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2024/04/26 (Fri)

『窓をあけて、私の詩をきいて』

主人公・水鳥(みどり)には咲野(さくや)と暁生(あきお)という大切な幼なじみがいる。 
三人の仲間の中で、水鳥は秘密を抱えている。 
ひとつは、詩を書いていること。もうひとつは、同性の咲野に特別な感情を抱いていること。 
中学2年の秋、暁生の友人の眩(げん)が仲間に加わり、水鳥の詩が彼の目に触れたことで、三人の関係が少しずつ変わっていく……。 
(Amazonの内容紹介を引用)

というわけで、あの名木田恵子が書いたLGBTの小説です。

私は小学校高学年くらいの頃に名木田恵子にハマってまして、市立図書館の棚に並んでた本を片っ端から読んでました。
大長編のふーことユーレイシリーズはもちろん、輪廻転生に萌えたヴァンパイア・ラブストーリーシリーズ(未完のまま終わってしまったのが残念だった)も大好きでしたし、「天使の梯子」は主人公の境遇に泣いた記憶があります。
知らない人でも、「赤い実はじけた」とか「キャンディ・キャンディ」の原作者というと、作風がイメージできるかと思います。(私はどちらも未読なんですが)
つまり、古式ゆかしい少女漫画のような、甘酸っぱい少年少女の恋模様をローティーン女子向けに書いた作品が多い方というイメージなんですね。
だから、私が本書を知った書評ブログでもその点をとりあげて意外だと紹介してらしたんですね。
でも読んでみて、作風を変えたわけではないと実感しました。
むしろ私が読んでいた頃でも、青い鳥文庫から出てた「天使の梯子」や「コップの中の夕空」、ノンシリーズの「air」なんかは十代女子の悩みや生きづらさが書かれていて、私は恋愛模様にときめくのと同じように主人公の葛藤に寄り添って感情を揺さぶられる読書体験をしたと思う。
そうしたティーン女子の悩みが現代ナイズされている結果の、LGBTなんだと納得しました。
最近LGBTを取り扱った絵本とかも多いですもんね。

そもそも私が主に読んでたのが15年くらい前なので(……と自分で書いていて時の流れに震えたけど)、冒頭でキャラクターたちがLINEで連絡とりあってたことにまず驚いたから。
だってふーことユーレイの頃なんて、SMAPが小中学生女子の憧れのハンサムボーイ的な立ち位置だったんてすよ!?
さすがにそれは当時の私にとってもリアルタイムの感覚じゃなかったので、印象に残っている。
ジュブナイル作家はその時その時の子供をとりまく環境や問題にアンテナを張り続けてないといけないんだなぁと感嘆しました。

閑話休題、この本の内容について。
前述のように、同性の幼馴染を好きになって悩む水鳥の心情が、読者に共感させるものでとてもよかった。
共感というのは、自分と同一視する「感情移入」ではなく、仲の良い友達の悩みを聞いたときのような感じ。
もしかするとLGBT当事者の人にとってはリアルじゃないと感じるかもしれないですが。
水鳥の悩みも、物語のなかで描かれていたのは「女の子を好きになってしまったことが普通ではない」というよりも、好きな子が他の人を好きになって苦しいとか、誰にも言えない想いを抱えている――のにバレてしまったとか、そっちの比重が大きいので自然に読めたのかもしれない。
もちろん、自分がヘンだと思って消えちゃいたいと詩に書く部分もあるんだけど。
印象に残ったシーンが、主人公が好きな咲野と同じクラスになれて嬉しいのに、クラス内では(スクールカースト的に)別グループになって、咲野は目立つ他の友達と仲良さそうにしているから、同じクラスにならなきゃよかった、と思うシーン。
その感情すごくわかる!
たぶんこれは異性愛であっても恋愛じゃなくて友情であっても抱きうる感情だと思うんですよね。
地球からとびおりてしまいたい気持ちも、私も持っていたことがある。
でもこうして極度に一般化することは悩んでる彼女を傷つけることにしかならない……って小説の登場人物を読者が傷つけるも何もないんだけど。
つまり同性愛という問題であっても、非当事者でも自分に引き付けて考えうる悩みを描いているので、共感性が高い物語になっているのではないかと思った。

「みんなにアルファベットがつけば、何が普通か決められなくなるよね――だれもが何か、悩みをかかえてるんだから」
LGBTと名前をつけること事態がレッテルを貼っているようだという会話の中で出てきた、この台詞がすごく好きです。
国語の読解問題みたいに、作者がこの作品を通して最も主張したいことは何かと問われたら迷わずこの台詞を選ぶ。
あとそのちょっと前の「ぼくたち、わるいことしてるわけじゃない。ただ好きになった相手が同性だっただけなんだ」も物語の根幹だと思う。

LGBTだけじゃなくて、水鳥や咲野や暁生や眩の家庭にはそれぞれの問題があるのとかも、「だれもが何か悩みをかかえてる」ことのあらわれですよね。
水鳥の母がタクシードライバーの仕事をしている理由も好き。

主人公の書いた詩が拙いというかあまり詩として昇華されてなく感情そのままのように感じたのは、中学生という設定考えるとご愛敬かな。

とにかくすごく良い児童書でした。

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