6世紀東ローマ帝国を舞台に、将軍ベリサリウスと歴史家プロコピオスの出会いと戦いを描いたライトノベル。
歴史上のある時点を舞台に、登場人物もすべて実在した人物という試みが興味深かったのと、東ローマ帝国どころか西洋史は高校生のときに授業でやったレベルの知識しかないけど興味があるので、ここからその世界に触れられたらいいなぁと思って読みました。
でも、正直なところ、あんまり合わなかったです……。
ストーリーというか、起こっていることなり戦いでの戦略なりはおもしろかったんだけど、だったらむしろ参考文献に挙げられてるものを読んだほうが純粋に楽しめるのでは、と感じてしまった。
たぶん時代考証とかはしっかりしてて、出てくる物はちゃんとこの時代にあったものなんだろうと思うんだけど、その一方でこの概念はなかったんじゃないのと思うものがあり、そこが気持ち悪かった。
たとえば、隠密行動をしていて警備に見つかりそうになったときに猫の鳴き真似をするシーンがあったのだけれども、そこで「ベタ」という台詞が出てくるのはなんか東ローマっぽくないじゃん。みたいに思ってしまうんですよ。
魔術を使う人が出てくるのは、実際にはなかったとしても物語の味付けとしておもしろかったと思うんだけど。
なんていうか、雰囲気づくりに関しては気になってしまう。
というか全体的に、登場人物は実在の人物なのにラノベ的なキャラクターが付与されていて、いかにもという感じの掛け合いがあって、そこに違和感がありました。
6世紀の東ローマ帝国といえど生きてる人は現代と変わらず笑ったり泣いたりする、という深遠な意図があるのかもしれないけど。
なんか、キャラクターが軽いし薄いんですよね。あと役割語が多用されるせいか、台詞を喋っている感が強い。
「人を見る目がある」キャラクターが主人公べリスを評して「将来偉大なことをするだろう」と言うシーンがあるんですけど、それは別にその台詞を言うキャラクターの「人を見る目がある」性質の証明になっているのではなく、ただ未来を知ってる著者が主人公の未来を示唆しただけになってしまってる気がした。
うーんある意味時代小説っぽいのかしら。
地の文の視点はそんなに気にならなかったんですけど、ラノベだからかキャラクターを通して見ているのでそのキャラクターの書き方の方に違和感を覚えました。
全体的にそこはかとなく「アルスラーン戦記」っぽさを感じた。とはいえ私はアニメしか見てないのですが。
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