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2024/04/27 (Sat)

『最初の舞踏会』

何かで書評を見て、ずっと読んでみたかったホラー短編集。
ペローからゾラ、アポリネール、ルブランまで、私でも名前を知ってる有名なフランス文学の作家名が目次に並んでる。
ホラー短編集と書いてあるけど、私の感覚だとホラーというよりも怪奇幻想小説って感じの作品が多かった気がします。
そこの違いをうまく説明できないけど、読者を怖がらせることが目的ではない感じというか。古典的な作品だから今更怖がれないのかもしれないけど、古典的な作品だからこそ著者はホラーとして書いてはいない気がするんですよね。
表題作とかはむしろ奇妙な味っぽかった。

読んでて、小学生の頃こういう短編集よく読んでたなと思い出しました。
岩波少年文庫ではなく、もうちょっとおどろおどろしくキャッチーな絵のついていた単行本だったと思うけど。学校の図書室に並んでいた、世界の怪奇・不思議な話みたいなやつ。
そういうシリーズでそれこそ青ひげとか、オペラ座の怪人の抄訳版とかを読んだなぁ、とふと思い出した。

あと中扉ページの佐竹美保の絵が素敵でした。
それぞれの物語の内容を表した絵。

各話感想。

シャルル・ペロー「青ひげ」
あまりに有名な童話。
とはいえ、大筋は知ってるけど、最後に兄が来て助かるというのはあまり印象になかった。
前後についてた教訓みたいなものがあったのも知らなかった。

テオフィル・ゴーティエ「コーヒー沸かし」
深夜に、肖像画から人が抜け出たり、コーヒー沸かしが人と化したりして、舞踏会を始める。
その描写がファンタジックで楽しい。
そしてほろ苦い恋の余韻が良いですね。

ギ・ド・モーパッサン「幽霊」
語り手は友人から奇妙な頼み事をされ、友人の家に行くとそこで友人の死んだ妻と思われる幽霊に遭遇する。
なんか、はっきりしないまま終わってしまってもやもやする。
友人自身も死んでるのかと思ったけど……。
髪を梳いてほしがったのはなぜか。ボタンに髪が絡まってるのにはゾワッとしたけど。

ジュール・シュペルヴィエル「沖の少女」
海の上にある美しい村で、一人暮らす少女の話。
淡々と、美しい筆致で村と少女の様子が描かれるのは幻想的。
ちょっと読むだけでは幻想的で美しいという印象だけなのだけれども、そこに一人でありつづけるしかない少女を思うと哀しくなる。怖いというよりも。
その正体自体が怖いものではなく。生まれてしまった哀しみ、一人きりで変わらない毎日を生き続けなくてはならない哀しみ。

レオノラ・カリントン「最初の舞踏会」
表題作。
社交界が苦手な少女は、動物園のハイエナに、自分の代わりに舞踏会に出てくれるように頼む。ハイエナは顔の変装のためにメイドの皮を剥いで、かぶることにする!
このあらすじをなんとも奇妙で、可笑しくて、すごく読みたかった作品なのですが。
そこから驚きのオチがあるのかと思いきや、あっさりしていてちょっと拍子抜け。あらすじにもあるシチュエーションだけだったかな。

ギヨーム・アポリネール「消えたオノレ・シュブラック」
オノレ・シュブラック失踪事件の真相。
いやなんか、カメレオン的擬態なら肉体そのものはそこにあるんじゃないか(壁に融けてしまうのではなくて)とか、死んだら倒れたり色が戻ったりしないのかとか、細かいところがどうも気になってしまった。

マルセル・エーメ「壁抜け男」
似たような話が続く。
有栖川さんの小説のタイトルにも使われてて、名前だけは知っていた作品。
壁抜けの能力に目覚めた大人しい男の活躍と結末。
怪盗のようなことをしてるのは楽しいし、この最期にはぞっとする。
男に破滅をもたらすのは女なんですかね。

モーリス・ルヴェル「空き家」
これは、怖さがよく分からなかったです。
空き家に忍び込んだ空き巣は、不気味な気配を感じながら家探しする。そして空き家だと思っていた家にずっと死人がいたこと
に気づいて、恐怖をおぼえて逃げ出すんですが……。
殺人を何とも思わない(と自分では言っている)のに、死人のかたわらで泥棒していたことに畏怖するのかというのがよく分からなかった。
泥棒をしているから、ちょっとしたことにもびくびくしてしまうのは分かるんだけど。

アルフォンス・アレー「心優しい恋人」
これはなんとも不条理なユーモアのある話。
変愛小説集なんかに載っててもおかしくなさそう。
凍えた女性が心優しい恋人にあたためてもらう話なのですが、なんとも官能的。

エミール・ゾラ「恋愛結婚」
こんどは打って変わって生臭い恋愛結婚の顛末。
でもどうにも実際そういうことありそうで、なるほどこれが自然主義か……。

モーリス・ルブラン「怪事件」
老検事が語る身の毛もよだつ惨劇。婚約披露の舞踏会で、婚約者を得た娘とその姉妹が密室で惨殺される。
何これ!
いや、何があれって、さんざん密室だの首なし死体だのダイイングメッセージだのの話をした挙句、解決されないどころか投げっぱなしになるんですよ、信じられない!
ミステリと言われてないのに勝手に期待しただけなんですけど、本を投げたい気分です。
しかも間取りとか時系列とか妙に細かいのが腹立たしい。
せっかく、首は犯行時間を錯覚させるため……三つ巴の殺人……みたいなこと考えてたのに。

アンドレ・ド・ロルド「大いなる謎」
「怪事件」よりもよほどミステリ的だった。
妻が幽霊となって毎晩訪ねてくるという男に、「幽霊」を合理的に解明して原因を取り去ったものの……という話。
こういうの好きです。
人は合理だけでは生きられないんだ、としみじみ思う。

ボワロー=ナルスジャック「トト」
ミステリっぽい話が続いて、満を持しての叙述トリックだった。
この作者も推理小説作家なんですね、はじめて見た気がしますが。
兄弟の世話を押し付けられ、殺意を育てていく話なんですが。
急転直下のオチが非常に鮮やかでした。

ジャン・レイ「復讐」
これが一番怖かったです。
最期をリアルに想像するとすごく怖い。不気味。
それを復讐と思うのは罪悪感ゆえだよなぁと、身も蓋もないことを考えてしまいますが。
幽霊よりも、生きているもののほうが怖いと私は思うので。
この死に方だけは絶対にしたくない。

プロスペル・メリメ「イールの女神像」
主人公が訪れた田舎の家で近頃発掘された女神像は、邪悪で美しい表情をたたえていた。その家で行われた結婚式で、事件は起きる。
読みごたえがあってとてもおもしろかったです。
雰囲気が良い。何かが起こりそうで、それが何なのか判然としない雰囲気。そして起こったあとも、本当のところは語られない――想像するしかないことで、畏怖は増大する。
「この女が汝を愛するなら、身の危険に気をつけよ」まさにこれだったんだろうな。
田舎の名士とその妻がパリから来た主人公に必要以上に恐縮するところや、素人考古学者の強引なこじつけは、作者の性格悪い視線を感じた。実際こういうところあるよね、でもそれを笑う視線は意地悪いよね。

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