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2024/04/25 (Thu)

『銀河の通信所』

長野まゆみ、また最近宮沢賢治の話をいくつか書いてますよね。
一周まわって戻ってきたのだろうか。

故人とやり取りできる銀河の通信システムを用い、宮沢賢治と賢治を知る人にインタビューをした、という設定の本。
そういう設定を書くには小説という媒体を選ぶしかない(ノンフィクションという体でやるとなんとかの霊言みたいになるし、書いてあることが事実と思われるのは長野まゆみの意に反するだろう)けど、どうにも小説っぽくない印象だった。
賢治を知る人たちのインタビューは、それぞれの人の賢治さんとの思い出を語るのかと思いきや、自分の専門分野から見た、宮沢賢治が生きて作品を書いていた当時の事情だったり、賢治が触れたであろう知識についてだったり。
宮沢賢治の作品は科学技術が大きく進歩した二十世紀初頭に書かれた話だということを読者の頭に入れさせて、それをもとに作品解釈をしてみたり。
その当時の科学技術だとかの説明がわりと事実っぽく書かれているので、読んでいてどうにも小説ではない一般書っぽさを感じました。
そのため読んでて知らない単語が出るたびにスマホで検索をして、言及された絵画を見てみたり、ほのめかしを探ってみたり……という読み方をしていたので、読み通すのにかなり時間がかかりました。

私は宮沢賢治は小学生の頃にいくつか童話読んだくらいでそんなに読んでないので、その点ではあまり興味をもてなかったです。あと個人的に近代文学にコンプレックスがあるので。
でも大学のときにおもしろいと思った文学の授業を思い出しました。たとえば羅生門とかを読んで、芥川龍之介が資料にした本は記述はこれだろうというのを示したりする講義で、文学研究って作品内容の読み解きとか作家の個人史くらいだろうと思っていた1回生当時の私にとってすごく衝撃的だったんですよね。
書いたことや書こうとしたことではなくて、どのように書いたかを考えるのもあるのかって。
この本もそんな感じでしたが、研究でも授業でもないので「本当に賢治がそれを知っていたか」は分からないよね、と思ってしまったところもありますが。

この本で賢治について語る「賢治を知る人たち」の一覧は以下の通り。
元岩根橋発電所技師 ガルバノスキー氏
元イーハトーヴ博物局技官 レオーノ・キュースト氏
革トランクの斉藤平太さん
保線工夫 メゴーグスカ氏
イーハトーヴの郷土史研究家 キャッツホヰスカー氏
蝶屋のコバ先生
小説家の稲垣ATUROH氏
文学者の北原百秋氏
小説家の内田白閒氏
天井技師 Nature氏
(百と白は原ママ)

登場人物といってもいわゆるキャラクターではなく、詩の中で擬人化したようなものが多かったですね。
だから有名どころの童話くらいしか読んでないので、全然知らない人ばかりだった。
連載の一部を抜き出した体なので、他にもこんな人にお話を伺いましたというふうに名前が羅列されていて、宮沢賢治や近代文学が好きな人はそれを見るだけでも楽しいのかも。
名前だけ出てきた佐々木喜善の話は読んでみたかった。そういえばざっくり同じくらいの時代で、同じ岩手県の人なんですよね。賢治作品にも、座敷童子の話ありますし。

あと足穂の話がすごく初期長野まゆみ作品っぽくて、ここがルーツなんだなと思いました。
三日月少年とか少年アリスとかの雰囲気。
本家の足穂も読んでみないとな。

印象に残っているのは、インタビューの中で賢治さんが語っていた「私の時代は紙に書いたものはたいてい創作です。身体をはなれた時点で表現なのです。」という言葉。
これ自体がフィクションの言葉なのだけれども、なんだか本当にそうなのかもと思ってしまった。
時代に限らず今でも、読まれるために書く言葉は本心の一部であってもすべて本当とは言い切れないよね。
「悪魔の日記」のエピソードもなんとなく気になりました。
長野まゆみは高瀬露をこういうふうに書くんですね。

速記者の児手川清治さんは、最後の方読んだ感じモデルがいらっしゃるのかなと思ったけれども、調べ方が悪いのかよくわからなかったです。

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