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2024/05/08 (Wed)

『本と鍵の季節』

世間では新作単行本が出ていますが、周回遅れで生きているので今更ながら去年の本を読みました。


米澤穂信の青春は、私のそれとは違うんだろうな。


図書委員の男子高校生ふたりが謎を解く連作短編集。

探偵と助手ではなくて、ふたりともそれなりに頭がよくて、でも一人だけでは解けない謎を掛け合いしながら解いていく形式が、読んでいて楽しかったです。
「俺たちそれほどわかり合ってるか?」という台詞がとても格好いい。堀川と松倉の関係を表していて、すごく好きでした。
図書委員会で同じ日に当番なだけの、クラスも違う同級生の関係が物語を通してどう変わっていくのか。
というより、図書委員会で同じ日に当番なだけの関係だからこそ、という良さ。


謎を解くけど事態の解決は当事者に任せて、探偵役たちは立ち会わない、というスタンスがとても冷徹に感じられた。
もちろん、探偵を業とするわけでもない少し頭が切れるだけの高校生たちにそこまで求めるのは求めすぎかもしれない。
通りすがりにすぎないのに他人の事情に首を突っ込み、事件どころか人間関係のもつれまで解決していくような探偵の役割に対するアンチテーゼとして設定しているのかもしれない。
ふたりの探偵役の性格描写的に、他人が他人の事情に立ち入ることをよしとしない性質だということもわかる。
米澤穂信は過去の作品的にも、謎の背後に人がいることに自覚的だと思うので、意図的にそうしているのだとは思います。
でも、私は、無責任に思えてしまう。
ただ「非日常の冒険」として謎解きを楽しんでいるだけではないか? その後ろに生身の人たちがいることを認識していないのではないか?って。
読んでいると逆に、生身の人がいるからこそ立ち入らないようにしていると読み取れるのですが、反射的に疑ってしまう。
謎を解く探偵と事態を収束させる探偵がいたら、後者を「名探偵」と呼ぶ村の住人なので。
っていうか、「金曜に彼は何をしたのか」と「ない本」はひどいと思うんですよね、主人公たちの所業が。この2編は後味の悪さを意図した作品ではあると思うんですが、連作のなかでその後味の悪さが回収されてくれないので、もやもやして上記の感想を抱いてしまった。
うーん、最終話でこれは回収してるのか?してないと私は思ったので、回収されてると思った方の話を聞いてみたい。


ミステリ的な部分について。
伏線というか手がかりがあからさまに出ていて、どう考えてもおかしいからきっとこれが手がかりなんだろうということは読んでいて分かるんだけど、何のためにそうしたのかとか、解答までは導けなかったので、そういうところが探偵役たちの頭の良さなんだと分かるのが面白かった。
それこそがシンプルにミステリのおもしろさですよね。手がかりは全て提示されている、ではどう結びつけて真実を推理するか?という本格ミステリでの読者への挑戦みたいな。(ちなみに、この本には別に読者への挑戦はないです)

図書委員会という設定なので特に話の流れには関係のない本のタイトルが作中に出てきたり、図書館にまつわるものが謎解きに使われていたりするのも楽しかった。
でも知識ネタがそのまま真相になるわけではなく。
本好きなら誰もが分かるよねということを、それ自体を真相にしているわけではなく、それがわかったところでじゃあ何故そうなのかみたいなところが主眼になっていくので、一捻りあって面白かった。

小ネタでいうと、突然の「出来心」にはちょっと笑いました。出来心だと思ったからそれを引用したんだよね、というところまで読んで笑えなくなったけれども。



これは所詮、自分の経験でしか判断できないので何とも言えないことですが。
図書委員会がやること多くない?って思った。私の経験と感覚では、それは生徒ではなく司書の先生がやることだと感じるものがいくつか。でも学校によっても違うだろうし、そういう図書委員会があってもおかしくないのだろう。

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