古処誠二、読むのはこれが2冊目です。(1冊目は『UNKNOWN』でした)
すごくおもしろかった……引き込まれた……んだけど、私、災害ものが本当に苦手で。必要以上に怖くなってしまって、ちょっと読むどころじゃなくなっていた。特に前半。ちょうど今頃の時期だなーとか思ってしまうとさ。読んでるときにふとスマホでニュース見たら熊本で震度5とか言ってたし。
そういうのも含めて、圧倒的な質量をもった、他人事とは思えない作品でした。
状況はすごくフィクションっぽいんだけどね。地震で崩落した地下駐車場に閉じ込められて、そこで殺人事件が起きるので。ある意味では究極のクローズドサークルって感じでした。
その状況のためかもしれないし、作中の登場人物の話運びによるところもきっと大きいんだけれども、自分たちで事件に対して推理する必然性が感じられた。
ときどきあるじゃないですか、なんで警察に任せず素人が捜査するんだって思ってしまう作品。それを回避するための舞台がクローズドサークルではあるけれども、今時わりとどこでも電波入るし。もっともこの作品2000年だから携帯も出てこないし、音楽再生機器もテープだけれども。
警察どころか救助がいつくるかもわからない、真っ暗闇で、より生き残る可能性を高めるために、死の真相を探ることは、とても自然に思われました。
2500人以上の死者を出した震災のさなかでも、たった2人が殺された事件がクローズアップされること自体がいわゆる「大量死理論」っぽくて興味深い。
『UNKNOWN』でも思ったのですけど、この人は事件とその捜査のシーンも読んでいておもしろいんだけれども、それよりも「なぜ事件が起こったのか」「その事件によってどうなるか」みたいなところや、社会(体制)への抗議の方に重心あるのかなぁ、と。
ミステリ的なところや物語的なところに違和感を抱かせるほどではないので、そのバランス含めて好ましく思う。
でもそういう社会派的な(?)ことが事件の骨格に密接にかかわってきているわりには、根底では人間存在というものを信じている人なのではないかとも思った。希望が残る感じのラストだったから。
とはいえまだ2作しか読んでないので作家について語るのはたぶん違うと思う。もっと読みたい。あまり怖くないものを。
[0回]
つづきはこちら
城戸殺しの犯人は二択から絞り切れなかったけど、「待ち合わせ」みたいなことがほのめかされた時点(というより死体発見時小谷がカメラを持っていたとき)で想像はついていたし、想像してしまった時点でやりきれなさを感じた。でも実際そうだと確定してしまうとつらいものがある。「地下駐車場事件」だけじゃなくて、その背景となった宮下の話含めて解決されるの、「あのときの言動は~」みたいな説明がたびたび入るのが少し(あくまで少しというのが重要)メタで好きでした。こっちの犯人はわりとわかりやすくクズで、読者として溜飲が下がる感じ。こういう、法で裁けない罪や社会正義的殺人の話になると考え込んでしまうけれども、
私個人としてはどこかで読んだ(たしか薬屋だったと思う。座木さんの台詞だった気がする)「死んでいい人間はいても、殺していい人間はいない」という言葉に感銘を受けている。
PR
× Close