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2025/03/16 (Sun)

『パパの電話を待ちながら』

「イタリアの宮沢賢治」ジャンニ・ロダーリのショートショート集。
セールスマンが幼い娘に毎晩電話で語ったお話、という体の物語が56話載っている。電話代がかかるので(という設定なので)それぞれの話はごく短くて、文庫本で2~4ページぐらい。
シュールな話や教訓の強い寓話的な話もあるけど、特にオチがないようなものも多い。

「イタリアの宮沢賢治」という触れ込みではあるんだけれども、宮沢賢治よりもっとしっくりくる作家がいそうな気がする。
宮沢賢治みたいな宗教っぽさはなくて、明るい。明るいのはイタリア人だからかもしれないけど。
どちらかといえば素朴な、平和への祈りや未来の希望や、努力や多様性や平等や自由を尊ぶ想いは根底にある感じだけど、むしろ口承文芸っぽいような気がしました。
そもそも、訳者あとがきによれば「本好きも、そうでない人も、一度は読んだことがある作家」「小学校で読み書きを覚えて、初めて自分で一冊読破する本」らしいんだけど、日本の宮沢賢治ってそういう立ち位置なのか私は疑問です。
中川李枝子とかかこさとしとか佐藤さとるとかあまんきみこあたりがそういうのにあたるんじゃないかなー。でも児童文学で世間的に有名なのって宮沢賢治になっちゃうんだろうなー。


56個の話はそれぞれ独立しているんだけれども、ときどきシリーズキャラクター的な存在がいて楽しい。それから、お菓子、宇宙、魔法、猫とネズミ、のモチーフなんかも繰り返し登場している。いかにも子供の興味をひきそうな感じ。

全部は書いてられないので、特に印象に残った話についてだけ、感想を書きます。

私は「アイスクリームの宮殿」が一番好きです。お菓子の家みたいにアイスクリームでできた宮殿の話。食べ放題!アイスクリーム・パラダイス!
こういう話はほかにもチョコレートの道とかコンフェッティの雨とかあったけど、「アイスクリームの宮殿」が一番描写がしっかりしていて、屋根は生クリームで~窓はいちごのアイスクリームで~と細かく書いてあるのでわくわくする。
「壊さなければならない建物」も、同じノリで好きです。こっちは壊されるために建てられた建物ですが、どこを誰がどうやって壊したかみたいな細部が楽しい。じゃあ私はこの辺を壊したい、みたいな。

「チェゼナティコの回転木馬」も好き。
魔法の回転木馬に乗れば、どこまでも飛んでいける。
「夢見るステッキ」も同じ主題ですね。
気づいたけれども、私は、想像力にはたらきかけてくれるような、わくわくする話が素直に好きなんだろうな。

逆に、教訓的な要素が強い話、道徳の副読本に載っていそうな話はあまり好きではない。
それでも、「鐘の戦争」は鐘が響き渡る戦場を想像すると美しいし(そこは近代以前の祝祭的な戦場になる)、「どこにもつながってない道」はグリム童話にありそうだし、「進め!若エビ」「クリスタルのジャコモ」辺りは、第二次大戦や冷戦の時代を生きた人が未来の世代に託したい切実さみたいなものを感じる。
あと、「泣く、ということば」。〈泣く〉ということばが使われなくなって、博物館に陳列されるようになった〈明日〉という幸せな国の話。作者自身がそういう未来を願っていたんだろうかと思うと、ぐっとくるものがあるような気がします。
「地球と人のものがたり」までくると、物語ではなくメッセージになってしまうので好きじゃないです。
「泣く、ということば」はこの設定でもう少し長いSFが書けそう。

宇宙や未来を描いた話は他のものも、アレンジしたら良いSFになりそうなものが多くて、おおむねおもしろかったです。これ自体が良いSFかどうかは短すぎてなんともいえない。
「宇宙の料理」「学習キャンディ」「宇宙ヒヨコ」あたりが特に好き。


「アーダおばさん」と「太陽と雲」が並んで載っているのが、どういうことなんだろう。
与え続けても見返りがなく、そればかりか不満げに催促される話と、太陽が惜しみなく光をばらまいても尽きることはなかったという話。
他者に何かを与えるということ、その結果について対照的な話が二つ並んでいて、どっちが本当に言いたいことなんだろうと悩みました。
太陽の光だから尽きない、というのは関係ないと思うんですよね。
どちらの考えも並立しうるというメッセージなのだろうか。

数字の話(「9を下ろして」「2点増しで合格」)はシュールすぎてちょっと何が起こっているのか分からなかった。
いろんなところにすぐ落っこちちゃう女の子アリーチェ・コロリーナとか、大食漢だらけの国マンジョーニア国の歴史なんかは、シュールといえばシュールだけれども、まだ児童書にはよくあるレベルのシュールさだし、言葉遊びもあって、読んでいておもしろかった。

それから、ミダス王の話がまぎれていたのは謎でした。
触ったものがすべて金になるあの話。現代(20世紀)ナイズされているし、固有名詞もイタリアっぽくなっているけれども、基本的にはあのミダス王でした。ロバ耳かは特に書いてなかったけど。
神話のミダス王の物語をもとに、20世紀イタリア風におもしろおかしく子供向けに書いた感じなのかしら。

どうってことない小男は、マザーグースにありそうだし(曲がった男?)、元ネタがあるものもあるのかな。

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