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2024/04/25 (Thu)

『ウォータースライドをのぼれ』

今回はウォータースライドをのぼっていたの一瞬だったなぁ。
というわけで、ニール・ケアリーのシリーズ4作目。

ネヴァダ州オースティンでカレンとともに暮らしていたニールのもとに、例によって例のごとくグレアムがやってきて、朋友会の仕事を命じる。
それは、人気テレビ司会者のレイプ疑惑事件で、被害者のポリーを裁判で証言できるように鍛えることだった。
しかし、様々な思惑でいくつもの勢力が彼女を探し出そうとしていた――。

というのが今回のあらすじ。
ストーリーは楽しくておもしろかったのだけれど、正直なところがっかりしてしまった。
なんていうか、26歳にもなると「ナイーブな心を減らず口の陰に隠して」もいられなくなってしまうんだなというがっかり感。失望。
たとえば、学生時代にセンスの煌めく創作をしていた人が、就職して何も生み出さなくなってしまったときのような寂しさ。
ニールが心の平穏を手に入れたことは喜ばしいと思うんですけど、その一方で青春というか若さゆえの青さと輝きが失われてしまったことがかなしい。
ストリート・キッズのそこのところが一番好きだったので。シリーズ読んでも、ストリート・キッズがその点では最高でどんどん薄くなっていってついに消えてしまった。
きっと、作者の目指していた方向性と違うものを期待してしまったのでこんな気分になっているんだと思う。

あと最後の大団円がすごくチープに感じて。それもあって、ニールの魂の平安を素直に喜べない。
何あのみんなハッピーになる感じのその後の紹介。アニメやマンガで最終回の最後にありそう。
その人はそうなったのね、みたいににやっとしたところはありました。
解説によれば意図的なものらしいですが……。

話自体は本当に読んでておもしろかったです。
わりと初めのほうから、訴えられた司会者や一儲けしようとする人たちやマフィアや殺し屋といった、朋友会に対抗しようとする勢力の存在が描かれ、あっという間にニールたちの居場所を突き止められてしまう状況のサスペンス感にハラハラドキドキした。
とはいえ、ポリーを巡っていろんな思惑の人たちがいすぎて、誰が何を目的にどこと繋がっているのかが若干分かりにくかったです。
ニール自身にも朋友会にも分かってなかったから仕方ないけど。
だからそれに関する謎が最後の方で明かされても、頭の中でよく整理できてなくて、驚ききれなかった。
というか読み終わったあとでも、フォーリオとポリーの意図があまりよく分かってないです。そもそものはじまりの。

ニールの英語教室も楽しかったです。
ポリーの台詞が方言と俗語まみれで、これって言語だとどういう感じなんだろう。
「ひ」と「し」の発音って何にあたるのかしら。
日本語としても、これってどこかで実際似使われてる方言をもとにしているのか気になる。
語尾とかのイメージからなんとなくフレイア(マクロスΔ)が浮かんできましたが。
女性陣に集団で責められてたじたじになるニールもなかなかおかしかった。


そして、杉江松恋の解説がとても興味深かったです。
1巻〜4巻の内容がそれぞれ、作中当時のアメリカの状況を表しているというお話。
自分で読んでいるだけでは気づきようのない視点なので、そういうことを提示してくれる解説はありがたいです。
3巻読んだときも感じたけど、今の日本もわりとこんな感じですよね……。

その解説によると4巻のテーマは「馬鹿になったアメリカ」らしいですが、フェミニズムやイタリア系移民の問題も副次的なテーマなのかなと思いました。けっこう存在感が強かった。
それらの問題も、実際にこの時期のアメリカで持ち上がってきていたものなのかしら。

フェミニズムというか、ニール・ケアリーシリーズに出てくる女性ってわりと聡明で強かな人が多いイメージです。
性格としては聡明で強かでも、それでも犯罪組織や男性的社会の食い物にされるヒロイン像が共通している気がするのですが、どうなんだろうその辺。
ニールの母親のトラウマ(?)的に、そういうシチュエーションに彼を追い込んでいくストーリー構成をしているのかしら。
それとも単に当時のアメリカを書くとそうなるのか、作者の好みか。


あと気になったのは、シリーズが進むにつれてどんどん作中で死ぬ人の質が変わっていっていること。
1巻では誰も死ななかった。
2巻は、チンピラのボディガードの少年(これがニールにとって初めて見た死だと書かれていた)と、そのときの戦闘していた相手、そして峨眉山で死んだ人々(ネタバレなので曖昧に書いてます)。過去の話は今は置いておきます。
3巻ではカルト教団の人たちとインディアン。そして何より、ニールが初めて人を殺したのが印象的だったと思う。
こうやってまとめると、2巻や3巻で死んでるのって、「悪い人」が大半なんですよね。
悪い人って言うと感覚的だけど、何かしらの罪を犯した者だったり、犯罪組織と関わりがあったり。
もちろん例外はありまして、ショショコは悪くないどころか良い人だったけど。
でも今回殺された人たちって、ニールや朋友会側にとっては邪魔になる行動をしたけど、悪人ではなかったと思う。
特に酒に溺れてしまったウィザーズは哀しい。ニールやグレアムの反応が、哀しさに拍車をかけてますよね。
ウィザーズももうひとりも、マフィアに金銭的弱みを握られていたという意味では、ポリーを害する行動はしていたけどある意味被害者だったと思うんですよね。
プレーオフは完全に「悪者」なので、まあいいんですけど。
この傾向もまた、少年が大人になっていく過程での変化なのかなとなんとなく思っています。

プレーオフは完全に「悪者」で殺し屋なんだけど、なんとなくかわいい。
過剰書きで分析や対策を挙げていて合理的な殺人機械っぽさを醸し出しているのに、ことごとくうまくいかないのが、なんともいえないおかしさで、そのギャップがかわいい。
緊迫した雰囲気だったけれども、犬とかバットとかギャグじゃないですか。
最期まで変わらず滑稽で。
なるほど、喜劇ってこういうことか。

ウォータースライド自体も、意味不明でおかしい。日本人の設計によるサムライ・ウォータースライド「バンザイ」とは。
どことなくアメリカナイズされた謎ニホン観があるんだけど、仏陀の鏡の中国はあんなにリアルだったのになんでだ。
初めはスプラッシュマウンテン的な車に乗るタイプのだと思ってたんだけど、読んでるとどうも身一つで滑るプールのウォータースライダーっぽい雰囲気が濃厚で、なおさら頭おかしい。
そんなトンデモアトラクションなのに、砂袋が落ちたところの描写が伏線になってたんだと後で気づいてなんとなく悔しい。

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