おもしろかったー。
早く3作目出ないかな、出てほしいな。
だってこれ明らかに中継ぎですよね??
中継ぎっていうと言葉が悪いけれども、明らかにこの後回収されそうなものが出てきて、そのまま放置されている……。
今回不在だったあのキャラとかも、行方が気になりますし!
とにかく、続きが読みたいです。
前作、『図書館の魔女』(無印)から二年ほど経ち、ニザマ政変の余波に揺れるニザマ自治州クヴァンの港湾都市クヴァングヮンが舞台。
落ち延びようとするニザマの高級官僚の姫君と、彼女を守る近衛たちは山越えの道案内に剛力たちを雇い、港を目指す。ところが辿り着いたクヴァングヮンはニザマ追い出しに荒れ狂い、刺客が跋扈していた。
っていう感じの舞台設定。
前作でもそうだったけど、立場や生まれ育ちの違う者同士が、苦難の中で紐帯を強めていくのを書くのがすごく上手ですよね。
あの、3章の、みんなでご飯を食べるシーン!
あそこがめちゃくちゃ好きです。
このシーンで一緒に食事をとったことで初めて、剛力衆と近衛(特にツォユ)の心が繋がったところだと思うんですよね。
料理自体もおいしそうだけど、そのメニューが山賤らしい大根田楽とニザマ風の薬膳冬瓜湯なのが象徴的で、良いなと思います。しかもそれだけじゃなくて、隠し味の魚醤がまさか伏線になってるなんて……。
精神的な紐帯の話だけではなくて、立場が違うからこそ補いあえるのも良かったです。
入り組んだ港湾都市を攻略するのに、地下暗渠の道筋を知る「鼠」たちと壁を登って屋根上を道にする剛力衆の力を使っていたのが、読んでいてすごく楽しかったです。
近衛は迷宮のような路地で迷ったせいで仲間を大勢失ったので、姫君奪還をどうする?ってなったところで、三次元的な視点を持ち出すのがとてもわくわくした。
そしてワカンのキャラがとても良かったです。軽口をたたくけど、義に厚く、頭もまわる。またいつか再登場してほしい。
ツォユも良い人だし、ユシャッバ姫もお転婆でかわいいし、剛力に憧れる鼠たちもかわいい。
キャラクターがすごく魅力的でした。
1作目は2巻目からがすごく面白かったんですけど、今回は私は上巻の最初の方からかなり楽しかったです。むしろ下巻の中盤で中弛みした感じ。
何が起こっているのかは最後までよく分からないままなんだけれども、それでも山の生活の描写が楽しかったし、不穏な空気が漂っているのもはらはらどきどきして続きが気になった。話が進むにつれて、何が起こっているのか分からないままで右往左往している感じがあったので少し疲れてしまった。
あとマツリカが出てからは、もちろんマツリカの智慧で「何が起こっていたのか」はさくっとわかるのだけれども、話が重く感じてしまって。内容がシリアスという意味ではなく、話がまどろっこしい。それまで、率直に話す剛力衆や鼠たちの会話に慣れていたので、余計に。
明かされる真相というか、「誰が誰を」追っていたかというのはすごく意外で、おもしろかったです。刺客の獲物にも納得したし、「隻腕の売国奴」の正体にも驚きました。あと、愛人だったのかってのも。
というか、あの、カロイ!!!
初登場シーンでは、ちょっとあやしいけれども特に何も思わなかったけど、笛作ったりエゴンに手話勧めたりもう明らかに怪しいじゃないですか!
気づいてからは、にやにやしながら読んでました。
大活躍でしたね。
最後にワカンに名乗ったときは、もう感動というか、胸がいっぱいになりました。
その名前を名乗るんだ、っていうのが。
終盤に出てきたものすごく強そうな刺客、その強さを示すために「キリヒト並み」という形容を使っていたのがおもしろかったし、そう言うからには今後キリヒトと戦う展開もあるのかなと思うとひたすら楽しみです。
「図書館の魔女」だけでなく、近衛とキリヒトまでもが噂になっていたのはちょっとおもしろかったです。山賤までも知っているなんて、いったいどこから噂になったんだろう。
今回は出てこなかったキリヒトが今どこで何をやっているのかということも、とてもとても気になります。
この世界は何なのということについては、前作ほどもやもやすることはなかったです。多少慣れて、部分的に読み飛ばすようになったのもあるけど。キャラクターを楽しむ小説だと割り切ったところもある。
今日を生きるかというところで生活している山賤や鼠は、マツリカのようには歴史とか書籍とかに興味を抱かないので、世界の粗さが気になるようなところには触れられてなかったから。寺の経堂はちょっと引っかかったけど、仏教とは言ってないですし。
最終的に文字を知っていたから大逆転したんだという話運びは、「図書館の魔女」というシリーズでやっていること的には肝になることなんだろうなと思った。
説明は相変わらず回りくどいしわかりにくかったです。
エゴンが元いた島の生活様式みたいなところは面白かったんだけど。中州が実は中州ではないみたいな地質学的な説明とかは、結局回収されなかったし。
でもそれは私の興味が文化にあって地理は好きじゃないからだけかもしれない。
アクションシーンはやっぱり微妙でした。溝を走ったり屋根の上を駆け巡ったりは、普通に面白かったんだけれども、猿と戦うところが。。
何が起こっているか理解するのと、文章の勢いとが両立していないような感じというか。舞台が中華風の土地なので、それっぽい言葉遣いをしていることがさらに輪をかけている気がする。
テンションを高くスピード感のあるシーンにすると言葉が足りなくて動きが伝わらず、動きを分かりやすくすると文章が重くなってスピード感がなくなるみたいな。
中学か高校のとき漢文の授業で、王様が刺客に襲われる話をやったときに、短文の繰り返しでリズムを刻んでいるということを先生が言っていたけれども、未熟な私の読みでは読み下して意味を理解しようとするうちにそのリズムは消えてしまうんですよね。そんな感じ。……たとえが違うような気もするけど。
[1回]
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