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2024/03/29 (Fri)

『濱地健三郎の霊なる事件簿』

『幻坂』にも出ていた心霊探偵濱地健三郎の短編集。
心霊探偵が霊的な事件を解決する話なんだけど、ミステリというよりは怪談という印象を受けた。

心霊探偵のもとに持ち込まれる依頼は、たとえば何者かに憑かれている人を除霊することだったり、あるいは警察に協力して殺人事件の容疑者が反抗時刻に別の場所にいたのは生霊かどうかを調べたり。
心霊現象を合理的に解決するのではなく、霊はいるのが前提で、それがどうして出てくるのかを解き明かすところがミステリっぽい感じ。
たとえば殺人の被害者が加害者に憑いていたりして、心霊探偵にはそれが視えるので犯人は誰かを突き止めるのは簡単なんだろうけど、それをそのまま書くとミステリとしてもホラーとしても微妙なところを、試行錯誤して調理しているように感じました。
だから視えるけどその人はいったいどこの誰なのかを調査したりするところでストーリーを動かしているみたいな。

恨みを残して死んだ幽霊が出るので、どろどろした情念とか人間関係とかもあるんですけど、その書き方が全然どぎつくなくて。有栖川先生の文章って上品だなぁと思った。

各話感想。ネタバレあります。
「見知らぬ女」
ホラー作家の夫の枕元に夜な夜な立つ見知らぬ女の霊。素性と原因を心霊探偵が解決する。
助手の志摩ユリエが元漫画家志望の腕を活かして、依頼人の話から幽霊の似顔絵を描くという設定が、おもしろいというか上手い発明だなと思いました。
その絵があるから、たとえば普通の犯罪捜査で写真を見せて聞き込みをするように、幽霊の素性についても捜査していくことができる。
女の霊が出ていた理由はちょっと脱力した。けれども、そういうことが得てしてありうるのが逆にリアルな感じもして。

「黒々とした孔」
恋人を殺した男の視点と、刑事から協力を依頼された濱地たちの視点が交互に描かれる。
最後の会話で霊の存在を殺人者に告げてぞっとさせるのはすごく怪談っぽいと思いました。でも榎さんじゃんって思ってしまってなんか妙に可笑しく感じた。いや、榎木津とは視えてるものが違うんだけど。

「気味の悪い家」
かつて画家夫婦が住んでいた家は、空き家となった後、気味の悪い家と評判になり、足を踏み入れた人が何人も原因不明の高熱にうなされていた。その家の隣人から依頼を受け、濱地とユリエが調査に赴く。
タイトルが上手い。
まさに、気味の悪い家であることが核となる物語でした。
この動機はちょっと意外性があっておもしろかった。
そんなことで不特定多数に祟るのかって思ったけど、些細とも思えることで祟るのが悪霊だよね。
この話からユリエも徐々に霊的な能力が覚醒していくのですが、その結果ホラー映画とかミステリドラマとかによくいるような、指示に従わず軽率な行動をしてキャンキャン喚いてむしろ邪魔する女性っぽさを感じて微妙にイラッとした。
性格の明るさが普段だと物語に華を添えて、陰惨な話でも暗くなりすぎない効果があるけど、こうなると逆効果だよなぁ。
あと、その車は何だったの?ってめちゃくちゃ気になる。

「あの日を境に」
幸せの絶頂にいたカップルが、ある日を境に歯車が噛み合わなくなる。その原因を追求する。
この短篇が一番好きでした。
ラストのほろ苦さ、甘さ、切なさがなんとも言えずとても良かったです。
そして、カップルのそれぞれから聞いた話のほんの一言から真相を究明する鮮やかさ!
これがすごく有栖川さんのミステリっぽい閃きで、でもミステリではなくて幽霊の話なのでそこに曖昧さや風情があって、それがラストで余韻となってあらわれるのがとても素敵。
てっきり、雲の方が原因だと思っていたので、予想を外して悔しい。

「分身とアリバイ」
警視庁の赤波江刑事が、捜査中の事件について心霊探偵の助言を仰ぎに来た。被疑者と思われる男性は、犯行時刻に鉄壁のアリバイがあった。生霊の仕業か、はたまた巧妙なトリックか。
作家アリスシリーズにこういうのなかったですっけ。有力容疑者にアリバイがあるけどドッペルゲンガーじゃないかみたいな話。
○○○○という真相はいかにもという感じがしました。

「霧氷館の亡霊」
9歳になる息子が「家の中に何かがいる」と怯えている、と依頼があり、濱地は霧氷館と呼ばれる屋敷に招かれる。
ナントカ館という名前の建物が出ると無条件にテンションが上がりますね。
これはなんていうか、ありきたりな言い方ですけれども、生きている人間の情念が一番怖いと感じました。というよりも、生きているときに強い情念を抱いていた人間が死してなお、という話ではあったんですけど。
エミール・ガレのランプシェードがさり気なく過去話であることを示していた。それがもうちょっと絡んでくるのかと思ったらべつにそんなこともなかったです。

「不安な寄り道」
探偵の存在自体が事件の引き金となる話。
なんかでも、悲しいよね。寂しかったんだろうな、と同情を抱く。
これもまた、ユリエがちょっとウザかったです。

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