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妖怪と神話とミステリと甘いものが好き。腐った話とか平気でします。ネタバレに配慮できません。

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2024/05/02 (Thu)

『招キ探偵事務所 字幕泥棒をさがせ』

高里先生の新作。
これがタイガから出るってことは、やっぱりラボは打ち止めなのかなー3巻でせっかく面白くなったのになー残念。
というのはおいといて、すごく好きな物語でした。
連作短編かと思ったら一冊でひとつの話を追うタイプで嬉しい。個人的には高里先生の小説はキャラクターとの経験の積み重ねによってどんどんおもしろくなると思っているので、長編の方が好みなんです。

ふわっとした雰囲気で、読んでいて幸せになるお話でした。
それに普通に謎を追う話として読んでいて楽しかった。

まず、謎の設定がおもしろかったです。
上映中の映画に、映画とは異なる内容の字幕がついていた。誰が、どうやって、何のために?
見当もつかなくてわくわくする。字幕の仕組みとかについてのちょっとした豆知識もあって楽しかったです。
で、捜査をしていくと当初の予想よりも大きな事件っぽくなっていくのも読んでいてハラハラする。

高里先生が書く黒根くんみたいなキャラクターがすごく好みです。石漱くんとかもこの系統の気がする。
なんか今回モブ含めてキャラクターが全体的に濃かった感じがします。なんていうかマンガのキャラっぽい感じのキャラの濃さ。武見さんとか知糸さんとか海老塚とか。
結仁くんもかわいくて好き。ところでこの姉弟、名前がモノとユニなんですね。
名前といえば、プレアデスじゃないのが地味に気になった。昴は執事に出てくるからかぶらないようにしたのかしら。

探偵役と助手役と警察の関係性が、他のシリーズとも全然違うけどみんな違ってみんないいみたいな感じ。
ラスト1行の破壊力やばくないですか?

「探偵がするのは事実の解明」と言いながら、事件の原因にさかのぼって解決することも、その提示した解決も、高里先生らしいやさしさにあふれていてなんとも言えず良かったです。

表紙もかわいいですよね。
ふわっとした人物のイラストと、古き良き映画館(イメージ)みたいな表題の入れ方。作中で言及が多い文字組やフォントを、外側でもこだわっていそうな感じ。


この作品で一番面白いと思ったところがめちゃくちゃネタバレになるので、というかそれを言うのすらネタバレなんじゃないかと若干不安になってきた。
とりあえず続きから。ネタバレ注意。



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つづきはこちら


ええと、この小説の核心部って「探偵がどちらかを隠していた」ところじゃないかと思うんです。
叙述トリックというには明らかに伏せていて怪しすぎるけれども、一応初めの方は 雪穂=探偵(役)、黒根=巻き込まれた助手(役)? という風に思わせるように書いてあった。
でも読んでいるとどう考えてもどっちも探偵にも探偵役にも見えないし、黒根くんは捕まっちゃうし。主人公だし犯人ではないだろうけれども若干語り手としては信用できないよな、みたいな感じで読んでいた。
それが、第2章のラストでそれぞれの身分が明かされるところがめちゃくちゃ熱かったです!
それで、ああなるほどあのときのあの表現はそういう意味だったんだと腑に落ちる感覚がとても気持ちいい。

地味に、最初の方の最後尾札のシーンがおもしろかったです。
最後尾札があるだけで、殺到していた人たちが統率されるっていうソリューションが、なんていうかすごく単純だけど効率的に場を解決していておもしろい。
そのシーンがあったから、雪穂の方が探偵なのかもっていう漠然とした予想に根拠が生まれたような気がしました。

あと、個人的にものすごく好きだったのが、地の文が3人称1視点なんだけど、雪穂視点で書かれているときはフォントについての描写が多いこと。
これと似たようなことは「うちの執事」シリーズでもやっていて。1巻が特に顕著だったと思うけど、そちらでは花穎視点のときには色を細かく描写してたんですよね。さりげなく。
そういう細かいところがもうすごく好きで。
人の知識や興味によって、同じ景色でも見えているものは違っているはずで、それをそのまま地の文で表現している感じというか。そしてそれが物語上でもちょっとした役割を果たすのがもう最高。


一方で、主役二人が何者かを隠していたせいで若干情報が足りない感がするので、もっと黒根くんと雪穂先生について読みたい。
「あの時、折角生き延びたのに……」が気になりすぎる。
ぜひ続編出してほしいなぁ。
とはいえキャラクターの設定がこの事件に特化しすぎている気がするのでどうなんだろう。


最後に、小説の感想としては蛇足になりますが。
今回、あとがきに救われました。
ひとつのものを永続して好きでいることは義務ではないというお話。
ほかでもない、高里先生の小説自体に対してそういったことを悩んでいたので。好きでいつづけたいと思っていた。そうでなくてはならない気がしていた。好きなのは紛れもない事実なのだけれども、好きではなくなるかもしれない恐怖に襲われて、しがらみなく好きとはいいがたいことも分かっていて。
だから、疎遠になったとしても、その先の未来では今以上に好きになるかもしれないという言葉で少し気が楽になった。今好きでも未来の自分にまで「好き」を強いなくてもいいというメッセージに救われた。
それでも、タイミングが合って、読んで好きだといえる作品と多く出会えたらうれしい。
こういうことを書いてくださる方の小説だから、きっと好きなんだと思う。
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