なんというか、ここのところ立て続けに出ていて、それぞれの読んだときのテンションをくらべてみるとやっぱり私にとってはこのシリーズはそこまででもないのかな、と寂しい気持ちになった。
文字通りnot for meというか。
ずっと同じ層の人たちにだけ売り続けていたら一定数以上には売れないだろうから、新規読者の獲得は仕方ないしぜひとも売れてほしいとは思うけど。
今回読んで改めて思ったのは、花穎事件に遭遇しすぎじゃない?
いや、ミステリにそういうこと言うのは野暮なんだけど。
幻想風紀委員会のあとがきで書いてらしたように、カメラワークの問題なんだというのもわかるけど。行く先々で事件が起こるんじゃなくて、事件があったときだけを物語に書いているという。
でも各巻3.5話あって、これで11冊目で、って考えると多すぎると思ってしまうんですよ。
職業探偵でもないので、事件に遭遇する理由づけがされていないからなおさら。上流階級は陰謀うずまく世界だから、でもいいけど理由づけには少し弱い気がする。
……事件に遭いすぎることそれ自体がいやなわけではないんです。コナンみたいに、ツッコミ入れつつ楽しむことはできる。
ただ、事件があると事件と捜査と解決を書かないといけないので、その分容量が規定されてしまう。
私はたぶん日常を読みたいんだと思います。
事件の合間に垣間見える日常の描写がとても素敵な作家さんだから。ごはんを食べたり、キャラクター同士の会話があったり。
たとえば前巻はお泊りの話が日常感が高くてすごく良かったです。
でもこの薄さだとそういう日常描写の割合が相対的に少なくなってしまって、物足りなさを感じる。ということなんだと思う。
商業作品なので、事件が起こらないと売れないんだろうけど〜〜。
漫画やアニメでは日常ものがひとつのジャンルであるように、小説でもそういうのあってもいいと思うんですよね。
彼らの日常をもっと読みたい、と思うほどにはキャラクターへの思い入れが強くなっているんだよね。ここまで読んできて。
さて。
この巻は次以降の巻の準備みたいな感じを受けました。
新キャラが何人か出てきて、この後何巻かでは彼らがメインになって関わってくるのかなって。
ヴォルコフ家の人々、イリヤと不知火は言うまでもないけど、サシャとルカも明らかに裏がありそうで。
すごく深刻なことにはならないだろうけど不穏ですよね。
鑑定士の雲井さんはかっこよかった。スピンオフとかしてほしい。
侑里さんはシンプルに、妹の名前は万里でいいのかしら。世界せますぎるけど名前似てるし。
レギュラーキャラクターも、雪倉家の親子喧嘩とか、相変わらずな赤目さんとか、真一郎のことになるとかわいい壱葉ちゃんとか、良かったです。
そして鳳さんが若い頃の話を回想していたのが、なんだか印象深かった。先代の雪倉を「兄さん」と読んでいたのが。
鳳さんにも若い頃があったんだ、というか。
同じ人でも、ある人に見せる面とほかの人との関係性は当然違って、それがずっと広がっていって世界が形づくられている感覚があった。うまく説明できないけど。
いろんなキャラクターの、普段とは違う一面やキャラクター同士の関係性をもっと読みたい。
……そう思うと事件邪魔だよね、に戻ってしまうのですが(笑)
花穎が当主らしい当主であろうとして、衣更月と勝負してるのが、成長と変化を感じて熱かった。
衣更月がそれをおぼろげに感じとって応えようとしているのも。
たぶん花穎が考える「当主らしい当主」と衣更月が考えるそれには隔たりがあるんだよね。
だからそこに戸惑いとかが生まれて感情が動いて物語になる。でも信頼が根底にあるところが、1期とは違うところなのかな。
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