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妖怪と神話とミステリと甘いものが好き。腐った話とか平気でします。ネタバレに配慮できません。

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2025/03/16 (Sun)

『Y駅発深夜バス』

青春もの、犯人当てあり、倒叙あり、……とバラエティに富んだ一冊でした。
連作ではない、完全に独立した短編の短編集って最近の作家でだとなんとなく珍しいような気がします。あんまり読んでないだけかもしれない。ぱっと思い出せるのでは『満願』くらいか。

読んでいて楽しかったです。
全体的に、展開が予測できない部分があって「そうくるのか」っていう小さな驚きが楽しい。
逆にテンプレート的なところはそのまま予定調和におさまるので、ストレスがなく楽でもあり。
そこのバランスがわりとちょうどよかったように思います。
奇妙な味っぽさがあったのも、好きなところです。なんとなく不安感のある物語が多かった。


キャラクターが駒のようで、でも駒として割り切れずに微妙に人であろうとしていて、そこの差が少し気になった。
駒として割り切ってしまった方がいっそいいんじゃないか、みたいな。
たとえば2話目に出てくる女子中学生。現実の女子中学生じゃなくて、あくまで「物語に出てくる女子中学生」にリアリティが立脚しているみたいに感じました。あるいは教科書に出てくるような、というのは作者の本業が頭にあるからそう思うだけかもしれません。
教訓的な内容の児童文学に出てくる子供って出来が良すぎてそんな人普通いねえよ、ってなるみたいな。そういう意味で、その属性の人物として書いているのだけれども作者の都合で動いているみたいな。
まぁそういうのは大学のとき犯人当てとかでも時折見たので、ミステリで短編ってなると人までは書ききれないし、でも感情の部分も書きたいし、ってなるとそうなるものなのかもしれません。謎と解決が中心にある小説なら、読者側も属性さえ与えられればそういうものとして認識するので。
でも、おじさんが書いているわりにはそんなに女性が気持ち悪くなかったです。出てくる女けっこう性格悪い人多いなとは思ったけど。ミステリだし。


ではそれぞれの短編の感想。
「Y駅発深夜バス」
これは講談社文庫のアンソロジーで読んだことがあったのですが、やっぱりおもしろい。
運行しているはずのない深夜バスに乗って、奇妙な人々を見て、という幻想的な謎が第二部で合理的に解決される。
私がそういう構造の話が好きというだけの話かもしれませんが。
幻想的な謎が、解き明かされてしまえばたわいもないことばかりなのに、謎が謎である間は幻想的に思えるのが好き。そして、全部がちゃんと解明されるのも安心感がありました。
台詞が情報提示っぽさが強いのは難ではあるけれども、短編だし。
ラスト一行も、これ自体が衝撃的というよりも主人公に与えた衝撃が想像できて良い。

「猫矢来」
女子中学生、里奈はあることからいじめられるようになってしまう。一方ある家では、塀の上に水入りペットボトルを隙間なく並べていた。
みたいな感じでしょうか。あらすじまとめるの難しい。
女子中学生が現実感ないって話は上に書いた通り。先日読んだ「時をかける少女」を思い出しました。
でも爽やかな雰囲気だった。
重めのテーマがあるのも良かったです。
碓井は一応探偵役ってことになるんだろうとは思うんだけど、なんていうかお前何者だよ感がすごかった。恋愛感情も唐突だし(それは主人公も感じていることだからいいけど)、見ただけでその理由を推理できるってすごすぎないかって思ってしまう。

「ミッシング・リング」
タイトル……ダジャレじゃんってくすりときた。
指輪を盗んだ犯人を探す「犯人当て」。
見取り図と〈読者への挑戦〉付きなので、これはぜひ紙とペンを持って取り組んでほしいです。
いや、私は紙とペンは使わなかったんですけど。その結果、ダミー解までしかたどり着けなかったので悔しい。
容疑者も三人だし、本気で解くつもりで読んだら気づけたかなと負け惜しみも込みで言ってみるけど、ぱっと見で解けたところで、ここまででいいやって思ってしまったのも自分だし。
以下ネタバレ
アリバイだけ考えていると罠に陥るのが巧くできてるなと思いました。
節ごとに示されている時刻が、その節のどのタイミングでなのか(一行目の時点なのか)みたいなことが微妙で、そこには少し引っかかった。でも明らかに嘘を吐いている人がいるから、っていうのでダミー犯人が消去できるのは鮮やか。オーソドックスなネタだけど、一読しただけだと読み飛ばしてしまうので有効なんだなと思いました。
登場人物もただでさえ少ないのに前もって半分になってしまうし、せっかくの見取り図も二階部分は謎解きに関係なかったのは残念だった。物語としての厚みと解きやすさとをバランスとった結果こうなったんだろうとは思いましたが。


「九人病」
ひなびた温泉旅館で相部屋になった男。彼は奇妙な話を語り始めた……。
これはとても好き。
ミステリというよりも、怪談とかホラーっぽい感じでした。
オチがすごく好きです。怪奇現象が解決されたあとで、実は……みたいな。
七人みさきみたいですよね、九人病。
祟りよりは幾分か科学的だけれども、だからこそ引っかかるところも多かった。
なぜ九人までしか発病しないのかは結局よく分からないままで、そこもミステリ的に解き明かされたらもっとおもしろかったかな。病状も手足が抜けるって医学的にありうるのか気になる。
あとはなんで毎年こんな辺鄙なところに来てるんだっていう地味な謎も残って、もやもやする。

「特急富士」
ミステリ作家は恋人を殺そうと、アリバイトリックを準備していた。一方、担当編集も、アリバイトリックを用いて殺人を計画していた。
殺人がバッティングするというシチュエーションがとにかくおもしろい。
完全にコメディでした。
偽装工作をなんとか成功させようという奮闘がただ笑える。策を弄したがゆえにより悪い事態に陥るし、どこかで諦めてた方がマシだったんじゃないの。
倒叙ものの犯人ってそれなりに頭がいいような気がしていたんですけど、この短編についてはそんなことはまるでなく。少し先は読めるけど考えが浅い。そして不注意。
そもそも殺人の動機になった件からして、馬鹿だったからじゃないとしか言いようがないですし。馬鹿しか出てこない推理小説はこうなるのかって思いました。
だからこそ刑事が普通に仕事してるだけでめちゃくちゃ有能に見える。
いやしかし、それは確認しておこうよ……って思いました。最後のシーン。

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