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2025/03/16 (Sun)

『貴族探偵』

ドラマ化するとかしないとかで話題になっていて、タイムリーさにちょっとびっくりしました。

この間『雰囲気探偵』を読んで、推理をしない探偵って何と思ったので、同じく推理をしない探偵ものであるこちらを手に取ったわけなのですが。
人の気持ちに寄り添って事件を解決する鬼鶫と、キャラクターが感情を持ってなさそうな麻耶作品とでは比較というのもジャンルが違いすぎて難しいなっていうのが正直な感想です。
あとやっぱり、推理をしない探偵ってなんやねんって思う。
鬼鶫は推理はしなくても事態の解決をしていたけれども、『貴族探偵』はストイックなミステリなので推理と解決のフェーズがそんなに分かれていない。というか、推理をして犯人やトリックの謎解きをしたらもう短編が終わってしまう。貴族探偵が女の子を誘うのは解決じゃないよね、さすがに。
そんなわけで、雰囲気探偵よりもなおさら「探偵とは?」という気持ちでいっぱいです。
そもそも、雰囲気探偵でひっかかっていたのは探偵とは何かというよりは鬼鶫が何を考えているかよくわからない気持ち悪さの方が比重としては大きかったような気がしている。


さて。『貴族探偵』の話に戻します。
貴族探偵がなぜ推理をしないのに探偵かというと、以下のような理屈付けがされています。
貴族探偵は貴族なので労働はしない。代わりに執事やメイドたち使用人が捜査と推理を行う。貴族探偵にとっては使用人は自分の所有する持ち物なので、彼らのはたらきはイコール貴族探偵自身の功績となる。

理屈は分かるけど、あんまり納得はできない……。
なんで納得できないかというと、今まで読んだり見たりしてきた物語のイメージの積み重ねから、こういう場合のミステリだと執事なりメイドなりが探偵役としてフィーチャーされるものだと認識しているからなのだろうと思います。
確かに上流階級的には(といってもこれもイメージなのだけれども)使用人の手柄は主人のもの、なのかもしれないけど。
つまり、この作品においては、”推理が行われる場”を提供する存在が探偵ということなのだろうか。貴族探偵が命じなければ使用人たちもいわゆる探偵活動を行わないので、それゆえに貴族探偵は探偵たりえる、と。
使用人は所有物だから~という説明よりもこうやって理解すると私は納得できるんだけれども、この認識で正しいのかは分からないです。

あと、自分では推理をしない探偵が趣味で探偵をやる動機がよく分からないんだけれども(こういう風に事件に思い入れのないタイプの探偵は過程を楽しんでいるイメージなので)、麻耶作品の登場人物に動機を求めても仕方ないのだろうという気がするのでとりあえず考えないことにする。

ええと、実は未だに麻耶作品の楽しみ方がいまいちわかっていないのです。
今回で読んだのは10作品目になるわけなのですが。
本格推理小説に対するこだわりだとか、凝ったことやっているということはどうにかわかるようになってきたのだけれども、だからといっておもしろいわけじゃないよね、物語には重きを置いていないし文章も読みにくいし、と思ってしまう。(ごめんなさい……)
これは貶しているとかではなくて、読書というか推理小説に求めていることが私とは合わないというだけなので、むしろ私だって楽しめるようになりたいんです!
こういうところをこうやって受容すると楽しいっていうのをぜひ教えていただきたい。切実に。
「謎解きLIVE」のやつは好きだし、あと今のところ一番おもしろかったのは『螢』なので、犯人当てを解くつもりで臨むのが楽しめるのかなとなんとなく思ってはいる。
でもこの『貴族探偵』はわりと読みやすいというか、引っかかるところはあまりなくてページをめくり続けられた気がします。
読了済み麻耶作品の中ではかなり楽しめた方。探偵とは?っていう疑念はつきまとってはいたけれども、個々の事件はおもしろかったです。
……と書いていて気がついたが、本当にミステリをあまりよく知らない頃に『翼ある闇』『夏冬』『かく語りき』あたりを続けて読んだから苦手意識がしみついてしまっているのでは。
もしかしてその辺も今読んだら少しは楽しめるのかも……?


以降はネタバレを含みます。

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つづきはこちら




「ウィーンの森の物語」
古典的な針と糸の密室に少しテンションが上がりました。結局、犯人の偽装工作だったけど。
この手の針と糸のトリックは本当にうまいこと実現できるのだろうかというのが微妙に気になります。
犯人がどちらかというと感情的なキャラなのにロジカルシンキングできてすごいなぁ。
正直、冒頭からかなり読むのがきついなあ(文章に癖があるので)という印象でした。あと視点人物のおっさんがきもい。


「トリッチ・トラッチ・ポルカ」
私、このトリック好きです。頭と腕を切り取って美容院のケープをかぶせて生きているように見せかけるやつ。
警察の捜査シーンも、おもしろく読めた。見え隠れする貴族探偵の後姿にもわくわくしつつ。
この短編が5編の中では一番好きだったかもしれない。
警察の人が貴族探偵を疑って上長からの電話に出るところの台詞が、一話目とほぼ同じでちょっとおもしろかった。テンプレのパターンなのかしらと思ったら、三話目からはそのシーンなかったのでちょっとがっかり。


「こうもり」

固有名詞の並びが知人を思い出して気になって集中できない……と思っていたら、思わぬパンチを食らわせられた、という感じでした。
複雑なことをやっていて、破綻がなく成立させていて(少なくとも一読した限りではかなりスマートに感じました)、すごい。と思う反面、そのすごいと感じる気持ちとおもしろいという感情の間には距離があるよなあということも思いしった。これは私の内面の話なのでどうしようもないんだけれども。
地の文に出てくる貴生川を、絵美の彼氏と思うし、何なら貴族探偵かなとも思うじゃん。でも結びつけているのは状況以外では「常盤洋服店の高級ジャケット」くらいなことに気づいてびっくりしました。私ってこんなに簡単に騙されてしまうのか、みたいな。オレオレ詐欺とかでも、自分から語る言葉は少なくしてると相手が勝手に補完してくれるみたいなこと聞いたことあるけど、なるほどなぁ。


「加速度円舞曲」

あちらを偽装するとこちらも模様替えしなければ、という犯人の行動がピタゴラスイッチっぽい事件。ピタゴラの結果、貴族探偵が解決に乗り出したというのがおもしろい。
貴族探偵が天誅云々言っていたときは、鈴木君を思い出してなんとなくぞわっとしました。その後5話目を読んで、ある意味間違いじゃなかったのかもという気分になった。


「春の声」

事件の構造が複雑だったので、推理部分がちょっと理解するのが難しかったです。主に、誰が誰だか把握しきれていなくって。
三匹の子豚というかウロボロスで、このまま真相が宙に浮くんじゃないかとはらはらしました。『かく語りき』でそういう結末のがあったじゃないですか。
三人の被害者であり犯人の思考レベルが全員同じってのもどうなんだ……と思わなくもない。それぞれの人が、誰を殺して誰に罪を擦り付けようとしたのかという選択が違っていたらこういう事件にはならなかったのだけれども、そこのところの必然性がほしかった。もう少し、誰が誰に対して特に敵視しているという情報があったらよかったのかも。
おじいちゃんの動機がわりと好みです。蟲毒ですね。
視点人物としては5話目の人が一番好感がもてます。
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