伊坂幸太郎の書き下ろし長編。
男がファミレスで自らの半生を語る。虐待する父親に支配された日々。シロクマのぬいぐるみに纏わる傷。そして、双子の秘密。誕生日に起きる瞬間移動。僕の弟は僕よりも結構、元気です。
語り手である優我自身が「僕の話には嘘も省略もある」と発言する信頼できない語り手で、双子の話なので、なんとなく『悪童日記』を思い浮かべていました。
双子の弟自体が存在しないのでは、って。
ちょっとちゃんと読み解けていないので、その可能性もなくはないけれどもそうなると面白さやこの話の中心部分が変わってきてしまうから、双子が双子なことは間違いないんだと思う。
けど、最後の部分がなんだか釈然としなくて。
なんとなく全体的に曖昧さを残しているように感じる。
その点では、昨年の『ホワイトラビット』のほうがはっきりとした話で、好みではありました。
どんでん返しの驚きどころがわかりやすかったというか。
こちらは何が仕掛けられているのかわからないままで。もちろん伊坂作品なので、後半にかけて台詞や状況がフラッシュバックする楽しさはありますが。
っていうか単に、主人公が浮かばれない感じがしてそれが釈然としないだけだと思う。
本人的には満足なのかもしれないけれども。
でもそのあとも淡々と語り続けているのが、どういう心境なのか読めなくて、やるせないと勝手に思ってしまう。
閑話休題が遅すぎる。
伊坂幸太郎は超能力的な不思議なことが起こる話も、兄弟の話も、強権的な存在に立ち向かう話もよく書いているので、見たことがある要素で再構成した感じがしました。
それが悪いというよりも、同じような素材でも切り口や調理法や味付けを変えると違う物語になるんだなというのがおもしろい。
あとユーガって名前の響きが優午みたい、と思っていたら作中で言及されていてちょっと楽しくなった。
伊藤が、おそらく現在の仙台で生きている、そして案山子の話を双子にした、ということがなんだかほっとした。こうしてその後を垣間見られるのはうれしい。
ほかにも拾えていないリンクあるのかな。
隻腕でボウリングしていたカップルの男は、何かありそうだけれどもパッと思い出せない。
[0回]
PR