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2024/04/25 (Thu)

『コインロッカー・ベイビーズ』

うん……。
ちょっと苦手な小説でした。
読むのに一月近くかかってしまった。

苦手なところ1
露悪的というか、醜いもの汚いものを殊更に醜く汚く描写している。

苦手なところ2
1とも関連するのだけれども、世界(社会)が理不尽で容赦のないものと設定されている。
私は、この世界ではそういうところもあるにせよ、人の善意とか信頼とかそういうやさしい世界を信じているので、登場人物たちかひどい目にあっていくのはつらい。
いや、産まれてすぐに棄てられた人間が、他人や社会のやさしさを期待できないというのもわかるんですけど。

苦手なところ3
人が簡単に死んでいく。
普段からミステリを好きで読んでるので、人が死ぬ小説が嫌みたいなのはあんまりないんですけど、でも推理小説だと死体として登場人物するか、推理されることでいわゆる「特権的な死」だったりするじゃないですか。概ねは。
本書では、人の死というのは象徴とかメタファーでしかないと感じたんです。破壊という主題を表すための舞台だて。
でも私は、そうして殺される人たちに共感してしまう。その生を思ってしまう。ラストシーンでも、主人公たちによる破壊の完遂の裏で傷ついたり死んだりした東京の人々のことを考えてしまう。
でも、作者にとってはそれは不要な末梢部にすぎないんだろうと被害妄想気味に想像して、苦しくなる。

そもそも私は、書かれている出来事が本当に起こったことじゃない物語が好きじゃないんだと思う。
――というと語弊が大きすぎるけど。
比喩やメタファーや象徴として何かしらの出来事が物語の中で書かれている小説が苦手です。
幻視というか夢うつつに幻を見るのは実際に登場人物の上に起きたことなので問題ない。
物語世界を想定して、そこで生きている人々を「実際に存在するもの」と仮定して読む読み方をしているので、物語世界で起きることにメタな視点を入れたくないんですよね。

以上の理由から、『コインロッカー・ベイビーズ』は私には合わなかったです。

とはいえ興味深く感じたところもいくつかありました。
気が触れた人の台詞めちゃめちゃ巧いなとか。全然筋道が通ってないのに本人の中では論理立っているんだろうなって感じの狂った思考と台詞。

以前どこかの駅で『コインロッカー・ベイビーズ』の演劇のポスターを見たのですが、今回読んでみて舞台映えしそうだなってすごく思った。
現在形や単語の羅列でイメージを伝える感じの文章が多かったから、抽象度の高いメディアと親和性高そうな気がした。映画とかで、短いシーンがパッパッと挿入されて場面が切り替わるような、そんなイメージ。


あと、人を殺人兵器にするようなクスリが話の中心にあるわ主人公が棒高跳びするわで、バナナフィッシュを思い出しました。
書かれた時期的にもそんなに遠くない気がしたけど、なんかそういう社会的風潮とかあったのだろうか。
文庫版を読んだので解説があったのだけれども、そこに「俺達は、コインロッカー・ベイビーズだ」という台詞について、キクとハシだけじゃなくて現代人すべてだというようなことが書いてあって。現物が今手元にないのでニュアンス違うかもしれないですが。
でも現在の私は、それに共感できない。
社会の閉塞感みたいなのは今もあるけど、かたちは違うのだと思う。
だから、この作品が書かれた頃はどんな時代で、若者たちがどんな問題意識をもっていて、読者はキクとハシの何に共感したのかを知りたい。

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