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妖怪と神話とミステリと甘いものが好き。腐った話とか平気でします。ネタバレに配慮できません。

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2024/04/16 (Tue)

『砂漠で溺れるわけにはいかない』

ニール・ケアリーシリーズ最終巻。
……文庫解説にある、「そう遠くない将来にこのシリーズを再開するつもり」というのはその後どうなったのでしょうか。

後日談という雰囲気で、短い話だった。犯罪や事件というよりも、人間ドラマに重きを置いた感じ。
カレンとの結婚式を2ヶ月後に控えたニールのもとをグレアムが訪れ、ラスヴェガスから戻らない86歳の老人を連れ戻す「簡単な仕事」をもたらす。
ニールは子供をほしがるカレンに戸惑い、元コメディアンの老人に手を焼かされ、砂漠の真ん中で溺死しかける。


ニールや他の人の視点だけでなく書簡体や日記体など、章ごとに違った文体で書かれて進む途中からの構成はわりと好きな部類です。
この手の趣向はミステリ的な部分とうまく噛み合っているとすごく好きなんですが。「リヴァイアサン号殺人事件」とか。
そこまでうまくいっているというか、別にミステリ度は薄いしなぁ。
脇役に好感を抱くという意味では成功してる試みだと思いました。
クレイグとパミラの間に生まれたロマンスはなんとも応援したくなるし、ホープの日記は女学生のような純真な可愛らしさがおかしい。「腹心の友」って赤毛のアンでしたっけ?

最初にナッティが失踪したあとのウェイターの言葉にはっとさせられた。
笑うと笑わせていただくの違い。
なんだか恥ずかしくなる。
老人というだけで惻隠の情を抱く上から目線を看破された恥ずかしさ。
年老いて第一線の流行からは取り残されていても、身につけた知識や技術と活躍の場所は残されているんだという気づき。
まあ、あちこちに飛ぶ同じ話を延々ループするのはご愛嬌という感じでしょうか。
うん、読んでてもちょっとうんざりさせられた。  

ニール自身の内面にフォーカスした話で、彼が人生をどうするかというのがテーマだと思うんですけど。
4巻のあの取って付けたような大団円のあとの5巻を、こういうラストにするのかと驚いた。
えー、ハッピーエンドじゃないの?
と一瞬思ったんだけど、いやオープンエンドの方が「その後」が出る可能性に期待できていいんだけど。
1巻や2巻の、仕事を終えて孤独に隠遁するオチと表面上は似ているけど、内面的には変わっている……んだよね?
はじめからこの幕切れに至るつもりだったなら、4巻のラストをああはしないでほしかったかなぁ。

母親とその幻影に対する心理的な影響以上に、父親の不在がこんなにも影を落としていたのか。
「父さん」はそれを埋めることはできなかったんだ。
強い絆はあっても、生物学上の父親ではない以上、父親像は与えられないんだというのが少し寂しかったです。
とはいえ、この話の最後では違った見方になっているのかなと思う。
家族を知らないのが負い目だということは、1巻で初めてのガールフレンドができたときからずっとニールにつきまとっていたけれども、ついにそれに立ち向かおうとした。

前巻の感想で、26歳にもなると「ナイーブな心を減らず口の陰に隠して」もいられなくなるのかとがっかりしたと書いたんですが。
そのどちらもまだ失われてはいなかったのでほっとしました。
もちろんストリート・キッズの頃から変質はしているけれども。
カウンセリングを受けたら……いや、それでも本質的な性格は変わらないのかな。

ところで今回のタイトルすごくかっこいいですよね。
それを回収するかたちでのラストの文章もなんとなくかっこいい。
語感からか、「海へ出るつもりじゃなかった」が思い出されました。

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