL妄想したら少し楽しくなった。
見立て殺人の話とか、このネタで小説書いたらおもしろくなりそうなのに。

「怪談」
小泉八雲の階段を柳広司が現代ミステリにアレンジしたもの。
話自体はまあオチも想像できるし、怪談っていうほど怖いものでもなかったんだけど、アレンジがそれぞれ秀逸だなと思う。特に、「耳なし芳一」の主人公がヴィジュアル系バンドボーカルの琵琶器芳一で、代表曲がHEIKEなのは笑いなしには読めない。陰陽座みたいなのをイメージした。
鏡と鐘とか、オリジナルをしらない話もあったので小泉八雲版もちゃんと読みたい。

「わたしが幽霊だった時」
体言止めが多い文体が鼻について、そこまで楽しんでは読めなかった。少女っぽさの演出なのかもしれないけれども。
自分が誰か分からない不安感がよかった。でも話としては、何が起きてたのか分かってから過去に干渉して助けようとする展開が楽しかった。あの魔女はいったいなんだったんだろう。

「ウルチモ・トルッコ」
おもしろかった。
読者が犯人という設定と、そのために丁寧に張られた伏線がよかった。ページ数指定してまでのメタ的な伏線解説は蛇足に感じたけど、それ以外の内容の取捨選択は最終的にはわりとトリックと結びついていて感動した。ただその分途中まで話の軸が見えなくて、話が散漫でつらかったけど。
あとこれ、別に読者が犯人じゃないよね。「読者」のメタレベルの問題ではなくて。実際に読まれたかどうかは関係ないんじゃないかと思ってしまう。そう思わせないためにずっと超能力の話をやってきていたのだろうけれども。

「なぜなら雨が降ったから」
雨女探偵という設定はおもしろかったけど、話自体はそこまででもなかったかな。

「春にして君を離れ」
読んでてつらかった。自分がこの主人公みたいに見られているんじゃないかって。それでも自己肯定感を持っていられる主人公は幸せなんだろうと思う。
ミステリじゃないけど、世界が変わって見える感じがすごくよかった。

「クローバー・リーフをもう一杯」
最初の何編かを読んでいくと、森見登美彦とか万城目学とか、そういう系の京都大学生青春ものっぽい。で、そういうのとかもわりと好きなので(ミステリ成分の薄さとかはこの際かまわない)いいんだけど、最後2編で片思いの相手の女の子どこに行った?って感じになって、それがとても違和感。主人公の謎解きをするモチベーションが女の子に振り向いてほしいからってのがおもしろかったのに。
円居先生はミステリと恋愛・キャラ小説を両立させうる作家だと信じてるので、もしミステリ成分増すためには恋愛成分書けないとか思われてるなら残念だなと思うわけです。
この本のなかでは、2話目かな。脇役カップルが成立する話が好きです。
でてくるカクテル飲んでみたい。

「駄作」
展開が読めなくてとてもおもしろかった。
一番「えっ」ってなったのは脱獄シーンが一行ですまされてたところと、最後のオチですね。
結局、何が真相だったんだろう。
プフェファコーンの親友に対する感情とか、文学を目指しているワナビ感が、痛いのと分かるのとでうわぁーってなった。

「奇談蒐集家」
全体的にありがちな話という印象。
奇談だけでよかったかな。謎解きは蛇足な感じ。幻想的で魅力的な謎を推理で解体・解決する物語形式は、好きでもあり、あまり納得の行くかたちで成功しているものが少ないから残念なものでもあるんだけど、そういうのかと思ったらそこまででもなくて。よくある話をなぞってるだけっぽい気がしてしまう。
強いていえば「冬薔薇の館」が好き。
最終話が語り手含め意外ではあったけど、結局、あの二人の目的も存在もよく分からなかったのが不満。

「闇に香る嘘」
盲目の主人公が見る世界がリアルに描写されていて、すごい。それが正しいのか私には判断できないけれども、リアルに感じさせられた。盲目の世界もだし、あと満州での生活の部分とかも、異文化への目線や距離感が梓崎優みたいに感じた。
読み進めていくにつれて謎が膨らんでいって、兄が兄なのか、誰が妨害してるのか、誰の言うことが正しく何が嘘なのか、それが一点に収束して解決されるのがうまい。最終的にハッピーエンドで、本当に良かったと思えた。

「最後の晩ごはん ふるさととだし巻き卵」
おいしそう。茄子のフライが食べたくなる。
なんか設定が少しにゃんこ亭っぽいかなと思った。
主人公もこみちだよねとか、メガネ何あれとか、いろいろと気にはなるけど軽く読んでいける。
冤罪の話が苦手なので、いつか濡れ衣を晴らしてほしいと思う。

「ジークフリードの剣」
浮気男は死ねという感想。読んでてつらかった。主人公がクズすぎて。ストーリーも、別に展開が気になるとか事件が起こるとかでもないし。いや、事件は起こってたんだけど。試みは興味深いけど好きじゃない。いっそ、ミステリ要素ない方がよかったと思うくらい謎解きが浮いてる。物語展開も謎解きも、ただただ彼女がかわいそうすぎる。
ウルチモ・トルッコの伏線回収が丁寧で好きだったから、期待しすぎた分がっかりした。
読書会でこの小説自体がオペラの再現みたいな話を聞いて、なるほどそう読めば楽しいんだろうなと思った。けれども私はこの作品が好きじゃない。
そのうえ、比喩の部分が昭和のおっさんっぽくて物語と合ってなかったのもとても気になった。

「未来探偵アドのネジれた事件簿 パラドクスイリ」
おもしろかった。
タイムパラドクスというか因果というか、宝石が増えるのとか原理も説明もよく分からないんだけどなんか騙くらかされてしまう感じ。最後に、モブというか背景が全部自分たちだったみたいなことになるのがとても好き。
ロミ→アドの感情が恋愛感情っぽく思えて、森川さんもそういうの書くのかと少し意外だった。ただ邪推かもしれない。

「葉桜の季節に君を想うということ」
タイトルが素敵だなと思う。いい恋愛小説でした。
読んでいる最中はわりとおもしろかったのと、読後感が爽やかだった。
ただ解決編で、えってなって話についていけない間に推理がされていっているのが驚きどころがどこか分からなくなった。もうちょっと見得をきるみたいなところがほしい。
叙述ということは知っていたのだけれども、別にミステリ的な部分とも関係ないし、テーマとは関係あるけどそれだったらもっとうまい方法あるよねと思う。この真相に反感もつのは、自分の中に差別感情があるのかもしれないと思ってしまう。けど補遺は無粋。

「人間の顔は食べづらい」
設定がSFっぽくて好み。ルーガルー思い出した。
ただ思うのは、食肉産業はカニバリズムではない。カニバリズムはグルメ的な描写とか、もしくは背徳感恍惚感とかそういうのが美しい。これ読んでても食べたいとは思わないし。
クローン人間で、生首と首なし死体があってだと、まあ入れ替わりかなってある程度予想つくけど、予想していた以上にうまくそれを見せている感じ。ただ、登場人物の行動原理がわりと謎だった。三島由紀夫みたいな名前の探偵役っぽい人もあっけなく死んでたし。
ラストが青春ミステリっぽくて好き。

「来訪者」
艶笑譚4つ。ダールらしいブラックユーモアが愉しい。ブラックなんだけど、嫌な感じではなくて何とも言い難い感じで、これこそ奇妙な味かなって。
表題作は差別意識が興味深かった。あと雌犬後半の描写が変愛小説集にこんなのあったなって感じでおもしろかった。間二つはおもしろいけど、感情移入して少し切なかった。
オズワルド叔父さんの長編も読みたい。

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2015/01/13 (Tue) 日々の徒然 CM(0)