高里椎奈に似てるかも、と言われて薦められた本。
しかし、高里さんを引き合いに出されるとそりゃあちょっと点が辛くなっちゃいますよね。好きなんだもん仕方がないよ。
比べるとかではなくて、方向性の話だということはまぁわかっていますが。
イギリス留学中の日本人大学生カイは幽霊が見える目をもっている。そこで英国特別幻想取締報告局の一員であるランスと知り合い、妖精や精霊と関わるなかで、少しずつ変わっていく、というお話。
高里さんっぽいって言われたけれども、舞台立てとか設定とかもあって、篠原美季とか香月日輪とかをなんとなく思い出す。
まぁ要するにそういう傾向の話なわけなのですけれども。
この寂しさは、確かに沁みるなと思いました。
”第二の目”があるせいか、カイもランスも二人とも孤独で、失う恐怖を抱えていて、半分くらいあっちの世界に魂を置いている。キャラクターとしてもそういう人として描かれているし、ストーリーも彼らの抱えた寂しさを読者に明かすように進んでいく。
カイの一人称の地の文も抑制された雰囲気で書かれていて、妙に残る。
だから、届く人にはきっと響くのだろうと思います。
私もたぶん好き。
いくつか、好きな台詞もありました。
「忘れたいことを忘れられない人間は、みんな寂しい」とか。
リチャードさんの台詞とかも、すごく良い。この小説の言葉って、寂しいし悲しいけれどなんとなく綺麗ですよね。だから好きになれるんだと思うけど。
寂しい人と寂しい人が出会って、孤独じゃなくなる話になっていくのだろうと思うんだけれども、これから先たとえどんなに仲良くなったとしても、彼らは寂しさを忘れることはできないんだろうなぁ。
主人公たち以外に出てきてたキャラクターがほぼ女の子だったんだけれども、妖精のスーも水の精霊のシンシアも、あとまぁ幽霊の美柴も、恋が執着になっているところが共通していてなんとなくおもしろい。
その辺が今後回収されたらすごくおもしろいだろうと思います。
あとどうでもいいことだけれども、妖精やら精霊やら吸血鬼やらそういったひとたちの総称を日本語でどう表現するのかって作者や訳者のセンスが出てくるところだよねって常日頃考えている。この物語では、そうした生物は「幻想的生命体」で彼らが引き起こす事件は「ファンタズニック」で、スマートではないけど名前つけるのは強いなと思いました。
phantasmicではなくてnなんですよね……。nはどこからやってきたんだろう。
比べて云々というか、いる場所は近くても向いている方向はきっと違うのでこれは単なる自分の好みになっちゃうのだけれど、もうちょっとキャラやストーリーの見え方が二転三転したほうがおもしろいなと思いました。
わりとありがちと思ってしまう感じだったので。
あの人が実は”幻想的生命体”だった、ってのもありがちの範囲内だから、そういう属性じゃなくて性質とかの点で何かほしかった。
というか、この人のはもっとライトじゃない小説を読んでみたい。
明るさではなくて密度として。
とりあえずこのシリーズも3作くらい出てるらしいので、続きを読んでみたいです。
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