警視庁捜査一課に所属していた寺田聡は失態から、警視庁付属犯罪資料館、通称「赤い博物館」に左遷される。キャリアながら長年館長を勤める緋色冴子のもとで、未解決事件の再捜査を行う。
大山さんは未読だったのですが、人に勧められて。
数年前、ドラマでやってたのを見ていたので何作かは見覚えがある感じでした。
っていうかドラマの再構成の仕方はうまかったんだなって思った。一番印象に残ってるシーンがスナックでカラオケしながらカレー食べてるみたいなしょうもない記憶力なのですが。連作短編集の中の一部の事件を、主人公自身の過去にすることでキャラクターに奥行きが生まれるし、紹介できる事件も増えて一挙両得かなって。
ドラマの話は措いておいて、小説の方。
全体的には可もなく不可もなくというか、可だけど優や秀ではないというか。
読んでいる間はおもしろかったし、謎解きもよくできていると思うけど、何も残らずに通り過ぎていくタイプの小説かなと思いました。
大山さんは今回が初読なのですが、作家のイメージとして、職人肌な印象を勝手に抱いていたんですね。本格ミステリが好きで、技巧を凝らしたトリックやロジックのために物語を設定しているような。だから苦手なタイプだろうなと敬遠してたんです。
でも少なくとも「赤い博物館」は物語としてもそこそこおもしろかった分、インパクトの強い事件や謎解きはなかったように感じました。
あとミステリ研出身とは思えないほど文章が読みやすかった!
私はそんなに頭がよくないので、屋上屋を架すレベルで仮定をひとつずつ消していくようなのは途中で解らなくなってしまうのですが、短編なこともあるのか、シンプルに説明をしていたので分かりやすかったです。多少の粗や別解の隙(あるのか検討してないですが)よりも、話として筋が通っていれば良いという感じなのかな。
時効を迎えた未解決事件の再捜査ということで、捜査資料と遺留品から推理するのは少し歴史研究っぽさもあって好きです。
そういう設定だから、手がかりは読者にも同じものが過不足なく与えられている。聞き込みにも行くけれども、多くの場合あくまで確証を得るためのものであって探偵役である緋色冴子は既に仮説を立てている。という設定が巧いなと思いました。
そして解決編で着眼点がどこだったかを示されるのがおもしろかった。自分も読んで違和感を持ったところだったりすると嬉しい。
一方で、過不足なく情報があるから伏線がわかりやすいというか、ちょっと描写が多いとそういうことなのかな?と思うようなところがあったというか。
そういうのをうまく使っている短編もあったけれども。
あと登場人物の行動が、感情的に動いて事件を起こしているはずなのに感情の動きがめちゃくちゃロジカルみたいな。
動機を推理するにはそうするしかないけどそれってすごく不自然ですよね。
取ってつけたように最終話で緋色冴子の過去が仄めかされていたけれども、続編は出るのだろうか。
一番好きな短編は「復讐日記」で、次点が「死に至る問い」でした。好きなものの傾向が分かりやすい。
過去の事件だからか、何かしらが入れ替わってる系の話が多かったですね。そこまでマンネリ感はなかったけれども、振り返って気づいた。
印象に残った短編だけそれぞれの感想。
「復讐日記」
上にも書いたように一番好き。
手記とかに書いた人の意図が反映されているとテンションが上がります。そして意図のないところに意味を見出すのにも。
わざわざ血液型に言及してて分かりやすいなと思ったらひっくり返される興奮たるや!
事件関係者たちの心情を思うとやるせない気持ちになる。
「死に至る問い」
これは動機が好きというか、動機のためにこの事件を起こしたというその一点がもう大好き。
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