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2024/04/23 (Tue)

『愚か者死すべし』

沢崎シリーズの第2部第一作。
ついに読み終えてしまった……。
悲しさでいっぱいです。
この先の物語がまだ世に出てないのがもどかしい。早く続き読みたい。


『さらば長き眠り』を読んだときに、沢崎が時代の流れに取り残されることを思ってつらい、という感想を確か書いたと思うんですけど、そんな私の一方的な感慨をよそに作品内の時間はあっという間に進んでいましたね。
今回はたぶん2000年くらい?
沢崎はともかく、登場人物たちが携帯電話を使うようになっていたのに驚いた。
世紀が変わっても沢崎が変わらずにかっこいいままだったので、多少安心しました。

でも、物語はちょっと求めていたものと違う方向に行ったなぁ、と感じてしまった。
何が気にいらなかったっていうと、暴力団だとか、政治だとか、社会の暗部に切り込むような話。
まあ『そして夜は甦る』だって都知事選で起きた事件がメインになっていたし、渡辺との関連で暴力団は最初っから出てきてたんだけど。
短編集でも選挙活動の話はあったし、スパイの出てくる話もあったし、渡辺の息子は学生運動やってたし沢崎は反権力的な性格だし。そういう社会派的なテーマは、もしかしたら作者が興味があることなのかもしれないですが。
なんかでもそれは、ここまで物語の中心的な位置にはいなかったと思うんですよね。
事件や沢崎の人生の背景ではあるけど、物語の中で焦点が当たっているのは、今事件の捜査をしている沢崎だった。
今回は事件の捜査の過程でどうしても前景になってきてしまっていたので。
うーん、21世紀には沢崎の活躍できる場所は、そういう裏社会だけになってしまったのだろうか。

あとやっぱり暴力団とか狙撃犯とか出てくると、キャラクターの生死を心配してしまうんですよね。
沢崎のシリーズは私が思っていたよりは虚しい人死にが少ない、と今まで読んで分かっていてもキリキリハラハラして疲れる。
ある程度情報が出て親しみを覚えた登場人物に対して、この人はここで沢崎と別れた途端に死ぬのでは?と何度思ったことか……。


だからというわけでもないと思うんですけど、サスペンス要素強めで推理シーンは少ないように感じた。
そして、沢崎のかっこいい発言(台詞地の文問わず)も少ないような気がした。
期待しすぎていたのかもしれないですが。
いや、生き様がかっこいいのは相変わらずなんですけどね!仕事を探す知人女性への粋な計らいとか、その直後に善意を利用した自己嫌悪に陥るところとか、すごく沢崎らしくて好き。


微妙に文句っぽいことを書いたとはいえ、3つの事件が別々に起こり互いに目くらましになっていた構造はおもしろかったです。
そもそも事件がいくつあるのかも、何と何が同根かもわからずに捜査をしていくところから、徐々に絡み合ったものが解けていってそれぞれの真実にたどり着くところが良かった。
今回の事件は、沢崎は全体としては依頼を受けて動いていたわけではなく、巻き込まれたという立ち位置だったのが、サスペンス風味が強かった理由なのかもしれないとふと思った。
依頼人がいなければ、推理を披露する場もなく、今回は犯人に推理を突きつける感じでもなかったわけで。
あーでも、『私が殺した少女』も巻き込まれて始まった話といえばそうか。

真犯人が犯行に至った大元の動機が明かされないままだったというのは意外でした。
あのシーンでの会話は『虚無への供物』みたいな、読者たちへの告発のような意図を含んでいたのだろうかという気もしていて、だとしたらすべてが明かされないのも納得できるんですけど。


ただ冒頭が少し読みにくかったです。
時系列順に書いていたときには敢えて伏せていて、後に必要になったときに明かすみたいな書き方を何ヶ所かでしていたので、「えっそんなことどこに書いてあったっけ?」って思って読み返すことがかなりあり、遅々として読み進められなかった。
その手法で隠されていたことが明かされても、驚きというよりはアンフェアで不親切な感じを抱いた。
中盤からはそういう読みにくさはなくなった代わりに、社会の裏にあるシステムみたいな話になってしまい、違和感が拭えなかったわけですが。


今回は出てこないのかと残念に思っていた錦織警部もとい警視補が、巻末掌編に出てきたのでにやにやした。
利用しようとする辺りとか依頼人に仕立てようとする辺りとかもう!もう!
良いですねー。

ところで、このシリーズには意外と高い頻度で同性愛者が出てくるのには何か理由があるのでしょうか。
いや、『私が殺した少女』のときは意外性が目くらましになってミステリ的に意味があったと思うんですけど。百合も同じ要素はあったけど。今回の人はそういうの特になかったじゃないですか。
沢崎はフラットな人だから、マイノリティに当たる人もちょくちょく出てくるんだろうか。今回も引きこもりを更生させてたり。自由生活者とも一緒に行動してたしな。車椅子の弁護士だって、そうである理由は特にないし。そもそも、暴力団員も日陰者なわけだし。
初野晴みたいに弱者に寄り添おうという雰囲気が強いわけではないけど、思い返すとそうなのかもしれないと思うところはありますね。
でも沢崎は億万長者やヤクザや社会的影響力の強い人に対しても同じ態度なので、弱者に優しいというよりもやっぱりフラットという印象が強い。弱きを助け強きをくじくことをしているけど、そういう甘い考えを持ってやっているのではなく、フラットでいると結果としてそうなるみたいな感じといいますか。
だから、情を隠しているけれども人間味ある人という感じで、とてもかっこいい。

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