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妖怪と神話とミステリと甘いものが好き。腐った話とか平気でします。ネタバレに配慮できません。

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2024/05/08 (Wed)

『ストリート・キッズ』

なんでタイトルは複数形なんだろう。

すごくおもしろかったです。
元ストリートキッズのニールが探偵から捜査術などすべてを教わり、大学院に通いながら探偵として活動する話。
まず何より、文体というか雰囲気というかがとても好きです。
三人称ではあるのだけれど、だいたいの視点人物は主人公であるニールなので、彼の考えがよく表れているんですね。それが、皮肉の鎧をまとった内側に幼時のトラウマや23歳なりの爽やかさを感じさせる文章ですごく良かったです。読みやすいし。
地の文の皮肉とかの感じはアドリアン・イングリッシュに似ている気がしたんですが、異論は受け付けます。キャラクターの性質や物語のジャンルは全然違うけど。

そんなわけで、これもハードボイルドだよって言われて驚いた。
そうじゃないものもあるらしいけど、基本的にはハードボイルドってタフでマッチョな男の生きざまみたいな話だと思っていたので。
ニールはタフでもマッチョでもないし、喧嘩は弱いし英文学を研究してるし。評する形容詞は「かっこいい」ではない。
でも私にとってはむしろ、タフでマッチョな男らしい男よりも、喧嘩が弱くて文学が好きで精神的に柔らかいところがあっても筋が一本通っている青年みたいなキャラクターの方が、親近感があって好ましいのです。

少年が探偵と出会って、生きる術や探偵術を教えてもらうという話なので、以前読んだ『初秋』を思い出したんだけれども、こっちの方が全然好みなのもそういう理由なんだと思う。
スペンサーも強い男だから。
あと、探偵術講座のシーンがすごくよかったです。
尾行の仕方や、ものの探し方、姿の消し方なんかを実践的に教えていて。意外とそういう捜査のノウハウを学ぶシーンって読むこと少ないなって思いました。
最近読んだのだと、円居挽のカタリは人工的な問題の解き方なのでまたちょっと違うし。

だからニールやその師匠のグレアムは捜査する探偵であって、推理する探偵ではないんですよね。というよりもこの話が、謎に対してロジックがあったり伏線が張り巡らされたりした本格ミステリではなく、行方不明の少女の居場所を足で探すタイプのミステリでした。
だからあっと驚く展開もほとんどない(父親には驚いたけど、あれも推理で知りえたわけじゃないので)し、少女を発見したのも結局は偶然みたいなものだったわけですが。
だけど、甕の水を移すように伝授された捜査方法があってそれに基づいて計画を立てて捜査をして、という部分はすごくしっかりしていたのでおもしろかった。
待ち伏せは徒労に終わったけど、文章がとてもよいので、何もせずに暑いロンドンをぐるぐる回っているだけみたいなシーンもすごくおもしろかったです。

アリーとの小屋生活のシーンもわりと好きだった。
母親の影を重ねるあたりが、切なくて胸がいっぱいになりました。
羊飼いのおじいさんが死ぬんじゃないかと若干はらはらしたんですけど、そういえばこの話は誰も死ななかったですね。よかった。
最近良い人が死ぬ話はちょっと重く感じるようになってしまって加齢を感じています。

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