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2024/04/26 (Fri)

『インド倶楽部の謎』

有栖川有栖、国名シリーズ久々の新刊、しかも長編。
とはいえ、作家アリスシリーズとしてはコンスタントに短編集も長編も出ていたので、そこの感動はあまりなかったです。
実はいまいち国名シリーズとほかの作家アリス作品との差分がレーベルとタイトル以外に認識できてなかったりする。内容的に、あるいは有栖川先生の心構え的に、どの程度違いがあるものなんでしょうか。

あらすじ。
人生について、現在過去未来すべての予言が記された「アガスティアの葉」。そのリーディングに参加するべく、神戸異人館の一角にある〈インド亭〉に7人の男女が集まった。
後日、リーディングのコーディネーターの死体が海から引き揚げられ、またリーディングを受けたメンバーのうち1人もまた死体となって発見される。
その死は「アガスティアの葉」によって予言されたものなのか。

とてもおもしろかったです。

まずはネタバレにならない感想。
作品の舞台が主に神戸で、実在する場所にも言及されていたので、聖地巡礼したくなりました。
今年は(主に椹野さんの)小説を読んで神戸に行きたいと感じることが多い。
食べ物……はカレーとかインド料理とか中華とか食べてたけど、描写があっさりしていたので、おいしそうだとは思えど「同じものを食べてみたい」とはならなかったのですが。異人館街や南京町を歩いてみたいし、横溝正史生誕地の碑とか、うみねこ堂書林さんとかに行ってみたい。
私たしか『鍵の掛かった男』読んだときも中之島行きたいって言ってた気がする。


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何が好きって、このワイダニットがとにかく好みでした。
アガスティアの葉のリーディングから始まって、前世だのなんだの、オカルトめいた雰囲気が漂っていた物語で、そこのところをそう使ってくるとは!
この真相で説得力をもたせる物語力というか雰囲気づくりも着実に積み重ねてきているのだろうと思うんだけれども、そこを分解して分析するだけのちからはないので。
アリスと同じく、前世は完全にミスディレクションだと思っていたので、驚かされてインパクトが強い。
そして、私は前世……に限らず、幽霊でもUFOでもオカルト的なことは、物理現象としては存在しないと思っているけど、人がそれを信じてしまうことはありうる(そのときその人にとって真実となりうる)と考えている立場なので、そういう立ち位置の推理になんとなく嬉しい気分になりました。
前世云々抜きに身も蓋もないこと言うと、自分を主役にするのはいいとして、明らかな脇役を設定したらそりゃ恨まれるよね、と思わんでもない。自業自得、因果応報――という言葉も輪廻思想によるものですが。

まぁ犯人あてにおいて動機はあってないようなもので、人の気持ちなんて伺い知れないのだから論理的に推理をするなら、ほかにも決め手が必要なわけですが。
犯人と指摘された人物が「犯人である条件を備えた唯一の人物」だったというところのロジックも良かったです。前世とか予言とかのファクターがあって曖昧模糊としていた事件の本質が、火村が事件の本質を言い当てたことで焦点が結ばれ、霧が晴れていく感じ。
全然頭を使って読んでなかったので、指摘されて初めてなるほどってすっきりしました。
そういう、言われてみれば確かにその通りだけど目くらましにはられた異国的な香りに幻惑されていたなぁみたいなロジックが最終的なそれだけではなく、事件捜査中にもいくつかあって、それも好きです。
予告された死の真相とか。

動機といえば、とある登場人物が神戸に来た理由が、某有名作を思い出してにやっとしました。

入れ替わりかなというのはなんとなく想像できるけど、それがすなわち真相じゃなくてその先にあるのもおもしろいのですが、そういう二重底な話であることが、川崎重工の話で示唆されていたのがおもしろい。
伏線とも違うけど、こういうの何ていうんだろう。
ちなみに私もこれで読むまで川崎市発祥だと勘違いしてました。

読み終えて気づいたんだけど、第一章で花蓮がカラオケで『前前前世』を歌ったという描写があったのも伏線というか、テーマを補強するパーツのひとつだったのかなって。
2017年が作品の舞台とはいえ、有栖川さんはあんまり流行りものをそういうかたちで固有名詞だして書かない人のような気がしていたので。
だからむしろ、そこが繋がるんだと気づいて納得した。
人間50年でざっと計算して、前前前世はちょうど150年くらい前かしら。
――と思ったら、犯人がインドアレンジで歌っているのを想像してなんだか笑えた。

流行歌のタイトルもあんまりらしくないイメージだったんだけど、それに輪をかけて、今回今までの事件への言及が多くてそれも珍しいように感じました。
やっぱり国名シリーズとしては10年以上空いているから、それでなのかなと思ったんだけど。
あまり熱心なファンではないので、言及される火村評の出典がどこだったか思い出せなくてもやもやする。読み返したい。鮎の塩焼きの話もどこかにあったんですっけ? 「9月の事件」は船長のやつかなとは分かったのですが……。
アリスが今までのフィールドワークにタイトルをつけていたというのは、なんとなくメタ的な気がして好きじゃないです。
いや、入れ子構造になっているこのシリーズでメタ的も何もという気がしなくもない。けど、うまくいえないけどメタレベルが違う気がして嫌なんです。
作中のキャラクターが作中で実際にあった事件を俯瞰していることへの違和感。
タイトルをつけることは自分から切り離している感じがするので、実際にその場にいて被害者や犯人に直接会って感傷を抱いたりしたのが嘘になったような気がしてしまう。
誤解を招く表現でいえば、小説にして発表するわけでもないのに、立ち会った火村のフィールドワークすべてにタイトルをつけている有栖川有栖(作中)、いくらなんでも変人すぎでは。ってことになるのかなぁ。
あと説明されずともタイトルを聞いてどの事件がわかる火村も大概やばい。
本家クイーンのインド倶楽部に関する話をするにはそうするのが都合よかったのかもしれないけど、どうにも苦手でした。

それにしても、今回のMVPは野上さんでしたね!
重要な手がかりを手に入れた功績はもちろんですが、キャラクタの掘り下げもあって、なんというか影の主人公的な愛おしい感じ。
警察の仲間や妻に遠慮しながらも温泉に入る野上さん、あそこの妻および家族への思いが少し古い警察小説っぽい(イメージ)で、似つかわしくてよかったです。
そしてアリスにコーヒーをくれたシーンでは軽く感動しました。
あの野上さんが!ついに!デレた!

「ソウルメイト」とか「カレー友だち」とか、パワーワードが続出した今回の火アリですが、私的に一番熱かったシーンは、佐分利と前世について議論していたところです。
あそこでさりげなく交替して話していたところに、背中を守りあって戦う相棒感を感じて萌えた。
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