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2024/04/19 (Fri)

『捕物小説名作選』

自分からはあまり手を出さないミステリの下位ジャンルにもひととおり触れておきたいという、好奇心と義務感が綯い交ぜになったような感情があります。
去年ぐらいからハードボイルドを読みたいと言っていたのもそれ。

でも知識がないものだから何を読んでいいか分からず、とりあえず名作選を読んでみたらよいのではというノリで読みました。
日本ペンクラブ編、池波正太郎選で、集英社文庫の日本名作シリーズの一冊。
この日本名作シリーズというのが、それぞれのジャンルに詳しい作家が選者をしているようで、見返しのラインナップを見ていると他のも読んでみたくなる。栗本薫選の『今、危険な愛に目覚めて』とかタイトルのインパクトすごいし。

閑話休題。

この『捕物小説名作選』の収録作は、岡本綺堂から藤沢周平まで12作。
たぶんどれもシリーズ1話目かと思うので、気になった短編からそのシリーズの他の作品に手をのばしやすい設計かと思います。
推理小説というより時代小説の作家の方が多いかな、という印象。
そのうち、読んだことがあったのは半七と安吾だけで、ほかはここに載ってるシリーズ以外も読んだことない作家ばかりでした。時代小説はほとんど読まないので。
漠然と江戸時代を書いた時代小説よりも、どちらかというと特定の実在した人物や事件をテーマにした歴史小説の方が好みなんですよね。

ミステリ度とか登場人物との距離感とか、雰囲気がユーモアかシリアスかとかそれぞれに違っていたので、全部捕物帖でも1作ごとに新鮮な気持ちで読めました。
意外だったのが、時代設定が明治時代になってるシリーズも結構あるのかということ。
いや、それを言えば読んだことのある2作品だって、「明治開化」安吾捕物帖だし、半七だって明治だか大正だかに老人の昔話を聞く体の話なんですけど。
でもなんとなくイメージとして、江戸時代だと思ってたので。
維新後が舞台の話も、安吾はともかくとして、警察ではないのに旧幕中の肩書を使って事件とかかわっていくのが面白いなと思った。あと、科学的なものをちょっと取り入れてる感じで、そこで時代性を出そうとしたのかな、と。

ところで、与力・同心・岡っ引きの区別が実はいまいちわかってない。
柴田錬三郎が作中で説明してくれていたのはありがたかったです。出世して上の役職にいけるわけじゃないんだとか、金稼ぎの方法とか。
ふんふんなるほどと読んだけども、それでこのアンソロジーに出てくる誰がどの役職なのかが曖昧……。
役職が違うからといって、捜査方法や話運びが違うようには思えなかったんですよね。
ええと半七親分は岡っ引き?っていうか、親分って呼ばれる人は岡っ引きなのかしら。
あと、鬼平……火付盗賊改方は奉行所とはまた別の組織なのよね。たしか。

一回まとめてみます。
奉行所……北町奉行と南町奉行がいる。大岡忠相とか遠山金四郎とか。
与力・同心は町奉行所の実務担当官吏。
与力……上役。人事や訴訟などさまざまな仕事をする。馬に乗れる。
同心……与力の下。実際の犯罪捜査とパトロール(定廻、隠密廻、臨時廻)は同心の仕事。
岡っ引き……同心の手下。さらに子分を抱えていることも多い。もと悪党だった人を使うことが多い。他の仕事も持っている。

この理解でいいのかしら。


この間読んだゲド戦記じゃないけれども、女性の書き方が……なんていうか。
作中の時代的にも書かれた時期的にも、ポリティカル・コレクトネスとかない時代なので、疎外されてるのは別にいいんですよ。
しかし、あまりにも都合が良い存在でしかないのではと思ってしまう。
男にとってというよりも、物語にとって都合が良い動きしかしていない。
女だからといって、そんな簡単に騙されないんじゃないか、そこまで精神的に弱くないだろうと思うんです。
あとたとえば主人公の情人みたいな女性たちについては、主人公のかっこよさがいまいちわからないから都合良く感じるんだろうと思いました。浜吉とお時は、知り合って懇ろになるまでの過程がが丁寧だったのがよかった。
お梨江嬢がとても好きです。都合良く使われてなるものかという心意気が素敵。さすが新時代の女性。

いやでも、よく考えてみると女性以外も結構事件のためのコマでしかない感じがしました。
枚数に制約がある短編だから、事件関係者側を掘り下げられないとそうなるのかな。



各短編の感想。
「半七捕物帳 お文の魂」
再読になるけれども、やっぱり好きだなぁ。
怪異が合理的に解決されることも、なんとなく上品な雰囲気も、とても好み。
そして他と比べてもちゃんとミステリ的な謎解きをしていることに驚きました。

「右門捕物帳 南蛮幽霊」
これは……正直、微妙。
話がどうとかいうより、伴天連の魔法って何?ってなって、ついていけなかったです。そういうのがある世界なのか。

「銭形平次捕物控 赤い紐」
かの有名な銭形平次。銭を投げるシーンがなかったのが残念でした。
地味だけど、わりとロジック的なところをちゃんと書いている感じがしました。
江戸の祭りの雰囲気もよかった。

「若さま侍捕物帳 お色屋敷」
若さまはいったい何者なのかしら。身分の高そうな放蕩者が探偵を趣味にする、貴族探偵的な話ってのは国や時代を問わないんだなって思いました。
話運びもそこそこおもしろいんだけど、この若さまが何をしたいのかの方が気になった。
タイトルで犯人やら動機やらがわかってしまうのは問題ないのかしら。
ちょっとおかしみのある文章は好きです。

「顎十郎捕物帖 捨公方」
久生十蘭はこの作家陣の中ではミステリ寄りの作家というイメージだったんですけど、ミステリでも捕物でもなかったですね。
将軍には生き別れの双子の兄がいて、それを擁立しようとする側、阻止しようとする側の勢力があり、顎十郎はどちらの陣営よりも早く将軍兄を見つけないといけないという筋書き。将軍兄がどこにいるかというのが一応謎ではあるけど、謎解きよりも冒険がメインな感じのお話しでした。
顎十郎の行動も行き当たりばったりで、歩いてたらたまたま手がかりを得てってのが何度も続くご都合主義展開。
最後の幕切れもちょっと唐突というか、ページがなくなったのかなと思った。
将軍や老中の名前は実名で出ていたのはおもしろかったです。

「明治開化安吾捕物帳 舞踏会殺人事件」
かつてアニメをやっていたときに読んでいたものの、内容は全然忘れ去ってました。
こうして他の捕物帳と比べてみると、かなりミステリ度の高い方だったんですね。
真相そのもののトリックもだけれど、推理合戦のような構造も。

「加田三七捕物そば屋 幻の像」
明治時代、元八丁堀同心のそば屋が昔取った杵柄で捕物をする話。
これはかなり好きでした。
導入と事件が結びついていて、トリックが文明開化の時代っぽい雰囲気が強くて、遊郭に出る幽霊というのも雰囲気があっていい。
江戸の幽霊や遊郭は、近代によって駆逐されてしまうのだろうか。

「貧乏同心御用帳 南蛮船」
タイトル通り、貧乏な同心が孤児を養いつつベイカーストリートイレギュラーズのように捜査に協力させるという話。
上にも書いたけど、同心の職掌や身分についての説明が多くて助かりました。
地の文はちょっと遠くから見ているけど、情のようなものが立ち上ってくる感じでよかった。
事件の掴みもいい。次々と女性が行方不明になり、その後に黄金の仏像が残されている。調べに乗り出すと、見知らぬ賊に襲われる。いったい何が起こっているのか、と興味を惹かれる。
旗本屋敷に招かれたシーンで、主人公の力量が読者にはっきり示されるのもうまい。
事件に関しては、そんな楽土はないだろうと思うので、体のいい人身売買ではと思ってしまい、その真相まで探ってほしかった。

「岡っ引き源蔵捕物帳 伝法院裏門前」
嫉妬深い夫から暴力を受けていた妻は間男とともに夫を殺そうとしていたが、間男と夫が行き合い、夫が脚を怪我することになる。数日後、間男と妻の死体が伝法院裏門前で発見される。という話。
風呂屋での会話から真相糾明するあたりが捕物帖っぽかったです。そういうイメージ。
夫も間男もどっちもクズだった。

「風車の浜吉捕物綴 風車は廻る」
元は同心だったが江戸払いになった浜吉が風車売りとして江戸に戻り、懇ろになった料理屋の女を巡って侠客と決闘する話。
ミステリではないどころか、事件も謎も何もなかった。
シリーズ1話目で、登場人物紹介とか導入の意味が強い作品だからだろうと思いますが、ちょっとびっくりしました。
そのせいか他の作品に比べて、群を抜いて「人間が描けている」印象だった
巻末の対談を読んだらこの後の展開についても語られていて、普通に事件とかも起こるらしいのでそれも読んでみたい。

「神谷玄次郎捕物控 春の闇」
藤沢周平。意外にも推理小説っぽい話だった。
先頃、娘が婚約者からもらった簪をなくしたという訴えがあった商家で、今度は奉公人の一人が殺された。捜査を始めると怪文書が投げ込まれ、簪が見つかる。
まあこの手のパターンは犯人の見当がつきやすいけど、ちゃんと捜査して推理して張り込みして犯人を捕らえるという手順だったので、ほっとする。
雰囲気も艶っぽくてなんとなく上品で好き。最初の部分とかすごい。
実働が神谷玄次郎自身ではなく、その下についている岡っ引の銀蔵なのが、そういうものなのかと思いました。足を使う捜査は岡っ引にさせて、ここぞというときだけ同心が出てくるのか。

「耳なし源蔵召捕記事 西郷はんの写真」
全編関西弁で展開していく語りが軽快で楽しい。
西南戦争真っ最中の大阪で、西郷隆盛ほか賊軍の将軍の写真が夜店で売られていた。しかしそれは別人を写したものだった、という導入はすごくおもしろかったです。
誰が何故そんなことを、と引き込まれる。
それに対して真相はなんとなくすっきりしない。謎のわくわく感に対して、犯人がどうもしょぼいんだよね。もうちょっと陰謀めいたものを期待してた。
あと、主人公がどうも気に食わない。調子のいい自己中心的な親父といった感じ。憎めない感じだし、大阪のおっちゃんというイメージではあるが。好きじゃない。
これ、西郷だけは当人あるいは関係者の可能性もあるのかしらという余韻はよかったです。

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