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2024/04/27 (Sat)

『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。』

高校生男女4人の物語。
ザ・青春!って感じで、読んでるこっちがむずがゆくなる雰囲気でした。
ファンタジー的なことや非現実的なことは何も起こらない、等身大の高校生の話で、ラノベってこういうのもあるんだと意外に感じました。普段あまり読まないので知らないだけで、意外と王道なのかもしれないですが。
……地に足がついている普通の話に見えて、突如登場するギ=マニュエルはなんだかよく分からないけど。

キーワードは、「環境の奴隷」と誰にでもいろいろ事情はある、かなぁ。
4人それぞれの一人称短編が一つずつ(と、プロローグとエピローグ)あるので、ある人から見た印象は実態とは異なっていたり、事情が知れて見方が変わったりとおもしろい。
何も考えてないような人や順風満帆に見える人が、それでも悩みとかあるしいろいろその人なりに考えてたりするんだっていうのをきちんと書いてたところは、すごく好きです。
悩みのレベルというか、直面している問題は人によって大きかったり小さかったりするけど、だからといって何も悩みがないわけじゃないんだというのが。当たり前のことではあるのに、ときどきそういうことを忘れてしまいがちだから。

「環境の奴隷」という言葉にはすごくどきっとした。
シチュエーションが整っていると、まわりに流されて気持ちが自分の意志ではコントロールできなくなる。というような意味。たとえば「好きでもない映画でも猫が死ぬと涙が出るとか」
きっと誰しもそういうところはあるもので、それを一語で簡潔に表しているから。
その言葉は、(後にならないと分からないけれども)生活環境が悪いなかでそれに押しつぶされないよう流されないようにと生きてきたセリカの口から出てきていたからこそ、映えていたのかもしれない。
そしてわりと4人とも、まわりに流されたり環境に抵抗しようとしていたりする話だったなぁと思いました。


前2作では舞城王太郎のような圧倒的な文章に殴られる感じだったのが今作では文章の密度がそこまで濃くなくて、それがむしろ瑞々しい普通の高校生らしさが強くなっていた気がします。
あと、視点人物が違えば語られる情報の取捨選択や言葉選びが違うのは当然なんだけれども、その切り替えが自然で、その点はおにぎりとひとくいのときから好きな部分だったので、今回の形式でより鮮明になっていたのが良かった。


前にも言ったかもしれませんが、私にとってこの作家さんの本を読むときの感覚って、辻村深月が好きだったときの感覚と少し似ている気がするんです。
作品自体が似ているというよりは、登場人物の立場や考え方に自分を投影しやすい。その上で登場人物に共感していくので、心情描写や警句が心に刺さる。
そういう意味では、この作品の舞台立てはとても良かった。良かったというのは、自分自身を重ねやすかった。地方の自称進学校。何もない田舎で都会に憧れる感覚。田舎を、何もないと言ってしまう感覚。
辻村深月も初期は地方の進学校が舞台だったから、っていうのもあったのかもしれませんが。
自分語りになるけど、私が高校卒業まで住んでいたところも地方で、香衣の住んでいるところよりは発展しているけど通学できる範囲にパルコやスタバなんてなかった(今はスタバはできたらしい)
だから香衣の感覚がなんとなく自分のものとして理解しやすかったんです。

セリカはもうちょっとどろどろした子なのかなと思っていたけれども、家庭環境が複雑なだけで別に普通の女の子でしたね。ちょっとがっかり。
頭が良いと思っていても所詮高校生なりの視野の狭さがあっただけみたいな。
一歩引いて客観的に俯瞰しているようで何も見えてなかったみたいなカタストロフィがほしかった。
とはいえ4話目のラストシーンはもう最高でした。最後2ページのあの文章、雰囲気。
それにしても、おばあちゃんはフェードアウトしてそのままなの?母親が蒸発した時点で連絡取ったりとかしなかったの?と地味に気になる。

1話目での香衣のセリカに対する理想化がすごいのが、4話目で実態が描かれることによってゆがみが明らかになるんだけれども、女子の友情ってこういうところあるよねって感じでとても良かった。
4話目を経てのエピローグでは互いに等身大そのままを見ていて、それはそれで関係性として安定してよかったねと思うのですが。

龍輝くんのお父さんが地味にいいキャラで、ちょっと気になりました。

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