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2024/04/23 (Tue)

『一鬼百歌 月下の死美女』

平安京が舞台なので、てっきり平安時代のお話だと思ったんですよ。
「武士が台頭してきた動乱の世」っていうから、承平天慶の乱のあった10世紀前半くらいかなーと思っていたわけなんですよ。だから手に取ったというのもある、摂関政治がまだ全盛期になる前の時代に興味があるので。
読み出してわりとすぐにそれが誤解だったと気付きました。
台頭してきたっていうか、すでに都での戦争も終わって東国に幕府開いてんじゃん!
たぶん1190年くらいかな。後鳥羽天皇が11歳の頃。
とはいえ、貴族の家の対立とか後宮での努力と駆け引きとか雅やかな雰囲気とか、平安京を舞台にした物語に望むことはだいたい描かれていたので、思っていた時代と違ってびっくりしただけで物語自体はおもしろかったです。
読んでみたら、この時代だからこその話という感じもしましたし。

主人公は希家という名前だけど、御子左家の人で官職的にもこれは定家ですよね?
主人公の父親の名前が春成(しゅんぜい)だったり、あえて字を変えているんだろうけど。
だったらなぜ御子左家はそのままなのか。
二条院讃岐もそのまま出て来るのは、鵺の話で源三位頼政のエピソードがあるからかなぁとは思うけど。
曖昧にするところと、史実や伝説をそのまま使うところと、直接的にはいわないけど歴史知ってたら察することができる程度には書かれているところとがあって、Wikipedia見ながら真名を推測したり、どこまでが実際にあったことなのだろうと推測しながら読んでいました。
行幸はあれば記録に残ってるはずだけど。鵺の怪異とか帝の癖とかはどうなんだろう。
あと、「名にしをはば逢坂山の真葛」の歌の解釈が、私はすごく衝撃的でなるほどって思ったんですけど、現代や12世紀末当時の解釈にそういうものはあるのかが気になりました。


あらすじ。
歌人の家に生まれ、和歌のことにしか興味が持てない貴公子・希家は、詩作のため吟行していた夜、花に囲まれた月下の死美女を発見する。そして御所では、姿の見えない「ぬえ(空鳥)」の鳴き声が人々を震撼させ、ぬえに食われたような死者まで現れる。怪異譚を探し集める宮仕えの少女・陽羽と出会った希家は、凸凹コンビで幽玄な謎を解く。


一番最初の事件で、和歌のことしか考えていない変人が和歌のことを熱弁していただけなのに犯人は自分の犯行を見透かされていると思って自首しちゃう、というのがすごくおもしろくて、こういう話が続くのかなとわくわくしていた。
そしたら連作短編ではなく最初の事件もひとつのストーリーの一角だった。
後半の方は、陽羽に押されて渋々ながらも自分から事件に関わっているので、そこもやっぱり最初の方が好みだったなぁ。

タイトルになっている死美女の美しさの描写は幻想的で好き。
そこから天香久山を連想するのはさすがに飛躍が大きく感じましたが、だからこそ変人っぽさが際立つ。

鵺(空鳥は変換できない)の怪異は、この時代にその登場人物たちでやったらそうなるよね、みたいな感じでした。
怪異と言いつつ、作中で起こることは全部人為的な事件だったのが意外な感じ。
聖霊狩りとか闇に歌えばとか好きだったので、オカルトというか、怪異は「ある」話だと思ってたんですよね。
まぁ、源三位頼政が倒した鵺の正体については言及されていないので、「ない」世界観かどうかは観測されてないわけですが。
あるかないかはともかく、人々は信じているというのが前提になっているのはおもしろい。


桂木の君の正体には驚きました。
ちょっと前の時代に悪左府もいるので同性の恋人というのはともかく、それでも性自認は生物的な方と一致してるのが大半だったのだろうなと思うと、今との感覚の違いが不思議な感じ。まぁ現代でも性指向と性自認は別なんですけどね。
そういう人がいてもおかしくないけど、何か物語や記録残ってたりするのかしら。とりかへばや?
白妙の相手って、あー、と気づいてなんとも切ない気分になった。
そういう感じて、真実が明らかになってから読み返すと趣きが深まる部分が多かったように思います。

人は何人か死んでるものの生臭くなくあんまりどろどろしてなくて、ストレスなく読めてよかったです。
明らかに裏がありそうな人が犯人だったり、伏線というかフラグというか分かりやすくて。こういう描写があるってことはこういうことだよね、が違わずにある安心感。
とはいえ犯人も実行犯にすぎないんじゃないかとなんとなく感じている。
いつから、何のために、というところにドラマがありそうで、続刊で明かされるのが楽しみ。

中宮の心情も好き。
家のために天皇を愛し支えなくてはと思う反面、秘めた想い人を探してしまう辺りとか、いいですよね。


文章はかなりライトなので読みやすかった。ただ、「〜て。」「〜で。」で終わる文がちょっと多い気がして、そこはもうちょっと少ない方が雰囲気出て好きかなと思いました。

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