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妖怪と神話とミステリと甘いものが好き。腐った話とか平気でします。ネタバレに配慮できません。

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2024/05/03 (Fri)

夜空を籠める雲は鬼が神屠る兆し

どうも、こんにちは。お久しぶりです。光陰矢のごとしという言葉を感じます。
やっと、卒論が終わった!
去年は就活と卒論とサークル関係の原稿とで思ったより時間がとれませんでした。
毎年言っている気がするけど、今年こそもう少しブログを更新していきたい。三度目の正直とか二度あることは三度あるとか三日坊主とかいう言葉が頭をよぎります。……うん。頑張る。

とりあえず、去年4月以降で読んだ本を一回まとめておこうと思います。と言っても、どこまで書いたかすら覚えていない……。
ちなみに去年読んだ本は合計73冊でした。
これも毎年言っている気がするけど、今年こそたくさん本を読んでいきたい。

「9マイルは遠すぎる」
表題作、有名だけれども思っていたほどおもしろくなかった。
形式が魅力なのだと思うのだけれども、米澤穂信とか、同じ形式のものを先に読んでしまっていると……。それでも最初にこういうのを考えて書いたのはすごいと思うんだけれども。論理だけで攻めていく話はあまり私にはおもしろさが分からないので。しかも、私の頭が悪いからかその論理にも飛躍というか恣意的な限定とかがあるように思えたし。
他の短編の方が、安楽椅子探偵的な、そこに目をつけて推理するんだ!っておもしろさはあったと思います。指紋べたべたの脅迫状の話(「わらの男」だっけ?)とか、時計をたくさん持ってる男の話(タイトル忘れた……)とか湯沸し器から推理(同前)とか、おもしろかったです。

「東亰異聞」
こういう話が書きたかった!
合理と非合理、妖怪と現実の事件の関わりのバランスがとてもうまいなと思いました。加えて、明治の雰囲気がとても素敵なのと、出てくる人たちが切ない。
ただラストの東京沈没みたいなのはここまでやっちゃうと微妙かもと思った。

「薔薇のマリア21 I love you.[rouge]」
終ってしまったのが、とにかく切ない。でもハッピーエンド(?)でよかった。これで終わり?感もあって、この後の話を読みたい。
結局、あの世界が何なのかとかは明言されてはなくて、でも想像しうる範囲は分かった。
ZOOはそうでもないけど、ランチタイムとか秩序の番人とか、死んでく人が多いのが切なかった。しかも死ぬ直前に回想シーン入れるとか、死亡フラグだしあざといけど切なさ倍増みたいな。

「七回死んだ男」
プロットだけで読みたかった。設定はおもしろいのに、人間がすごく気持ち悪い。出来の悪いドラマの登場人物みたいで、ト書きを読んでるだけっぽいし、どのキャラも全部裏にゲスなおっさんがいる感じがして気持ち悪い。
でも、設定は本当におもしろかったんですよ。一日を七回ループできる能力をもった主人公が、祖父の死を食い止めようとする話で、その試行錯誤が読んでいてわくわくする。
で、なんとかうまくいったあとにひとつ謎が残って、それも最後には解かれるっていうのも、最後まで飽きさせないみたいな。
ただ本当にキャラクターが気持ち悪くて気持ち悪くて(エンドレス)つらかった。
ドラマとかだったら逆に楽しめたかもしれない。

「黒祠の島」
閉鎖的な島で独自に発展した宗教があって、って雰囲気が横溝っぽくて好き。
あとこの信仰のシステムとか興味深かったです。一気に読んでしまった。
情報の出し方とか限定の仕方とかがすごく、ああこの人も新本格作家のいた頃の京大ミス研出身なんだなあって思ったんだけど、でもそういうミステリ的な手続きが雰囲気崩さないのがすごい。
こういう風に変わった宗教をただ雰囲気作りとかだけじゃなくってそれを利用した事件が起こったりとか、推理によって現実の事件だけじゃなくて宗教自体が解体されていったりとか、そういうのとても好きです。
でも東亰異聞の方が雰囲気とか妖怪とか好きだったかなあ。

「厭魅の如き憑くもの」
記述方法自体が手がかりであること(これも叙述トリックっていうのかな?)はおもしろかった。けど、この村の習俗がすごく人工的というか民俗学的にありえなさそうで興醒めだった。
ネーミングとかさあ。カガチっていったら蛇じゃん。みたいにすぐ分かるし、主人公が民俗学者なら知ってて当然の知識だろうに、中盤まで出てこないしもったいぶって情報提示してていらっとした。
犯人も、たぶんこういうことなんだろうなあって思ってたらそのままで。もうひとひねりほしかった。
民俗学系ミステリ好きなんだけど、それは「もしかしたら日本のどこか(の地域・時代)にはこんな信仰があるのかもしれない」と思えるのが好きなのであって、この小説のためトリックのために生みだされたとすぐわかるのは別に楽しくない。その点京極夏彦はすごいなと思う。
あと、ホラーをあまり読んでいないので分からないけど、そんなに怖いとは感じなかったかな。

「首無の如き祟るもの」
厭魅よりはマシだけど、やっぱり人工的な感じが気になった。

「凶鳥の如き忌むもの」
三作読んだ中ではこれが一番おもしろかった。
宗教儀式は完全に創作なんだろうけど、だから逆に割り切れる感じになってきた。あと、捜索だからこそこっちは何も知らないので、分かりきったことをもったいぶってる感も少なくていらいらしなかった。ただ名づけが相変わらず安直すぎるだろうとは思ったけど。
あと、条件羅列は推理じゃないよねってのとかも好きじゃない。
でも人肉食好きなので、主体は違うけどメインネタがそれってだけで許せる。

「ファントム 上・下」
おそわれるのとか普通に怖いし、あまり知らないけどホラー映画っぽい。
最後が、結局そうなるのかよみたいなところはあったけど。
あれがキリスト教的「悪魔」っていうのとかは微妙。

「シンデレラの罠」
語り手が、探偵で被害者で犯人で証人っていう設定はとてもおもしろいと思う。
登場人物の愛憎や意図が絡まりあう感じとか、好きではないけど昼ドラ的で愉しい。
結局彼女はどっちで、犯人は誰だったんだろうってのは謎だけど、たぶんそこはメインではないし穿って見ることまで意図されてないんじゃないかなって思った。
これってオープンエンドではあるけど、別にリドルストーリーではないよね。私のイメージ的にはリドルストーリーは伏線や印象で読者の自分としてはたぶんこっちなんだろう(こっちであってほしい)と推測できるというか、答えがひとつに定まりうる(ただしそれが答えだとは限らない)話かなって思ってる。オープンエンドは、いろんな可能性が並列して存在するのかなって。もしかしたら逆かもしれない。

「盲目的な恋と友情」
初期辻村作品の高校生たちが30代になったらこじらせてる女の子になった、という話。だから20~30代の女の子を書いているのに初期辻村的な自意識の痛々しさは健在でとても好き。
あと個人的に「友情」の方の語り手にとても感情移入してしまってつらかった。「選ばれなかった」コンプレックスは私にもあるから。遊んでそうな女の子が嫌いだったり、自分の好きなものの価値を知らないくせに簡単に手に入れてしまう子に敵意もったり、相手にとっての自分の価値を過大評価してたり、本筋じゃないところにこだわったり。そういうところがすごく滑稽だけど、笑えないくらいには分かってしまうものだった。彼女から見えるものと、親友と思っている蘭から見える世界は全然違って、でも互いにそう見てしまう理由が読者の自分には分かってしまってつらい。
ミステリ部分は完全に蛇足だよなとも思いつつ、まあ辻村さんは綾辻さん好きだししょうがないよねとも思う。

「妖魔の森の家」
これも、「9マイル~」と同じく、有名だから読んでみたけど期待しすぎていたからか表題作は微妙という印象……。怪奇趣味?も、味付け程度だったし。火刑法廷が好きすぎて、比べてしまう。
最後のオチがやりたかったのかなと思うし、そこはぞわっとして楽しかったです。
ただ、短編集の中の他のの方がおもしろかったと思う。特に「軽率だった夜盗」が好き。何故わざわざ絵を盗まれやすくしてるのかみたいな謎がおもしろいのと、叙述というかミスディレクションがうまいなと思いました。あと、性格を推理に使うみたいなのとか。
あと「第三の銃弾」の謎が魅力的だった。

「時の娘」
イギリス史は高校で軽く習った程度なので、あまり覚えて無くてそこで分かりにくく感じてしまった。リチャードとエドワード多すぎ、とか。
典型的な悪役イメージとか、物語的な歴史解釈を実証によって通説を覆すというのを物語でやっているのがすごくおもしろいなと思いました。ただイギリス史わからないので何とも言えないけど、それこそが歴史学のやり方だよねとは思うので、たぶんだけど学会ではすでにそういう説でてるんじゃないかとは思う。別にストーリーがおもしろかったわけではないから歴史ミステリって難しいなとも思う。
あと、これを日本でやりたくて書いた『成吉思汗の秘密』が形式(入院中ベッドで推理・助手が史料収集)は真似ているのに、やってることは真逆に物語的な歴史解釈してるのが興味深いけど好きじゃないなって思いました。

「菅原道真」
卒論のために読みました。人物叢書のやつ。ちなみに卒論テーマは菅原道真怨霊と天神信仰でした。
道真さまの性格というかキャラクターがなんていうか著者側と読んでいる自分や世間である程度共有されているのかな、と思った。頭はいいんだけど人付き合い苦手で、真面目一辺倒みたいで、頭良いから周囲の人にも同じレベルを求めて軋轢作る、みたいな。
いつか道真さまの話を書きたい。
そういえば、『応天の門』というマンガを読んだのですが、それに出てくる道真さまと業平さまはわりとイメージ通りで、考証とかもしっかりしててすごいおもしろかったです。ミステリ的な要素もあって。
あ、他にも論文とか文献とか読んでるけど、1冊通読をあまりしていないのでここでは書かないです。

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
あらすじから想像する話と全然違って、もっと深かった。1冊の中で世界を構築して、破壊して、それでも、というところまで書いていて。その、それでも、というのが人間性なんだろうし、この本のテーマなのだろうと思った。SFを超えて文学だなあと思う。うまく言えないけど。
人間が人間である理由は、他の存在と分けるのはどこにあるんだろう。

「戦闘妖精・雪風〈改〉」
アンドロイド~に続けてこれを読んで、とても怖く思った。
人間が不要とされたら、機械の方が勝ってしまったら、どうしたらいいの?という不安。
人間がこの星の支配者だと当然に思っているけれども、外から見たら違うかもしれないという恐怖。そういえば星新一の短編に猫の話ありましたね。
ジャムが人間を真似しているのに食べ物はまずかったりとかそういうところがとても怖いと思った。
それでも、人間は勝てるという期待をしたいから続きを読みたい。

「緋色の囁き」
綾辻先生こういうの好きだよね、という話。でもこの文章では綾辻さんが好きなのだろう雰囲気には酔えないよね。
あと全然違うのに、舞台立てとかのせいで読んでいて「Jの神話」思い出してしまって不快感。
女子集団の集団ヒステリーは怖い。
推理してから犯人逮捕ではなく、物理的に犯人を捕獲してから推理があるのが意外だった。

「半導体探偵マキナの未定義な冒険」
マキナはもちろん、クリクもオーガスタスもイーディもかわいい。作者の浮世離れしてるところが、人間っぽいのにどこかずれている探偵ロボットという設定とうまくかみ合っているのだと思う。特に、コーヒーブレイクという言葉の説明のところとかがすごくそれっぽくて好きだった。
彼らが協力して事件を解決する話を読みたい。

「ドリームバスター」
キャラクターの書き方や感性が少し古い感じがして気になった。書かれた時期を考えたら当然なんだけど。
中学生や高校生のときに読んでいたら、はまっていたかもしれないとは思う。

「All You Need Is Kill」
すごくおもしろかった。
最後が、え、そうなるのって感じで切なかった。
リタの描写や主人公の感情や、出てくる女の子たちがラノベっぽくてちょっとおもしろくなった。

映画も見たんですけど、おもしろかったけど、別物だった。
欧米人の「世界」がいかに狭いかが感じられて興味深かったけど。いろいろ言ってるけど、侵略されてるのドイツから始まってフランスとか、ヨーロッパの一部だけじゃんって。対異星人で、ノルマンディー上陸作戦やりたかっただけでしょ、って。だからイギリスアメリカロシア中国が共同で戦ってたんだろうし、ドイツにオメガがいる?みたいな話になったんでしょう。
それなのにコーヒーとか原作のアイテムをちょこっと入れてきていて、世界観がおかしなことになっている。
右も左もわからない新人をいきなり戦地に送ったって無駄死になだけじゃんとか、何故あの装備は頭を守らないんだとか、そもそも戦略とかあるの?勝つ気あるの?みたいな点もいくつかあったのと、リタがしょっぱなから死んでいて、強くもかっこよくもかわいくもなかったのが気になりました。あと軍隊で同じ部隊に女が一人混じってるのはおかしいだろうと思うんだけど。アメリカだといろんな人種性別いれないといけないらしいから仕方ないのかねえ。もっと設定とか作りようあったと思った。
ストーリーは別に……ループ設定うまく使っててハリウッドですね、って感じ。

「うちの執事の言うことには」2、3
2巻のときは赤目さんは何がしたいんだろうって思ってたんだけど、3巻で過去と動機明かされて、とても萌えました。赤目さんと花頴が仲良くなれたらいいよね。と思う。
あと庭師の桐山さんが好きです。クロスオーバーで花花に行ったりしないかしらと思ったり。
もっとシリーズ続いてくれたらいいな。

「奇想、天を動かす」
作中作がとにかく好き。狂人ぽさがあって。(褒め言葉)
白い巨人とか、幻想的で魅力的な謎がとてもおもしろかった。推理小説だと得てしてそういう幻想的な謎は、物理で解かれて魅力が消えてしまうのがいつも残念なんだけど、これは謎が現実になって魅力を失ったら代わりに社会派的な主張が物語を牽引していったからよかった。
ただ、その社会派的な主張、問題意識があるせいで読後感が少しもやもやした。その主張の妥当性は置いといて。
事件が解決されても、探偵や犯人含めて誰も幸せにならないし、その主張の部分を現実世界でどうにかしようとしても、作中の彼らが救われるわけでもないし。そう考えてしまって、社会の問題を小説で提起する意味ってなんだろうとか思った。
この謎やトリック、テーマを考えついて、書こうとすること、書けていることがとにかくすごいのだろうと思った。

「私たちが星座を盗んだ理由」
期待しすぎたからか、そこまでは楽しみきれなかった。
「終の童話」と表題作あたりはわりと好きだった。
北山猛邦のファンタジー的な世界観が好きなのだけれども、推理小説の要素、ロジックやトリックがその世界観を壊してしまっている感じがしていて、もったいないといつも思ってる。「終の童話」はファンタジーとミステリのバランスがわりとうまくいっていたので好きです。「妖精の学校」は、大人のいない閉じた楽園、鳥の名前の少年少女たち、という世界観はとても好きだったし、その世界自体に謎があるという話も好き。なんだけど、謎が作中で解かれきれなくて、読者が調べないと分からないのが不満。作中で完結させてほしかった。
他の作品はオチがなんとなく想像できてしまって、文章もそれだけで好きなものでもないし、「続きを読みたい」よりも「結果を知りたい」がモチベーションだったので途中を読むのがもどかしかった。あと、登場人物の人称や言葉遣いに違和感が。

「ダークホルムの闇の君」
魔法世界が資本主義に搾取される話。その設定自体興味深い。オレンジやコーヒーがこの世界から魔法世界に輸入されたものだったりとかもおもしろいなと思った。
こっちの世界から観光客が魔法世界に来てRPG風の冒険?観光ツアーをしてるけど魔法世界にとってはそれは負担で……。という話で、これは風刺もあるのかなとも思った。固定されたイメージを相手に求める感じ。
闇の君になった魔術師夫妻と一男一女五グリフィンの家族のドタバタと家族愛が良い。グリフィンもふもふしたい。ウロコかっこいい。読んでる間とにかく楽しいし、最後は大団円だし、いい読書体験だった。
あと、ガラドリエルという名前のドワーフが出てきて、「親は何を考えて名前を付けたんだ」みたいな描写がされていて、これはもしや中つ国と繋がった世界?とわくわくした。

「斜め屋敷の犯罪」
みんなが言うおもしろいトリックというのはこれか、と。自分自身がそれをおもしろいと思えたかは分からないけど、すごいとは思った。一人を殺すために館を建てた犯人の執念に思いを馳せたり、トリックを動画で見たらおもしろそうとかは思ったんだけど、自分のそういう感想を推理小説のトリックおもしろいという言葉に翻訳していいかは分からない。なんとなく違う気もするので。
斜め屋敷は住みたくはないけど、探検したい。からくり人形とかいいよね。
ただメイントリックがあり得ないとかよりも、とても気になるところがあって。
北海道の最北端で、12月下旬で、大きな氷柱ができるくらいの気候での積雪ってそんなもんじゃないよね。メートル単位だと思う。花壇の模様が見えたり、外を普通に歩けたりしないと思うんだけど。あの足跡トリックもだから無理じゃないかな。そもそも屋根壁のない外付けの廊下でしか行き来できない館建てるの馬鹿だろうと思う。渡り廊下にも積もって、下手すれば重みで落ちると思うんだけど。でも北海道でも海の近くはそんなに雪積もらないのかもしれないし、逆に寒すぎてしみわたりできるのかも。

「名探偵の掟」
正直に言って、好きじゃないです。
そもそもメタな話が嫌い。その上、これを楽しめるほど推理小説が好きでも興味なくもなくって、好きなものがdisられてる感じで不快。虚無への供物とか麻耶作品みたいに物語仕立てでミステリ風刺してくれたらまだいいんだけど、話自体がミステリでもないし他のおもしろさもない。読むのがしんどすぎて、最後の方はBL妄想したら少し楽しくなった。
見立て殺人の話とか、このネタで小説書いたらおもしろくなりそうなのに。

「怪談」
小泉八雲の階段を柳広司が現代ミステリにアレンジしたもの。
話自体はまあオチも想像できるし、怪談っていうほど怖いものでもなかったんだけど、アレンジがそれぞれ秀逸だなと思う。特に、「耳なし芳一」の主人公がヴィジュアル系バンドボーカルの琵琶器芳一で、代表曲がHEIKEなのは笑いなしには読めない。陰陽座みたいなのをイメージした。
鏡と鐘とか、オリジナルをしらない話もあったので小泉八雲版もちゃんと読みたい。

「わたしが幽霊だった時」
体言止めが多い文体が鼻について、そこまで楽しんでは読めなかった。少女っぽさの演出なのかもしれないけれども。
自分が誰か分からない不安感がよかった。でも話としては、何が起きてたのか分かってから過去に干渉して助けようとする展開が楽しかった。あの魔女はいったいなんだったんだろう。

「ウルチモ・トルッコ」
おもしろかった。
読者が犯人という設定と、そのために丁寧に張られた伏線がよかった。ページ数指定してまでのメタ的な伏線解説は蛇足に感じたけど、それ以外の内容の取捨選択は最終的にはわりとトリックと結びついていて感動した。ただその分途中まで話の軸が見えなくて、話が散漫でつらかったけど。
あとこれ、別に読者が犯人じゃないよね。「読者」のメタレベルの問題ではなくて。実際に読まれたかどうかは関係ないんじゃないかと思ってしまう。そう思わせないためにずっと超能力の話をやってきていたのだろうけれども。

「なぜなら雨が降ったから」
雨女探偵という設定はおもしろかったけど、話自体はそこまででもなかったかな。

「春にして君を離れ」
読んでてつらかった。自分がこの主人公みたいに見られているんじゃないかって。それでも自己肯定感を持っていられる主人公は幸せなんだろうと思う。
ミステリじゃないけど、世界が変わって見える感じがすごくよかった。

「クローバー・リーフをもう一杯」
最初の何編かを読んでいくと、森見登美彦とか万城目学とか、そういう系の京都大学生青春ものっぽい。で、そういうのとかもわりと好きなので(ミステリ成分の薄さとかはこの際かまわない)いいんだけど、最後2編で片思いの相手の女の子どこに行った?って感じになって、それがとても違和感。主人公の謎解きをするモチベーションが女の子に振り向いてほしいからってのがおもしろかったのに。
円居先生はミステリと恋愛・キャラ小説を両立させうる作家だと信じてるので、もしミステリ成分増すためには恋愛成分書けないとか思われてるなら残念だなと思うわけです。
この本のなかでは、2話目かな。脇役カップルが成立する話が好きです。
でてくるカクテル飲んでみたい。

「駄作」
展開が読めなくてとてもおもしろかった。
一番「えっ」ってなったのは脱獄シーンが一行ですまされてたところと、最後のオチですね。
結局、何が真相だったんだろう。
プフェファコーンの親友に対する感情とか、文学を目指しているワナビ感が、痛いのと分かるのとでうわぁーってなった。

「奇談蒐集家」
全体的にありがちな話という印象。
奇談だけでよかったかな。謎解きは蛇足な感じ。幻想的で魅力的な謎を推理で解体・解決する物語形式は、好きでもあり、あまり納得の行くかたちで成功しているものが少ないから残念なものでもあるんだけど、そういうのかと思ったらそこまででもなくて。よくある話をなぞってるだけっぽい気がしてしまう。
強いていえば「冬薔薇の館」が好き。
最終話が語り手含め意外ではあったけど、結局、あの二人の目的も存在もよく分からなかったのが不満。

「闇に香る嘘」
盲目の主人公が見る世界がリアルに描写されていて、すごい。それが正しいのか私には判断できないけれども、リアルに感じさせられた。盲目の世界もだし、あと満州での生活の部分とかも、異文化への目線や距離感が梓崎優みたいに感じた。
読み進めていくにつれて謎が膨らんでいって、兄が兄なのか、誰が妨害してるのか、誰の言うことが正しく何が嘘なのか、それが一点に収束して解決されるのがうまい。最終的にハッピーエンドで、本当に良かったと思えた。

「最後の晩ごはん ふるさととだし巻き卵」
おいしそう。茄子のフライが食べたくなる。
なんか設定が少しにゃんこ亭っぽいかなと思った。
主人公もこみちだよねとか、メガネ何あれとか、いろいろと気にはなるけど軽く読んでいける。
冤罪の話が苦手なので、いつか濡れ衣を晴らしてほしいと思う。

「ジークフリードの剣」
浮気男は死ねという感想。読んでてつらかった。主人公がクズすぎて。ストーリーも、別に展開が気になるとか事件が起こるとかでもないし。いや、事件は起こってたんだけど。試みは興味深いけど好きじゃない。いっそ、ミステリ要素ない方がよかったと思うくらい謎解きが浮いてる。物語展開も謎解きも、ただただ彼女がかわいそうすぎる。
ウルチモ・トルッコの伏線回収が丁寧で好きだったから、期待しすぎた分がっかりした。
読書会でこの小説自体がオペラの再現みたいな話を聞いて、なるほどそう読めば楽しいんだろうなと思った。けれども私はこの作品が好きじゃない。
そのうえ、比喩の部分が昭和のおっさんっぽくて物語と合ってなかったのもとても気になった。

「未来探偵アドのネジれた事件簿 パラドクスイリ」
おもしろかった。
タイムパラドクスというか因果というか、宝石が増えるのとか原理も説明もよく分からないんだけどなんか騙くらかされてしまう感じ。最後に、モブというか背景が全部自分たちだったみたいなことになるのがとても好き。
ロミ→アドの感情が恋愛感情っぽく思えて、森川さんもそういうの書くのかと少し意外だった。ただ邪推かもしれない。

「葉桜の季節に君を想うということ」
タイトルが素敵だなと思う。いい恋愛小説でした。
読んでいる最中はわりとおもしろかったのと、読後感が爽やかだった。
ただ解決編で、えってなって話についていけない間に推理がされていっているのが驚きどころがどこか分からなくなった。もうちょっと見得をきるみたいなところがほしい。
叙述ということは知っていたのだけれども、別にミステリ的な部分とも関係ないし、テーマとは関係あるけどそれだったらもっとうまい方法あるよねと思う。この真相に反感もつのは、自分の中に差別感情があるのかもしれないと思ってしまう。けど補遺は無粋。

「人間の顔は食べづらい」
設定がSFっぽくて好み。ルーガルー思い出した。
ただ思うのは、食肉産業はカニバリズムではない。カニバリズムはグルメ的な描写とか、もしくは背徳感恍惚感とかそういうのが美しい。これ読んでても食べたいとは思わないし。
クローン人間で、生首と首なし死体があってだと、まあ入れ替わりかなってある程度予想つくけど、予想していた以上にうまくそれを見せている感じ。ただ、登場人物の行動原理がわりと謎だった。三島由紀夫みたいな名前の探偵役っぽい人もあっけなく死んでたし。
ラストが青春ミステリっぽくて好き。

「来訪者」
艶笑譚4つ。ダールらしいブラックユーモアが愉しい。ブラックなんだけど、嫌な感じではなくて何とも言い難い感じで、これこそ奇妙な味かなって。
表題作は差別意識が興味深かった。あと雌犬後半の描写が変愛小説集にこんなのあったなって感じでおもしろかった。間二つはおもしろいけど、感情移入して少し切なかった。
オズワルド叔父さんの長編も読みたい。

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2015/01/13 (Tue) 日々の徒然 CM(0)
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