忍者ブログ
2024.04 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

最新記事

プロフィール

HN:
睦月
HP:
性別:
女性
趣味:
読書
自己紹介:
妖怪と神話とミステリと甘いものが好き。腐った話とか平気でします。ネタバレに配慮できません。

カウンター

リンク

ブログ内検索

アクセス解析

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2024/04/24 (Wed)

『仏陀の鏡への道』

ニール・ケアリーもの2作目。

イギリスの田舎で隠遁生活を送っていたニールは、姑娘に惚れて会社を出奔した化学肥料の研究員を連れ戻すように命じられ、帰国。
美しい中国人女性(と化学者)の足取りを追って、ニールは香港、中国にまで潜入する。

以降、結末に関するネタバレがあるかもしれません。


プロットが前回よりも凝っていて、ストーリーはおもしろかったです。
アンフェアじゃないかと思ったところはあったけど、うーん。犯人は誰かみたいな本格ミステリではないので、そこまでフェアアンフェアを気にする性格の小説でもないんだろうなとも思うんだけど。気になってしまう……。
それに、読者にとってはこれ、主人公よりも先にどういうことかなんとなく分かってしまうよね?
その辺のバランスが、普段読むものと違うので、どうにも据わりが悪い。

「朋友会」や依頼元のカンパニーだけじゃなく、中国マフィアやら共産党員やらいろんな立場の人の思惑があって、登場人物たちは他の人たちの思惑を知らないけど、読者は書かれていることは全部読めるんですよね。
そんなわけで、ニールがずっと誰かの掌の上で踊らされているのに本人は気づいていない感じだったのでもどかしかった。
基本的に今回のニールは、美女に惚れたせいで腑抜けていたと認識してます。
だから捜査シーンのおもしろさや皮肉まじりの文章の鮮やかさは1巻目のほうが断然良かったです。

でもラストシーン(エピローグの前)はめちゃくちゃよかったです。
伍さんとニールの友情とグレアムの親心が同時に伝わってくるシーンで、これ考えたの天才的じゃないかと思う。
ハックルベリー・フィン読みたいです。読んだことないので、サリーおばさんが誰か気になる。

もしかしてこのシリーズって、いつも最後はニールがどこかしらで隠遁生活を送りはじめるオチなのかしら。


ところで今回ニールが香港に行ってたんですが、1977年の香港といえば「借りた場所に」(13・67)がちょうどこの年ですね。
作者もその立場も書きたい物語も違うので、同じ年の同じ国での出来事だからといって何というわけでもないですけど、地名や街の風景の描写に見覚えがありました。
小鳥の喫茶店とか、13・67にもあった気がするけどうろ覚え。
この裏で廉政公署が汚職と戦っているんだなと思うと、なんていうか背景に奥行きが増すような気がします。

というか、この時代の中国と香港の描写がすごく細かくて、ウィンズロウ何者なんだろうって思うレベル。
中国近代史も、そのシーンの語り手の目を通しての描写ではあるけどひと通り書いてあって、毛沢東の政策、そしてとどめの文革の回想に息苦しくなる。

李藍の過去の話は、本当に李藍にあったことだったと思うんだけど、ひとつ気になるのが、寺に行ったのは、どちらだったんだろう。
峨眉山でなんとなく初めてじゃなさそうな雰囲気があったのでちょっと気になった。
というか、彼女の物語も知りたかった。母の死の後、何を思っていたのか。自分の望んだ集団の中で、あるいは獄中で、どういう気持ちだったのか。
悪い人ではなく、弱かっただけなのだと思うから、その考えを知りたい。
あの行動は辛いけど、それがある意味では「普通」だった、その状況こそが悪だと思うので、自分も似た状況に置かれて李藍のようにいれる自信はないので、弱かった人の物語も語ってほしい。


前巻は人が死なないミステリ( )だったから油断してたら、今回はわりと軽率に人が死んでいてちょっとしんどかったです。
といっても実質物語中で人数はそこまで多くないんだけど、暴力団の下級人員が使い捨てられるみたいなかたちでの死は、しんどさが増す気がします。
あと、直接は書かれなくても近代中国史が想起させる膨大な人民の死が重くのしかかっている。
腕時計のやり取りはいわゆる死亡フラグだったんだな。あれがあったから、最初の死のインパクトが大きかった。
それは私だけじゃなく、ニールにとってもだと思う。それがその後の物語を動かす契機になったというのが、巧みで好きですが。
しかしまさかあの人が最後に出てきて死ぬとは思わなかったよ。かなりのサプライズでした。
そういえば登場人物一覧に名前あったわ。それでか。
いろんな衝撃で、その死についてはあんまりニールがショックを受けてなさそうだったのがちょっと意外というか残念。

九龍城塞で囚われて阿片漬けになったシーンもなかなかにつらかった。
前巻にいろいろ出てきた覚醒剤・麻薬より重そうだったけど、意外と簡単に抜けるもんなんですね。それはフィクション的ご都合主義なのかしら。


最後に楽しかったところの話。
成都観光案内は読んでてほのぼのしました。披露される知識にもなるほど、と思った。蜀って現在の地名だとあの辺なのか。
あと中華料理おいしそう。
アメリカ人であるニールの目を通して説明しているので、もとのかたちが想像できそうなそうでもないような、絶妙にファンタジーの食べ物感がありました。
麻婆豆腐ではなくて、スパイスのソースであえた豆腐みたいな言い回し。
餃子につける辛い胡椒のソースって何だろう。
胡麻ソースの冷たい麺料理は、胡麻ダレ冷やし中華を想像していたけれども、もしかして担担麺(汁なし)なのかしら。四川だし。
というか、作った料理から四川省の出身に違いないって推理が途中で挟まれていて、ちょっとおもしろかったです。確かに麻婆豆腐は四川料理だし、中国は広いから中華料理って一口に言っても場所によって全然違うと言うけれども。なるほど!という気持ちと同時に若干そんな簡単でいいのかと拍子抜けした。
まぁそれは全然メインでもなんでもないので、だから大丈夫なんだと思うんですけど。

拍手[0回]

PR
Leave a Reply
name
title
color
mail
URL
comment
password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ観覧可