大学サークルの同期と先日あったときに、「売れないかもしれないけれども正しい本だ」と猛プッシュされて手に取ってみた本。
あのときああいう風にダイレクトマーケティングされなければきっと読んでいなかっただろうと思うので、彼女には感謝しています。
すごくおもしろかったです。
とりあえずあらすじを引用。
中萱梓。愛称アズ。見た目も成績も地味なのに「なんか援交だか売春だかをやっているらしい」という噂によって、クラス全員に避けられている。彼女があの時男を連れ込んで、俺が台所にいて、まあいわゆる修羅場になったせいで、魔法少女やらおにぎりやらが出てくる奇怪な事件が始まったんだが、そんなのは些細な話だ。俺が誰かも気にしなくていい。だけどどうか彼女の話を聞いてやってくれ。世界を巻き込む危険で切実な恋愛小説、登場。あらすじは全然この物語のすべてではないのだけれども、じゃあどういう話かというのは、(ネタバレしないようにだとなおさら)うまく説明できない。数少ない読書経験から拾い上げるとハルヒ一人称の『涼宮ハルヒの憂鬱』みたいな?……全然違う気もするのだけれども。
地味で刹那的に生きていた女の子が、恋をして仲間を得ていく話……なのかな。
ただ、ストーリーというか、「起こったできごと」が重要な物語ではないのだと思う。
もちろん、ちょくちょくサプライズがはさまれるのは読んでいて楽しいし、あらすじの「俺」が誰かに思い至った瞬間はちょっと鳥肌が立ったけれども。
この小説の一番の魅力は文章かなと思います。
地の文がアズの一人称なのだけれども、一文がすごく長くて全然改行がなくて、目が滑るといったらまあそういう部分もあるのだけれども、リズム感と勢いがあって文章を読んでいて心地よい。
舞城みたいな……というより、軽さもあって「薔薇のマリア」のマリア視点の文も思い出したり。
キャラクターでいうと、サワメグが好きです。
若干、消去法的な選び方であることは否めないけれども。
だから、続編がサワメグとアズの出会いの物語で、たぶんサワメグ一人称なのかなと思うので、とても楽しみにしている。
彼女の決意を読みたいと思う。未来の可能性を売ってまで抜け出したいと思っていた場所も。ああ、そういうところがたぶん登場人物で一番、感情移入しうるから、好きなのかもしれない。
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サワメグだけではなくて、松川さんや穂高センパイやネジも、あとアズのお母さんやお父さんも、主人公になりうるポテンシャルをもっている。けれども、「おにぎりスタッバー」はアズの物語だから、ほかの人たちはアズから見える範囲でしか語られない。
これから、もしかしたらそういったほかの人たちが主人公で続編が次々と書かれていくのかもしれないけれども(カクヨムは読んでいないのでよくわからないけど)。
なんかね、そういうところは好きだし、主人公以外のキャラクターもこの物語のために作られたのではなくて広がりがありそうなところは好感がもてるんだけど、もどかしくもある。
結局、魔法少女とかおにぎりとかエクスカリバーとか境界って何なのよ!
っていうところが、気になってしまうのです……。
この世界は何なのか、いや場所自体は現代日本なのだけれども、普通に魔法とか鬼とかがあるので、そういったところの設定を、物語中である程度説明がほしかったと言いますか。
「おにぎりスタッバー」という本はこれで完成されているので、たとえばアズにとって当たり前のことは説明されないということでいいんだけど。
読者としては、説明がほしい。けどそれをどうやって盛り込むとうまく収まるのかがわからないです。
続刊が出続けたらいずれエクスキューズがあるのでしょうか……。
まあ単純に、ほかの人視点だとどういう話になるのか、読んでみたいです。全然違うものになりそうで。
『ハルヒ』っぽいと思うのはきっとそういうところ。
あと個人の友情や愛情が世界を救うのとか、セカイ系って感じで。
カスタードクリームケーキ食べたい。
そういえばカスタードクリームケーキって確かにあんまり食べたことないわ。
あと、読み終わってから調べたら章題がわりとそのままだった。うまいこと騙されていた感がすごいです。
おにぎりってそういう!
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